トヨタ自動車がロボット大賞を受賞
ロボット産業を世界をリードする新産業に成長させるべくロボットの実用化に必要な技術開発や安全性確保の取り組みを進めている経済産業省。この表彰制度は、活躍したロボットの中から将来の市場創出への貢献度や期待度が最も高いロボットを選定し、表彰を行うことで我が国のロボット技術の革新と用途拡大および重要の換気を促すことを目的として2006年の創設以来実施している。
今回、92件の応募の中から「第4回ロボット大賞」審査委員会(委員長:三浦宏文工学院大学顧問)の厳正な審査により、昨年または今年活躍し、将来の市場創出への貢献度や期待度が高いロボット12件が優秀賞として選ばれ、この優秀賞の中から、「第4回ロボット大賞」、最優秀中小・ベンチャー企業賞、日本機械工業連合会会長賞、中小企業基盤整備気候理事長賞および日本科学未来館館長賞が選ばれた。
●第4回ロボット大賞(経済産業大臣賞)●
「安全・快適に人と協働できる低出力80W駆動の省エネロボット」
開発者等>
・トヨタ自動車
・オチアイネクサス
・名古屋工業大学
・首都大学東京
概要>
自動車の組み立て工場においてスペアタイヤを自動車のトランクに搭載するロボット。低出力のモータを用いることにより、人と協働して安全に作業が可能。すでにトヨタ自動車の組み立て工場にて実用化されている。
審査委員会講評>
産業用ロボットは通常、モータの出力が高く、安全のため人と隔離して動かすことが必要である。このロボットは低出力のモータとばねのしくみを利用することで、人との協働作業を実現した。工場におけるロボット活用の新たな可能性を示したことが、「第4回 ロボット大賞」にふさわしいと高く評価された。
●最優秀中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)●
「HAMDAS-R(ハムダスR)」
開発者等>
・前川電気
概要>
豚もも肉から自動的に骨を取り除くロボット。豚もも肉は個体差によるバラツキが大きく、自動化は困難とされていたが、X線認識システムなどにより骨のサイズおよび形状を認識することで、一連の作業を自動化できるようにした。
審査委員会講評>
食肉工場における技能者が減少する中で、手作業の技をロボットで再現する工夫を凝らすことにより、人手と変わらない高い作業効率を実現したことが評価され、「最優秀中小・ベンチャー企業賞」の受賞となった。
●日本機械工業連合会会長賞●
「注射薬払出ロボットを起点とした薬剤業務支援ロボット群」
開発者等>
・パナソニック ヘルスケア
・パナソニック
概要>
病院業務のひとつである複雑な薬剤業務を支援するロボットシステム。薬剤の選び出しと病院内の自動搬送を行う。これらの作業支援により、服薬指導などの人でしかできない業務に薬剤師が集中できるようになる。
審査委員会講評>
病院全体をロボットシステムで自動化し、複数ロボットを用いて作業を効率化することで、病院サービスの効率と質の向上を目指す取り組みが評価された。
●中小企業基盤機構理事長賞●
「超高圧送電線の活線点検ロボット『Expliner(エクスプライナー)』」
開発者等>
・ハイボット
・東京工業大学
・関西電力
・かんでんエンジニアリング
・ジェイ・パワーシステムズ
概要>
超高圧電線を遠隔操作で移動し自動で活線点検するロボット。これまでは、点検のため一時的に給電を遮断していたが、本ロボットは送電を止めることなく、障害物等をよけながら複数・長距離の送電線を連続点検できる。
審査委員会講評>
従来、人手で行っていた危険な作業から作業者が解放されること、また、生活の要である電力を停めずに点検作業が行える点が評価された。また、新規制の高いロボットであること、国内外への市場展開が期待される点が評価され、「中小企業基盤整備機構理事長賞」の受賞となった。
●日本化学未来館館長賞●
「きぼう」ロボットアーム
開発者等>
・宇宙航空研究開発機構(JAXA)
・日本電気(NEC)
概要>
国際宇宙ステーションの一部である日本宇宙実験棟「きぼう」に取り付けられた宇宙用ロボットアーム。「きぼう」船内から宇宙飛行士がロボットアームを遠隔操作し、スペースシャトルで打ち上げられた実験用機材などの宇宙ステーションへの取り付け作業を行う。
審査委員会講評>
宇宙空間という特殊な環境ながらも、有人宇宙ステーションのそばでも安全で確実な運用を出来る点が評価された。また、今回の応募期間中に計5台の実験用機材の取り付けを検量し、わが国の技術力を海外に示した実績も評価され「日本科学未来館館長賞」の受賞となった。
●サービスロボット部門「優秀賞」●
「細胞自動培養ロボットシステム」
開発者等>
・川崎重工業
概要>
新薬開発や再生医療に必要な無菌環境下での細胞培養作業を行うロボット。現在は熟練作業者が無菌環境下にて手作業で行っているが、ロボットによる自動化により、安全確保と開発効率の向上が見込まれる。
「イチゴ収穫ロボット」
開発者等>
・農業・食品産業技術総合研究機構
・生物系特定産業技術研究支援センター/エスアイ精工
概要>
ハウス内栽培されたイチゴを3次元位置測定し、色味具合・熟度をカメラで判定し、果実を傷つけないよう果柄部分を切断しトレイに収容するロボット。夜間にロボットが収穫作業を行うことで農家の作業負担を軽減できる。
「サイバネティックヒューマンHRP-4C」
開発者等>
・産業技術総合研究所
概要>
人間に近い外観・携帯を持つヒューマノイドロボット。歩行や顔の表情の変化ができ、さらに音声認識等により人と会話が可能。相性、未夢(みーむ)。ファッションモデル、MCなど、主にコンテンツ産業の現場における活動実績を多数有する。
「ジョイスティック式自動車運転システム」
開発者等>
・東京農工大学
・ニッシン自動車工業
概要>
自動車のハンドル、アクセル・ブレーキペダルをジョイスティックにより操作する福祉用ロボットシステム。従来の製品に比べ、幅広い障がい者の方が、様々な車種において使用できる。
●産業用ロボット部門「優秀賞」●
「ゲンコツ・ロボットシリーズ」
開発者等>
・ファナック
概要>
パラレルリンク構造のロボットとしては類を見ない3軸手首を持つ6自由度構造により、品物の無機を変えて整列させる、ひねるといった、人の手と同じ柔軟な作業が可能なロボット。人の目に相当するビジョンセンサと組み合わせ、これまでロボットの活用が進まなかった食品、医療機器、部品組立等の幅広い分野で活躍する。
●公共・フロンティア部門「優秀賞」●
「消防用偵察ロボットFRIGO-M(フライゴーエム)」
開発者等>
・三菱電機特機システム
・総務省消防庁消防大学校消防研究センター
概要>
有機ガスや放射線などが漏洩する災害現場において、消防隊員に先行して現場に侵入し、消防隊員の侵入が可能か、侵入するためにはどのような装備が必要なのかなどの情報収集を行うロボット。強力な防じん、防水などの耐環境性能を有し、人が行うには困難な環境下での作業に広く応用が可能。
●部品・ソフトウェア部門「優秀賞」●
「D3モジュール」
開発者等>
・D3基盤技術
概要>
航空宇宙、鉄道通信分野等で多数使われている高性能の通信システムを応用したサービスロボット用通信基盤。幅広いサービスロボットに適用することができ、ロボットを安定して動作させることが可能。