イワタツール、JIMTOF2026で連携披露! ~加工技術からタングステン問題まで〝現場の課題〟に挑む~
イワタツール(社長=岩田昌尚氏)は9月24日、名古屋市守山区の本社で「JIMTOF2026 記者発表会」を開催した。JIMTOF2026で披露する加工実演や共同プロジェクトを前に、トライエンジニアリング、Jpキュービック、碌々スマートテクノロジー、長谷川加工所、フジBC技研、ギケンなどの連携企業が集結。ロボットと加工システム、セミドライ加工、加工条件を支援するアプリ、複合旋盤を使った加工技術など、多彩な取り組みが明らかにされた。さらに、切削工具業界を直撃するタングステン原料高騰に対し、使用済み工具の再研磨・再利用にも踏み込んだ会見となった。今回の発表では、工具を「売る」だけではなく、企業の垣根を越えて加工現場が抱える課題そのものを解こうとする姿勢が見えた。
各社の技術を〝組み合わせる〟JIMTOFへ
今回の記者発表会で一貫していたキーワードが「連携」だ。
JIMTOF本番では、それぞれの技術や製品を単独で紹介するのではなく、各社が持つ強みを組み合わせ、来場者に分かりやすく伝えていく考えが示された。
実際、発表テーマは工具そのものほか、ロボット、工作機械、加工油剤、加工ノウハウ、ソフトウェア、さらには資源循環まで領域は広く、イワタツールを中心に異なる技術をつなぎ、加工現場全体を見据えた提案へと発展させている点が今回展の大きな特長だ。
トライエンジニアリングからは、ロボット加工を組み合わせたシステムが紹介された。
工作機械へのワーク搬入・搬出だけをロボットに任せる一般的な自動化では、工作機械が加工している間、ロボットは待機する。そこで、ロボット自身も加工をすれば、全体の稼働効率と加工自由度を高めようという発想だ。
工作機械が得意とする高精度加工と、ロボットが持つ自由度の高い動きを組み合わせれば、加工工程の設計そのものを変えられる可能性がある。
トライエンジニアリングでは、ロボットによる加工に加え、アーク溶接を利用した金属積層造形、積層直後の材料をローラーで転圧して強度向上を狙う技術などの研究開発も進めている。さらに、カメラでワーク形状を認識し、自動的に加工経路を生成するフィジカルAIを活用したロボットシステムにも取り組むなど、研究開発領域を広げている。
セミドライ加工を実演! 加工の〝常識〟を超える加工条件へ 薄肉部にも挑戦
フジBC技研との連携では、加工後の洗浄工程削減を視野に入れたセミドライ加工を披露する。
セミドライ加工は、大量のクーラントを供給する従来方式とは異なり、極めて少量の油剤を加工点へ供給する方式。同社が得意とする条件では、1時間当たり数mL程度という微量の油剤で加工する。
JIMTOFでは、イワタツールの低切削抵抗工具などと組み合わせ、アルミやガラスエポキシ樹脂の加工実演を予定する。
狙いは単なる油剤使用量の削減ではない。加工後のワーク洗浄や拭き取り、機内の清掃など、加工に付随して発生する工程まで減らすことにある。
一方、セミドライ化すれば、切りくずをどう機外へ排出するかが重要になる。スクレーパやエアなどを使った排出方法を含め、実際の生産現場を想定した課題も示された。
また、長谷川加工所は、ロボドリルによるアルミ加工を担当する。JIMTOFでは、イワタツールの「ドリルミル」を用い、加工現場に根付いた常識を打ち破る実演に挑む。
見どころの一つが、ヘリカル加工だ。一般的なランプ角が2~3度程度とされるのに対し、今回は15度で切り込む。ドリルミルの低い切削抵抗を生かし、薄肉部の変形を抑えながら高能率加工を狙う。
前回製作したサンプルでは薄肉部を0.8mmとしたが、今回はさらに薄い0.5mmに挑戦。
動画で加工を見せるだけでは、加工技術者に「自分事」として捉えてもらいにくいため、JIMTOFでは、実機による加工を披露し、工具の性能をどこまで引き出し、使い切ることができるか、加工の限界を実演によって塗り替えるという。会場ならではの見せ場となりそうだ。
ギケンは、バリ取りを不要にするドリル「ゼロバリシリーズ」を紹介した。
一般的なドリル加工では、工具が材料を貫通する瞬間に出口側へ負荷が集中し、押し出された材料がバリとなって残る。ギケンのドリルは、入口で確実に食いついた後、独自の複合R形状によって負荷を分散。切削抵抗と発熱を抑えながら加工し、出口側に発生するバリを抑制する。
センタリングを行わずに一発で穴を開けられるほか、曲面や斜面への加工にも対応する。ドリルによる穴あけと、エンドミルやリーマのような仕上げ機能を一本の工具に持たせ、工程集約につなげる考えだ。
また、イワタツール、JPキュービック、碌々スマートテクノロジーの3社では、工具、試作加工、工作機械を組み合わせた共同検証体制を構築すると発表した。

「工具を選ぶ」から「工具を使いこなす」アプリへ
加工現場のデジタル支援にも乗り出す。
イワタツールが開発を進める加工条件アプリは、工具メーカーに多い製品検索型のアプリとは発想が異なる。狙うのは、工具を選んだ「その後」だ。
実際の加工では、被削材や工具径、加工方法、使用設備などによって適切な加工条件は変わる。しかし従来の紙カタログでは、推奨条件を一定の範囲で示すことしかできず、現場側が経験を頼りに条件を調整するケースも多い。
そこでデジタル化によって、実際に使用する工具や加工内容に応じ、より具体的な条件設定を支援する。
工具性能が向上しても、加工条件が従来のままでは能力を十分に引き出せない。現場に蓄積されてきた「経験」と工具メーカーが持つ加工ノウハウをどうつなぐか。アプリはその橋渡し役を担う。
タングステン問題と工具の再研磨・再利用
今回の発表で、加工技術とは別の意味で強烈な危機感が示されたのが、超硬工具の主要原料であるタングステンを巡る問題だった。同社は早期に材料を確保してきたため、現時点では「物がない」という状況には至っていない。
発表では、ユーザーの負担を抑えながら供給を続けるには、メーカーだけでなく流通を含めたサプライチェーン全体で対応を考える必要があるとの認識を示した。
さらに、日本国内の材料価格が高止まりする一方、中国をはじめ海外材との価格差が広がれば、国産工具の競争力そのものにも影響しかねない。資源問題は、もはや材料調達部門だけの問題ではなくなっている。
そこでイワタツールが強化するのが再研磨・再利用だ。
従来の再研磨は、ユーザーから使用済み工具を預かり、研ぎ直して同じユーザーへ返却する方式が中心だった。しかし、小ロットかつ短納期への対応が必要となるため、メーカーの量産設備では効率面に課題があった。
これに対し同社が試験的に進めているのが、使用済み工具そのものを買い取り、一定量を集めたうえで再研磨し、再び製品として供給する仕組みだ。
まずスクラップとして回収し、その中から再研磨可能な工具については付加価値をつけて買い取る。ユーザーにとっては単なる超硬スクラップとして処分するより高い価値が期待でき、メーカー側は高騰・供給不安が続く超硬素材を再利用できる。
特に太径工具では素材使用量が多い。新品材料の調達が難しくなればなるほど、既存工具をもう一度市場へ戻す意味は大きくなる。
さらに連携先とともに、回収した超硬工具の中から再研磨可能なものを自動的に選別する仕組みの開発も進める。


