年頭所感(日本工具工業会/超硬工具協会/日本工作機械輸入協会)

「夢を持って皆で同じ心持で進んでゆく」
●日本工具工業会 理事長 増田照彦

昨日の空とちっとも変らないのに初御空を見上げると、新鮮で特別な空のように感じます。これから始まる様々な物語を予感して、それがどんな展開や結末であってもすべてが自分の心根を清らかにしてくれたり、人生の学びのテキストであると考えると、清々しい新春に思えて、心がわくわく致します。この暦の一巡りは自然に身を委ね、煤払いをしながら、新たな希望を託す人間の知恵だなぁとしみじみ感じる歳になりました。

鏡餅を「切る」という言葉を忌み、「開く」と表現して「鏡開き」とするぐらい、新年には言葉や物語の内容に気を配る日本人ですが、昨秋のこんな話をさせて下さい。
それは、お天気にも恵まれ入場者数も前回比13%アップの15.5万人にお出掛け頂きました「匠の技と先端技術の融合」をテーマにしたJIMTOFの直前でありました。

突然、腰に痛みを感じ、即まったく動けなくなりました。5日間、布団の上の生活を余儀なくされました。その5日間には世界から責任者を集めた大きな会議、大切なお客様の周年式典などが詰まっていました。リーマン、震災、洪水と翻弄されたここ数年。今度は自身にやってきたというわけです。

それぞれに起こった現象を恨むのではなく、それぞれに意味を見出して納得してきたのですが、自分に降りかかった時にはなかなか意味を見出せませんでした。気持ちが焦りました。しかし、痛みには抵抗することができません。そのうち痛みで動けないなら、ゆっくり休ませてもらおう、腹を括り部下に任せることにしました。それにしても、このことによって何を学ばせようとしているのだろうか。

JIMTOF開幕までには杖をつけば、なんとか立ち、歩くことができるようにはなりました。杖をつく姿は、現在の置かれた環境、課題、業績を象徴しているようで、情けない思いで連日ブースに立ちました。ところが、杖をついて立ったことで、元気なときには見えなかったことが見えてきたのです。私に教えようとしていることがおぼろげながら分かり始めました。いろんな励ましやアドバイスを頂くなかで、お客様と心のキャッチボールがむしろ出来たのです。

自分が、という「我」をなくすこと。多くの周りの方々に助けて頂くこと。結果、大いに皆が育つこと。そのことに感謝の意を尽くすこと。
腰が痛いなら、「あ、腰が痛い」とだけ口にすること。その原因はあの日のアレ、この日のソレに違いないなどと余計なことを考えても意味がない。どうしようもないことは断ち切ること。余計なことばかり考えたり、見ようとしたりするとホントの部分が見えなくなること。

無理やり治そうとしないこと。疲労が蓄積した期間だけ、回復に掛る期間は必要だと覚悟すること。そして大切なのは、痛みにとらわれないこと。痛みはあっても心までは病まないこと。私の尊敬する方がよく書にかかれます。「人は心で生きるもの。舞いたる衣に光受けつつ」

がむしゃらに自分が動くのではなく、腰痛で実際動けなくさせられた結果、周りが動くことになった。そういうことを教えてくれているということで、ある種の明らかに極めるという意味での「諦め」に包まれたら、とたんに呼吸が楽になった。

年があらたまっても、現在の私たちを取り巻く事業環境は六重苦とか八重苦とか表現され続けています。考えてみますと、今までも苦労が重なっていない時期などなかったのですし、世の中は変化するに決まっていますから、ことさら言うまでもないのでしょう。
与えられた条件下で、ピンチにこそ私たちはあれこれ知恵を絞りながら、この経過を見事に通り抜けたときの姿を生き生きと思い描きながらそれに向かって、ときを見失わず味方に付けて夢を持って皆で同じ心持で進んでゆく、ということが大切なことじゃないかと思い始めています。

水温む兆しを見逃さず、足元の山菜の芽を踏みつぶすことなく、遠景の山が笑うときには共ににんまり出来るように、できれば見上げる桜をその地「点」だけでなく、桜前線とともに自らも移動して多くの感動を「面」にして、日本工具工業会の会員各社の自信作である、かけがえのない新製品に「陽」をお付けして、お客様に届けて参りたいものだとあらためて初春に願っています。

