ヤマザキマザック「DISCOVER2025」を開催

 

 ヤマザキマザックが2月3日(水)から12月5日(金)までの3日間、岐阜県美濃加茂市にある同社工場「ワールドテクノロジーセンター」でプライベートショー「DISCOVEER2025」を開催した。この展示会では製造プロセスに変革をもたらす最新のテクノロジーやデジタル・自動化技術を活用することで加工品質や生産性の向上に貢献する製品やソフトウエアを紹介した。「DISCOVER2025」をレポートする。

作業効率の向上や業務の最適化を目指す

デジタル活用で生産体制を強化!

 製造現場は日々技能の継承や生産性・品質向上など様々な課題に取り組んでいるが、社会構造で課題となっているのが人手不足だ。生産現場のオペレータ不足や熟練技能者の高齢化、技能継承が進まない、さらには少子化の問題が顕著に表れており、労働人口の減少は大きな課題となっている。

 ヤマザキマザックでは、「社会環境に対応するためには、これまでの生産体制のあり方を抜本的に変えていく必要がある」として、今回のプライベートショーでは、①工程集約、②自動化、③デジタル活用、を来場者に訴求した。

 注目すべきは同社の工程集約についての考え方だ。機械1台で多くの加工プロセスを完結できたり、自動化ロボットで人が行っていた仕事を代替することは進んでいるが、同社はそれに加えてデジタル活用に注力していた。

 オフィスでプログラミングやシミュレーションなどの加工の前工程を行い、これらのデータを現場の加工機に転送し、機械での段取時間を短縮することで機械の稼働率を向上させるソリューションを提案、これにより、「技能の差が関係なしに生産が進むようになる」という。つまり経験の浅いオペレータでも熟練者レベルの作業ができるようになり、スキルレスで作業効率の向上が実現することを訴求していた。

注目は中径パイプ・形鋼の高精度、高速加工を実現するレーザ加工機「FT-250」

 

 今回の「DISCOVER2025」で目玉となったマシンは、新たに開発されたφ254mm以下のパイプ材および203mmまでの形鋼の高速加工に対応する3次元レーザ加工機「FT-250」だ。

 同社では2019年に小径パイプ量産加工向け「FT-150」を発売し、ドリルやタップ加工に加え、搬入・搬出装置による連続加工により、生産リードタイム短縮と省人化を実現してきたが、今回開発した「FT-250」は、中径パイプや形鋼に対応領域を拡大したモデル。

 「各地で建設ラッシュが続くデータセンタや物流倉庫などの建築部材をはじめ、物流設備や輸送機器などの幅広い鋼材加工の需要に応える」として、注目を集めた。

 このマシンの特長は、3次元レーザヘッドが材料と並行に移動する軸構成を採用、材料を固定したまま多方向からの加工が可能であり、材料移動に伴う振動を抑えることで切断面の品位と加工精度を高めること。またレーザヘッドと材料の移動を同期させることで高速加工も可能だ。

 材料搬入はパイプ材の量産向けの「バンドル式ローダ」に加え、多品種少量生産向けに形状の異なる材料を収容できる「Vサポートコンベヤ式ローダ」(オプション)を展開している。材料交換による段取り替えの工数を削減し、長時間の連続運転を可能にした。

 回転工具ユニット(オプション)は加工能力を高め、M16(軟鋼はM20)までのタップ加工を実現し、最大13 本の工具収納により多品種少量生産にも柔軟に対応するのも大きな魅力となっている。

AMは今後伸びが見込まれるテクノロジー

 

 同社によると、AMについて「10年ほど前から金属積層技術が出てきたものの社会実装が進んでこなかったが、最近は経産省の支援や国家戦略として指定された宇宙産業、核融合の分野においても新たに適応が見込まれる技術」と認識しており、今回、複合加工機や5軸化後期に金属積層造形技術を統合することで新しい部品の製造もできるが既存部品の補修やメッキ表面処理などにもかつようできる柔軟な付加加工が行えるという大きなポイントを来場者に訴求していた。なお、同社のAM機ではレーザ式とワイヤアーク式の2種類がある。

 レーザ式は金属粉末をレーザで俊司に溶融、凝固させる造形方式。高精度かつ緻密な造形が可能になるので、複雑形状や薄い肉厚のものに適している。もう一方のワイヤアーク式は、金属のワイヤをアーク放電によって溶融、積層する造形方式で、レーザ式に比べて扱いやすく、低コストで安定供給が可能という特長を持つ。造形の速度が速いので大型部品の造形や肉盛りの補修に最適とされている。

作業を変革する「マザトロールDX」

 

 デジタル活用で作業効率向上と業務の最適化を実現するソフトウエア「マザトロールDX」にも注目したい。これは、プログラミングやシミュレーション、加工、分析などを行うことで、機秋の加工現場での段取の時間を最小限にし、機械の稼働率を向上するのが狙い。

 2023年に発売を開始したが、もともとは2軸の旋盤のみからスタートしたこのシステムは、今では立形マシニングセンタや複合加工機、5軸加工機や横形マシニングセンタの多面見る加工にも、最新の機能で対応できるようになった。従来であれば機械で作成していた加工後の計測をするプログラミングについても事前にオフィスで行うことができる。機上計測のプログラムを事前にオフィスで組むことによって現場での作業を不要とし、より機械の稼働率を高めるのが狙い。

 同社では、「2026年の2月を目処に教育サポート機能も充実させていく」とのこと。これはPC上でNCの画面を再現することで実機と同じ操作のトレーニングをすることができるもので、機械は加工をし、オフィスで操作のトレーニングを新人が受けることができるサービス展開をグローバルに考えているという。

 また、同社ではファクトリーサイエンティスト協会の活動に協賛している。日本のものづくりの強みである現場力にデジタルを活用し、デジタルに関する知識と理解を深めるのが狙いだ。今回の「DISCOVER2025」の初日には、ファクトリーサイエンティスト協会代表理事の大坪正人 由紀ホールディングス社長が、「創造生産性を生み出す製造業のリアルなデジタル活用」をテーマに講演した。
 

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