「輸出規制の影響深刻化 リサイクル促進を加速」 日本機械工具工業会 通常総会ならびに2026年度「生悦住賞」「新庄(陰徳の士)賞」表彰式を開く
日本機械工具工業会(会長=佐橋稔之 住友電気工業 常務)が6月2日、東京マリオットホテル(東京都品川区北品川)で第12回定時総会をオンライン併用で開いた。
総会であいさつに立った佐橋会長は、景況について「国内では雇用・所得環境の改善や各種政策効果を背景に緩やかな回復基調が続いている。一方で海外では中東情勢や米国の通商政策など、不透明要因への注視が必要な状況にある。」との認識を示した。
同工業会の2025年生産額については、年初見通しの4840億円を上回る4899億円となったことを報告。「昨年度は後半から業界全体に持ち直しの動きが見られた。」と振り返った。
一方、2026年度については、タングステンをはじめとする原材料価格の急騰により市場環境の先行きが極めて不透明になっているため、例年公表している生産額見通しについては、「原材料価格の動向が読みづらく、業界の実態とかけ離れた数字となる可能性がある。」として、公表を見送る考えを明らかにした。今後の状況次第では改めて公表する可能性もあるという。
また、業界を取り巻く最大の課題として、タングステン原材料の安定調達とリサイクルの推進を挙げた。中国による重要鉱物の輸出規制やデュアルユース規制の影響で、原材料の供給不足や価格高騰が深刻化しているとし、「特定国への依存低減は重要だが、資源に乏しい日本にとっては、国内で発生する超硬スクラップを海外へ流出させず、循環利用することが極めて重要だ。」と強調した。
こうした状況を踏まえ、工業会は経済産業省の支援を受け、「超硬工具スクラップのリサイクル促進に向けたガイドライン」を改定し、同日付で発行した。佐橋会長は「リサイクルのあるべき姿や拡大の方向性をより明確に示した内容となっている。」と説明。「業界全体でユーザーや関連団体にも働きかけながら、タングステンの国内循環を一層推進していきたい。」と述べ、会員各社に協力を呼び掛けた。
経産省も業界と連携強化へ
経済産業省製造産業局の須賀千鶴産業機械課長があいさつの中で、タングステンの安定供給確保に向けた取り組みについて説明した。
須賀課長は、「昨年来の重要鉱物に対する輸出管理措置などにより、タングステンの安定供給確保が大きな課題となっている。」と指摘。その上で、経済安全保障上の観点から、特定国への依存低減を目的とした重要鉱物の調達先多角化に向け、経済産業省が企業の調達ルート切り替えに伴う費用支援を進めていることを紹介した。
また、「タングステンについてはリサイクルの活用が極めて重要だ。」と強調。リサイクルの推進により、需給逼迫の緩和につながるとの認識を示した。
さらに、同工業会がこのほど「超硬工具リサイクルガイドライン」を改定したことに触れ、「業界全体としてタングステンの国内循環・還流を推進する方針が明確になった。」と評価。経済産業省としても、改定ガイドラインをユーザーであるものづくり企業へ広く周知するなど、業界と連携しながらタングステンの国内還流促進に取り組む考えを示した。
苦労を糧に業界発展へ
総務、技術、環境、国際の各委員会から活動報告が行われた後、田野井優美副会長(田野井製作所社長)が総括を述べた。
田野井副会長は、業界の最重要課題としてタングステン資源の確保を挙げ、「タングステン原材料のリサイクルを推進し、超硬スクラップを海外へ流出させることなく、確実に国内循環させていくことが極めて重要だ」と強調し、また、今年10月に開催されるJIMTOFや、会員企業の海外展開支援を目的としたドイツ・AMB、インド・IMTEXへの共同出展計画にも言及。業界のさらなる発展に向けた取り組みを進めていく考えを示した。
さらに、「定期総会では全ての議案を滞りなく承認いただいた。」と報告。その上で、「タングステンや石油製品の供給不安など、業界を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いている。しかし、このような時だからこそ、官民および正会員、賛助会員を含む133社が一体となり、連携をさらに深めていくことが重要だ。」と述べた。
最後に、「現在の苦労を将来の糧へと変え、業界の発展と日本のものづくり競争力の向上に貢献していこう」と呼び掛け、総会を締めくくった。
2026年度「生悦住賞」「新庄(陰徳の士)賞」
2026年度「生悦住賞」は田中博信氏(オーエスジー)が受賞した。
【功績の概要】
田中氏は、2017年からの2年間、国際委員長として活躍。IMTS2018(米国国債機械見本市)ではJTAブース出展や会員による視察ツアーを行った。2019年から2年間は総務委員長に就任。新型コロナ感染症拡大の影響で全ての会合が活動制限されるなか、厳しい舵取りを強いられたが、WEB併用によるハイブリッド会合開催など先を見据え、各企画を継続させた。そのコロナ禍においてもJTA諸規程の改定整備を実施し、またクラウドを利用した会員統計システム運用を実現することで、プログラムによる自動集計と会員各社がいつでも統計データを取り込めるJTAデーターベースを国からの補助金でほぼ完成させた。現在も2025年6月から国際委員長としてConnected Industries委員会でのデータ連携やAMB(欧州金属加工国際見本市)の会員共同出展を実現させるなど永年の経験を活かし手腕を発揮されている。

〈新庄(陰徳の士)賞〉
・内田正利氏(京セラ)
・村尾博明氏(共立合金製作所)
・鈴木陽一氏(サンドビック)
・杉浦ミカ氏(ニチアロイ)
・中澤幸二氏(マコトロイ工業)
・髙橋摩美(三菱マテリアル)
懇親会では、張 守斌副会長(三菱マテリアル常務)が乾杯の発声を行い、参会者は交流を深めた。




