MOLDINO 「顧客とともに加工の答えをつくる」 ~MOLDINO VISION2026で収益向上への取り組みを示す~

説明する金子社長

 

 MOLDINO(社長=金子善昭氏)は7月15日~22日、オンデマンド配信で「MOLDINO VISION2026」を開催した。今回のテーマは「工場にいけばお客様の役に立つヒントがある」。工場を起点に顧客の課題解決と収益向上に挑む同社の姿勢を示し、外注コストの削減や自動化、納期短縮など、加工現場が抱える課題が多様化するなか、工具にとどまらず、加工全体で価値を生み出すためのヒントを発信した。

 金子社長は、同社の業績と事業環境について説明。それによると、2019年度を100とした場合、2025年度の業績は2019年度比で約112%となった。「円安などの効果もあり、原材料費や労務費の上昇を吸収し、全体として一定の水準を維持した」と振り返った。

 一方、足元の市場環境については、「自動車関連を中心に依然として需要の不透明感は強く、市場全体としても力強さを欠いている。また、地域や分野によって動きに差があり、需要のばらつきが広がっている」との認識を示した。

 2026年度については、タングステンの中間材であるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)の価格高騰や調達不安などのリスクを踏まえ、「慎重な前提で計画を策定している」と説明。原材料価格の上昇が続くなか、安定供給を継続するために必要な判断として価格改定に踏み切ったことについても、理解を求めた。

 こうした厳しい事業環境のなかで金子社長が強調したのが、「数量の確保ではなく、成果につながる価値の提供」だ。

 近年の超硬工具業界を取り巻く環境については、原材料価格の変動と調達環境の変化が大きなリスクになっていると指摘。APT価格の急騰の背景には、タングステン生産の地域的な偏在や輸出規制を含む供給側の動きがあるとし、「価格、供給の両面で変動が大きくなっている環境下では、従来通り、必要な時に必要な品質で安定供給すること自体が大きなリスクを伴う状況だが、こうした環境に対してグループとして資源確保と供給の安定を推進している」と述べた。

 さらに、安定調達を支える重要な取り組みとして、タングステンリサイクルの重要性にも言及した。それによると、「タングステンは希少資源であり、供給の偏在が大きいため、安定調達の観点ではリサイクル率の向上が重要である」としたうえで、世界全体のタングステンリサイクル率は25%程度とされるなか、MOLDINOの親会社である三菱マテリアルグループでは、回収網の整備やスクラップの確保、リサイクル強化を推進。この強みを活かしてバージン原料の確保とリサイクル材の活用を両輪とし、「安定的な材料調達と供給体制の構築を進めていく」との考えを示した。

MOLDINOが示す「価値提供」の核心

 

 こうした環境下でMOLDINOが目指す「価値提供」の核心について、金子社長は、「工場を起点とした顧客との共創」を挙げ、「MOLDINOが価値を出すために必要なのは、加工の答えを現場で一緒につくること。例えば、外注している工程を内製化したい、放電加工や磨き工程の人的工数を減らしたい、自動車以外の産業にも挑戦したいなどの課題は、単に工具だけでは解決できない。現場で試し、考え、改善する中で初めて答えが見えてくる。そのための場所が工場であり、工場は製品を作る場所ではなく、課題を持ち込み、技術を検証し、次の一手を開発する場であると考えています」と意気込みを述べた。

 同社では、自動車業界をはじめとする金型加工分野で、XEVの進展や軽量化を背景に大きな変化が起きていることを踏まえ、加工現場で新たに生まれる課題への対応を強化している。その重点領域として掲げるのが、「ダイカスト分野」と「精密加工分野」の2つ。

 ダイカスト分野では、大型金型加工において、粗加工からリブの仕上げ加工まで一貫して対応できる包括的な工具ラインナップの開発を進めている。その一例が、深掘り加工に特化したフリーネックタイプのラインナップ。さらに、高機能材料に対応する高送り工具も開発し、加工現場の生産性向上に貢献していく考えを示した。

 一方、微細加工分野では、「折損」「耐久性」「能率」の3点を主要な課題として挙げた。自動車や電子部品、医療、光学レンズなど幅広い分野で小型化・高精度化が進むなか、微細加工技術への要求は今後さらに高まるとみている。

 こうしたニーズに対し、特定分野に深く入り込み、現場の課題解決に徹底して向き合う体制を構築するため、野洲工場内に「微細加工室」を新設。これにより、微細加工に関する技術検証を加速させ、新製品の開発力を一段と高めていく。

 また、同社が注力する難削材加工分野については、「鏡面加工」「加工時間短縮」「深掘り加工」「微細加工」「難材加工」「環境負荷低減」の6つの領域を設定。これらを「現場で求められる多様な課題に対応する領域」と位置づけ、これまで培ってきた独自技術と提案力を生かしながら、加工現場の生産性向上と、製造業のさらなる進化を支えていく考えだ。

 厳しさを増す市場環境のなかで、今回の「MOLDINO VISION2026」が示したのは、単に工具を提供するだけではないMOLDINOの新たな姿勢である。

 工場に足を運び、現場を知り、技術を試し、顧客とともに答えを導き出す――。そこから生まれるのは、カタログには載らない「次の一手」だ。

 現場の課題に真正面から向き合い、加工の可能性を切り拓いていく。工具メーカーとしての技術力を土台に、顧客とともに「加工の答え」をつくる存在へと、その役割をさらに広げている。

 

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