年頭所感(日本建設機械工業会/日本フルードパワー工業会/日本金型工業会)

「スピード感覚をもって活動を推進」
●日本建設機械工業会 会長 竹内紀行

新年あけましておめでとうございます。
昨年の世界の建設機械需要は、一昨年までの情勢から急変し、欧州での債務問題拡大、中国での金融引き締め政策、鉱山用建設機械分野の減速等により、多くの地域で減少となりました。本年においても、引き続き欧州債務懸念や米国の財政の崖といった不確実性はあるものの、各国政府および中央銀行の政策等により、世界経済全体は緩やかに回復基調に移るものと考えています。建設機械は、今後とも世界の発展のために不可欠なものであり、世界中のお客様に建設機械をお届けするのはわが国建設機械業界の使命であります。今後とも一層のグローバル化が進む環境下において、わが国新政権には円高是正を始めとした各種政策への一層の取り組みを期待する一方、会員各社の不断の努力により建機産業力を強化していくことが重要であると考えております。

また、国内では、昨年は復興需要を中心に需要が伸張し、本年においても復興工事がさらに本格化していけば、相応の需要増が見込まれます。復興に必要な建設機械の供給およびその保守・サービスについては最優先に対応していく所存です。
こうした事業環境のもと、持続可能な社会の実現に向け、環境・省エネルギーといった社会的要請に積極的に取り組むとともに、情報通信技術を始めとするさまざまな最新技術の導入を推進し、より高品質で利便性の高い製品・サービスの提供に努め、ひいては安心・安全な施工の普及に貢献していきたいと考えています。
さて、当工業会では、設立理念として「調和と発展による世界への貢献」ならびに「共生と競争」を掲げ、さらに①良き企業市民としての社会への貢献、②ステークホルダーとの共存共栄、③公正・透明な競争と適正な取引の推進、④世界の一員としてのグローバル化の推進、⑤安心・安全の追求と人間中心の経営の志向、⑥環境保護、省エネルギー、省資源の推進、⑦新しい商品および分野の開拓の7項目からなる「経営パラダイム」を策定しております。

本年も、この理念・パラダイムの実現に向け、あらゆる変化に柔軟かつ機敏に対応できるよう、スピード感覚をもって活動を推進してまいります。
本年が、皆様にとりまして、健康で幸多き一年となりますよう祈念し、新年の挨拶といたします。

「景気の回復を待つのではなく、自ら需要を創出すること」
●日本フルードパワー工業会 会長 脇 憲一

新年明けましておめでとうございます。
平成25年(2013年)の年頭に当たり一言ご挨拶を申し上げます。
一昨年の3月に「東日本大震災」が発生してから早くも2年の歳月が過ぎようとしておりますが、原発問題は依然として出口が見えないなど、被災地が復旧し復興するまでには未だ遠き道程が残されております。兎角、日本人は熱しやすく冷めやすいと揶揄されますが、「千里同風」、即ち遠く離れていても被災地に吹いている逆境の風を忘れることなく、被災した人々が希望を捨てずに生き抜いていけるよう、復旧・復興事業を些かでも加速させることが強く求められております。

所で、昨年の我が国経済を顧みますと、前半は復興関連需要などを背景に堅調に推移してきた「内需」が牽引し、景気は緩やかに持ち直してきました。一方、米国の「超金融緩和策」の導入、欧州の南欧国債の無制限購入などが市場の動揺を抑え、世界経済が最悪の事態に至ることは回避されました。然し、中国などの新興諸国の景気が減速し、「尖閣問題」を巡る日中関係の悪化も重なって「外需」は不振となり、昨年10月の実質輸出は6ヶ月連続で前月を下回りました。私どもの業界でも年央頃から出荷の鈍化傾向が顕著になり、2012年度上期の期初予想を下方修正するに止まらず、通期の業績予想も下方修正する会員企業が相次ぎました。

