高性能設備を積極的に導入し、最高級の品質を目指す! 宇山金型製作所
京都伏見の地で半世紀にわたり精密金型の設計・製作に注力してきた宇山金型製作所は、創業以来、「高精度」「短納期」「高付加価値」を掲げ、現在、最新設備を積極的に導入することで新しい技術を取り入れ、高度な技術を持つ。
顧客のニーズに万全に応えるべく、より高精度な金型づくりを目指している國保 明社長を訪ね、お話を伺った。
他社との差別化を図るため放電加工の自動化に注力
同社では、昨年9月に牧野フライス製放電加工機「EDAF3」を導入している。このマシンはLED、狭ピッチコネクタ、ICモールドパッケージなど、高度な精密電子部品の量産化が進む中にあって、多数個取りを連続して高精度に加工することを可能にした放電加工機だ。
國保社長に新しい設備を導入した感想を訪ねてみると、「弊社は放電加工の割合が多い。従来は切削機の設備強化を進めてきましたが、他社との差別化を考え、放電加工の自動化を行える設備を選定しました。放電加工工程の自動化を行えることでオペレータの負担を軽減できるうえ、他の加工機を動かすなどの効率化に成功しました」とのこと。
これらの高性能設備は徹底した温度管理のもとで稼働しており、より高精度な製品づくりに貢献している。
「この部屋は24時間365日、温度管理をしています。西日が入らないようにも工夫しております。しかも社員が壁にペンキを塗ってくれたんですよ」(國保社長)
さて、放電加工は、実際の加工に入る前の段取り作業をいかに短縮するかが高能率加工の鍵になる。金型製造に要求されるのは納期短縮。重要な放電加工工程にポカミスをなくすためにも、手入力によるミスをなくす必要がある。手間のかかる確認作業は時間のロスにも繋がってしまう。
「自動化機器(EWC300)を休みなく動かすためには、機械操作盤での手入力を極力少なくする必要があると思った。そのために「EDcam」と「μCell EDM」を導入しました。これによって電極のCADデータを「EDcam」と「μCell EDM」を介して放電加工現場でも活用することを考え、それが実現できました。実際にこれらのソフトウェアがなければ、ハードウェアだけ揃っても、これだけの稼働率を上げることはできなかったと思っています」(國保社長)
短納期への対応は稼働率アップが鍵! 強みは3次元設計で設計から検査まで1つのデータで実現していること
担当の吉川哲平さんは、「放電量が多い仕事になると、どうしても加工時間との戦いになります。お客様からの要望で短納期を求められると金型加工量と納期が比例しないことも多々あります。特に放電では加工段取りで他の加工機と比べると時間がかかるうえ、ピッチの打ち間違いなどのヒューマンエラーが起きやすく、不良が出た際に作り替え等が起こり非常に厳しい工程となります。以前よりチャックホルダを用い電極を作成することで放電・マシニングの段取り時間の削減は出来ておりましたが、加えて、「EPX」出力による加工ピッチ入力のヒューマンエラー回避、「EDcam」でのポジション確認と加工データの事前準備で放電加工までの段取りは以前とは比べ物にならないほどスムーズになり、オペレータへの負担も軽減されました。加工に関しては電極がたとえ1つしか準備できていなくても、先に加工をスタートさせ、機械が稼働している間に、「μCell EDM」にて後から回ってきた電極データをつなぎ加工することや、1つのパレットで加工している間に、加工終了後のパレットを機外で測定し再び機内に戻して調整するなど、止まっている時間の短縮が行え、納期短縮への対応に大きく貢献しています」と新しい設備の魅力を語る。クオリティの高い製品を能率よく生み出す同社の強みは、3次元設計を行っていることで、①設計→ ②MC加工→ ③電極加工→ ④放電加工→ ⑤検査までが1つのデータを用いて実現しているということだ。
実は、同社が昨年導入した「EDAF3」は、初号機である。「他にも検討するマシンはあったのかどうか」と國保社長に尋ねたところ、「なんといっても“売る情熱”と操作指導に来たエンジニアが非常に熱心で、情熱を持って仕事に当たっていた。どんな質問にもすぐに応えてくれる、これが決め手で導入を決意しました。フォローの体制もよくできていると感心しています。この仕事に対する姿勢はどの業種にも言えることですが、非常に重要だと感じています。弊社の人材も多能工を目指すべく日々頑張っていますが、加工もCAMも設計もできれば、より短い時間でより良い製品ができ、それはいつしかモノをつくる喜びにつながります。従業員も仕事で学んだことを通して人生が豊かになれる――そう思っています」としめくくった。