DMG森精機「INHシリーズ」を拡充 ~旋削対応の「INH 63 FD」とSIEMENS製制御装置仕様を追加~
DMG森精機はこのほど、5軸制御横形マシニングセンタ「INHシリーズ」のラインアップを拡充すると発表した。「INH 63」に旋削加工が可能なミルターンテーブル仕様「INH 63 FD」を追加したほか、従来のFANUC製制御装置に加え、SIEMENS製制御装置にも対応する。
INHシリーズは、同社が2023年に販売を開始した5軸制御横形マシニングセンタで、「INH 63」と「INH 80」を展開している。航空機や宇宙、半導体、産業機器、金型、自動車などの分野を対象に、複雑形状部品や高精度部品の加工、多品種少量生産、長時間の安定した連続稼働などのニーズに応える。
■ミーリングと旋削を1台に集約
新たに追加したINH 63 FDは、INHシリーズの基本構造をベースに、最高回転速度900min⁻¹、最大トルク3,000N・mのミルターンテーブルを搭載する。ミーリングと旋削を1台に集約し、ワンチャッキングによる高精度加工を可能にした。
従来は別工程で行っていた旋削加工を集約することで、ワークの載せ替えや心出しなどの段取り作業を減らし、加工精度の向上とリードタイムの短縮につなげる。旋削工具ホルダは「HSK-T 100」に対応し、安定した旋削加工を実現する。
テーブル内部には振動センサを搭載した。テーブルを高速で回転させた際に生じやすいワークのアンバランスを加工開始前に検知し、安全性の確保とワーク位置の確認を支援する。
また、高精度な段取りステーションを標準装備し、パレット交換後に必要となる機内での心出し作業を短縮する。ワーク中心を自動補正する「easycenterSET」もオプションで用意し、段取り作業の効率化と自動化を図る。
なお、INH 63 FDはSIEMENS製制御装置を搭載した製品に限られる。「INH 80」のミルターンテーブル仕様については、今後対応する予定としている。
■SIEMENS製制御装置にも対応
制御装置については、従来のFANUC製に加え、SIEMENS製にも対応した。SIEMENS製仕様には、デジタルツインを実現する「SINUMERIK ONE」を採用。加工プログラムの事前検証や生産準備の効率化を支援する。
FANUC製とSIEMENS製の両方に対応することで、ユーザーが工場内の既存設備や生産環境に合わせて制御装置を選択しやすくする。既存設備との操作性を統一することにより、オペレーター教育や保守管理の効率化にもつなげる。
■高精度と高剛性を追求した機械構造
機械構造には、全軸ツインボールねじとスラントコラム構造を採用し、高速加工時の振動抑制と機械剛性の向上を図った。3点支持構造により、地盤の形状や経年変化による影響も抑える。
全軸には、マグネスケール製の高精度エンコーダ「SmartSCALE」を標準搭載し、フルクローズドループ制御を行う。ボールねじを含む熱源を冷却することで、長時間にわたり高い位置決め精度と安定した加工精度を維持する。
主軸には、400V仕様の高剛性主軸「powerMASTER」を搭載する。標準仕様で最大トルク808N・m、主軸出力85/40kWを備え、重切削から高速加工まで幅広く対応する。主軸側に旋回軸を持たないスリムな構造とし、長尺工具を使った深部加工やラインボーリング加工にも対応。工具の突出し量を抑えながらワークへ接近できる。
■切りくず、クーラント、ミストへの対策を強化
長時間の連続・無人稼働に向け、同社が「加工3悪」と呼ぶ切りくず、クーラント、ミストへの対策も盛り込んだ。
A軸を使ってテーブルを傾斜させることで、ワークやテーブル上にたまった切りくずとクーラントを機内下部へ落下させる。立型大容量クーラントタンク「zero-sludgeCOOLANT pro」は、立型タンクの構造を生かし、スラッジと混入油を効率的に回収する。
機内には大流量の洗浄クーラントを流すとともに、モータ駆動ノズルによって切りくずが堆積しやすい場所を集中的に洗浄する。オプションの「AIチップリムーバル」は、AIが機内の切りくずの堆積状況を認識し、効率的な除去を支援する。
加工内容に応じてクーラントの流量と圧力を自動で最適化する「Adaptive Coolant Flow」もオプションで用意する。必要な場面で作動させることにより、加工品質を安定させるとともに、エネルギー消費の削減につなげる。機内で発生したミストを捕集するビルトイン型ミストコレクタ「zeroFOG」もオプションで搭載できる。
■CAMから工作機械までのデジタル工程を支援
複雑形状ワークの5軸加工では、CAMによる加工プログラムの作成が欠かせない。DMG森精機は、CAMと工作機械をつなぐPCソフトウェア「CELOS DYNAMICpost」をオプションで用意する。
同ソフトウェアは、ポストプロセッサ、切削加工シミュレーション、切削力最適化の各機能を一つに統合。CAMで作成した加工データを工作機械へ正確かつ効率的につなぎ、加工前の確認や段取り作業を支援する。
操作画面には、直感的な操作を可能にするヒューマンマシンインタフェース「ERGOline X with CELOS X」を採用した。複雑な加工をガイダンスに沿った入力によって短時間で設定できるテクノロジーサイクルをはじめ、CELOS Xの各種アプリケーションによって生産プロセス全体を支援する。
■パレット、ロボット、工具搬送による自動化に対応
自動化では、横形マシニングセンタで一般的なパレット搬送システムに加え、ロボットシステム「MATRIS」を接続したワーク搬送に対応する。最大4,000本の工具を収納できる工具搬送システム「CTS(セントラルツールストレージ)」や、自律走行ロボット(AMR)を活用したチップバケットの搬送にも対応する。
既存の4軸制御横形マシニングセンタ「NHXシリーズ」「NH DCGシリーズ」とパレットを共用でき、4軸機とINHシリーズを組み合わせた自動化システムも構築できる。ただし、旋削加工には専用の円形パレットが必要となる。
同社は今回のラインアップ拡充により、工程集約や自動化、デジタル技術を組み合わせた「MX(マシニング・トランスフォーメーション)」への対応を強化し、生産性の向上とサステナブルな生産現場づくりに貢献する。
INH 63 FDは、10月26~31日に東京ビッグサイトで開催される「JIMTOF2026」のDMG森精機ブースで実機を披露する。