昨年11月に、内閣府が発表した2012年7‐9期の実質GDPは、年率換算でマイナス3.5%と3四半期振りにマイナス成長になり、景気の基調判断も「足踏み」から「下方への局面変化」へと修正されました。また、政府が公表した月例経済報告でも、景気の基調判断を「世界経済の減速などを背景として、このところ弱い動きとなっている」と4ヶ月連続で下方修正されたことから、景気は既に後退局面に入ったとの見方が強まりました。
このような経済情勢の中で、政府・日銀は景気の下振れに備え、補正予算の編成、資産買い入れ基金の増額などの景気対策を実施してきましたが、エコカー補助金の終了などが個人消費、雇用、設備投資などを低迷させ、内需の先行きにも厳しさが増してきております。従って、現在は世界経済の減速により不振な外需の好転を期待せざるを得ません。2016年までに製造業で100万人の新規雇用を創出することを掲げた2期目のオバマ政権、2020年のGDPを2010年比で倍増することを掲げた習近平総書記をトップとする新指導部などによる強力な景気対策が求められるところですが、米国は減税失効と歳出削減が重なる、所謂「財政の崖」、中国は権力の腐敗や貧富の格差に対する不満、そして欧州は依然として燻ぶる債務問題などの影響が懸念され、未だ先行きの不安は払拭されておりません。実際に、経済協力開発機構(OECD)は2013年成長率の予測を日米欧全てで下方修正しております。
また、デフレ脱却が遠退く我が国経済の再生には、19年振りに越年編成となった2013年度予算の執行、円高の是正、強力な経済政策、国家戦略の大転換などが新内閣に強く望まれるところですが、「決定できない、実現できない」政治に依存し過ぎても決して難局は克服できません。君主論の著者であるマキアヴェリが述べているように、「見たい現実だけ見ている」のではなく、下手をすれば滅びかねないような厳しい現実を直視し、冷徹に環境を見つめる必要があります。何故ならば、見つめて得られた事実こそが難局を克服する「知恵」を生み出すからであります。即ち、生還できないような死地を彷徨し、絶体絶命の状況に追い込まれたときに初めて、本当に役立つ「知恵」は生まれてくるのであります。飽食し平和惚けした状況からは、不満や愚痴しか出てきません。況してや逆境に負けない「知恵」など生まれてくるはずがありません。ケネディ元大統領は就任したときに、「あなたがたが国に何を求めるかではなく、あなたがたは国に何ができるかを問いなさい」と演説しております。イギリスの著述家であるサミュエル・スマイルズも自助論で、「天は自ら助くる者を助く」、即ち自ら逆境や試練を乗り越え、勤勉と努力を忍耐強く重ねることが成功に至る唯一の道であると「自助」の精神の大切さを唱えております。また、日本には関東大震災、敗戦など、過去幾多の困難をも結束し連携して乗り越えてきたという「共助」の精神があります。今こそ、フルードパワー産業は、生き残るための「知恵」、自らの強靭さを養う「自助」、そして健全な競争をしながらも結束して助け合う「共助」とで、グローバル化への対応をしながら、更には地球温暖化への課題を省エネ技術などで解決しながら、景気の回復を漫然と待つのではなく、自ら需要を創出することで発展していくことが望まれていると存じます。

また、フルードパワー産業は日本の「経済」と「ものづくり」を支える重要な産業であります。資源のない日本はオーストラリアやブラジルのような資源立国には成り得ませんし、金融ノウハウもない日本は欧米のような金融立国になることもできません。これからも、日本は「ものづくり」立国としての産業を維持・発展させていく他に道はありません。従って、「ものづくり」が復活しない限り、日本経済の復活はありえないと私は信じて疑いません。
各需要業界の皆様方には更なるご支援、ご鞭撻をお願い申し上げ新年のご挨拶とさせていただきます。

「若手の活動に期待」
●日本金型工業会 会長 牧野俊清

平成25年の新春を迎えるに当たり、謹んで会員の皆様、関連感官公庁、関連業界の皆様にお慶び申し上げます。

世界金融危機、東日本大震災、タイの洪水の爪痕が今なお後遺症として癒やされずにいます。そのような環境下で、国内・国外とも政局主導の政治の混迷に振り回されています。国内の政局に関しては、政治家の就職・失業対策でポピュリズムに走っており、速く沈静化することを願っています。

円高が日本のものづくりを直撃しています。2007年6月に1ドル124円が、昨年11月末で81円(2月76円)となり、150%の上昇です。成長著しい中国が1元16.26→12.99円(125%)、韓国が100ウォン13.38円→7.44円(180%)ですから、どう考えても以上です(07~10年の平均消費者物価指数は中国3.3%、韓国3.2%、日本0.2%)。

日本の電器メーカーなど日本のものづくりが業績を悪くしている最大の要因です。阿部首相の金融緩和の発言もあり、最近若干改善されていますが、まだまだ円高といえます。金型の昨年10月までの1年間の生産額は、一昨年より8%上昇しましたが、リーマンショック前2007年の7割しか回復しておりません。アジア諸国への生産移転の影響もありますが、円高・大震災等により大企業の新製品開発が停滞していることも原因かと考えられます。日本のものづくりが危機です。

現在、経済産業省で「素形材ビジョン」の見直しが進められ、工業会でも「金型ビジョン」の見直しを来年度行う予定です。前年、前段階として、東京経済大学の山本専任講師に依託し、金型工業会緊急対策事業「金型企業の5年後を想像するための基礎資料」を発行いたしました。事例も多くご参考になるかと思います。

見直しをする「金型ビジョン」の骨子は、①営業力(提案力)、②海外展開、③金型技術を活かした新分野への事業展開、④人材(経営者・社員)、⑤技術研究開発、が検討されています。会員の皆様に有益なものを作成したいと思います。

金型ジャパンブランド活動として、展示会を含めた海外ビジネスミッション(ヨーロッパ、米国、インドネシア、シンガポール、タイ、中国、韓国等)を積極的にしておりますが、若手が中心となり、日本インダストリアルデザイナー協会と連携し、商品デザインコンペ(第一回はキッズデザイン)も新たにスタートしました。

これからの金型業界の中核となり試練を受ける若手の活動には、大変期待するものです。金型工業会は、昨年事務局員の縮小をいたしましたが、心機一転して工業会一体の認識のもと、ウェブ環境を活用することにより、3区域連携して、サービスの劣化ではなく拡充を進めております。

緊急事態が続く今年においても、会員、賛助会員、顧客、経済産業省素経済産業室はじめとした監督官庁、学会の大きな覆えんにより、この難局を乗り越えていきたく思う所存でございます。皆様のご理解ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げ、年頭の挨拶とさせて頂きます。

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