「経済の継続的成長を支えるのは製造業」
●超硬工具協会 理事長 田中啓一

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
年頭所感にあたり、昨年の今頃はどのようなことを予想していたのかを顧みますと、東日本大震災からの復興と日本企業が多くの生産拠点を置くタイでの大洪水の終息などにより、緩やかながらも景気は回復するものと予想しておりました。しかしながら、大震災からの復興は各方面の努力にもかかわらず思うように進まず、期待していた復興需要も予想を下回る効果しか及ぼせないでいる状況です。また、日本を取り巻く東アジアでの外交問題は製造業だけに止まらず、小売業も含め日本の産業全体に大きな経済的損失を引き起こし、今後の見通しが難しい状況になっています。昨年の経済環境から本年を考えてみますと、外交問題も沈静化したとはいえ火種が消えたわけではなく、新興国が昨年以上の率で成長する要因も今のところ見当たりません。また、国内のエネルギー問題も産業に大きな不安を残す要因となっております。

このようなことを列挙してまいりますと本年も日本経済に明るい材料がないように感じますが、第二期を迎えるオバマ大統領のもとで、アメリカ経済は、今後急速ではないにしても回復の基調に入り世界経済に良い影響を及ぼすものと思われます。また、東南アジアもまだまだ伸長の可能性を持っている訳で、具体的にはミャンマー、ベトナムを含む新興国への進出は一層進む状況にあり、今後の経済発展とともに成長していく余地は十分にあると考えています。

当協会においては、2012年度上期の出荷額は1,436億円と昨年同期に比べ98.8%と残念ながらマイナスとなりました。また、通期の予想は当初の3,040億円から2870億円と下方修正せざる得ない状況にあります。しかしながら、昨年行われましたJIMTOF(第26回日本国際工作機械見本市)は前回以上の来客数となり、日本の技術力の高さを示す格好のチャンスとなり、今後の需要に大きな期待を抱かせる結果となったと確信しております。また、本年はアジアで初の世界切削工具会議(WCTC)を5月に京都で行うことを予定しております。ヨーロッパ、アメリカをはじめ、世界各国の切削工具メーカーによる情報交換の場として、情報の収集と発信を行うことで、業界全体として新たな発展が望めるものと期待しております。

時代の変化するスピードは年々早く、しかも大きく広がっております。グローバルという言葉を使う必要が無いほどに経済の世界では、ひとつの大きな地域になったと捉えることが出来ると思います。経済の継続的成長を支えるのは製造業であることは、豊かさの基準が変わったとしても変わることはありません。新たな価値に敏感に反応できる日本産業界であり、協会であり続けるためには、昨年もお願いしましたが【コンプライアンス】を最優先した経済活動を行わなければなりません。各企業の皆様には改めて、このことをお願いしたいと存じます。

今後も超硬工具協会の一員として、業界の発展のため尽力する所存でございますので、皆様方にはなにとぞご支援のほど宜しくお願い申し上げます。最後になりましたが、皆様方のご多幸とご発展を心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

「海外メーカーと一体になったサービス体制を構築」
●日本工作機械輸入協会 会長 千葉雄三

                                           平成25年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、当協会の事業活動にご支援・ご協力を賜りまして誠に有難うございました。

昨年の工作機械業界を取り巻く環境は、超円高の定着、欧州の財政危機、中国の景気減速などの要因から不透明感を増しておりましたが、更に、中国および韓国との領土問題から発生した自動車を中心とする日本製品の不買運動が激化し、年度後半に於ける日本メーカーの中国での自動車販売は激減いたしました。

そのような種々の向かい風の中、日本工作機械工業会の発表によれば、日本の工作機械メーカーの受注額は、年初予想の年間受注額1兆2千億円を達成できると予測されております。外需、内需の割合は概ね7:3となっていて、新興諸国に於ける急激な経済成長、日本企業の海外生産加速による外需増大が顕著であります。

当協会会員各社の状況はといいますと、内需不振の影響で、超円高による輸入工作機械価格の低下は販売の追い風とはならず、輸入統計数値には回復の兆しが現れているとは言えません。昨年1年間の切削型工作機械の輸入額は、520億円程度になったと思われ、大震災の年でありました前年に比べ約2割弱の増加に留まっております。過去最高であった平成18年の輸入額770億円からは3割強の減少ということになります。一方で、コンポーネント機器・工具・ホルダー等の周辺機器は、いずれも過去のピーク値の90%程度まで回復してきております。

年頭にあたり、当協会としましては本年の内需の力強い回復を願わずにはいられません。
昨年末からの超円高の是正傾向、新興諸国に於ける政情不安や賃金の高騰、等が国内での物造りへの回帰を促すことになれば、という思いがあります。

昨年9月には、米国・シカゴで開催された「IMTS2012」へ例年のように輸入促進ミッションを派遣致しましたが、大変に活気が感じられ、米国に於いては物造りの国内への回帰が既に始まっているように感じられました。また、昨年11月の「JIMTOF2012」には当協会会員35社が455小間に出展いたしましたが、予想を超える来場者数があり商談も活発だったことから、国内の潜在需要が活性化されつつあるのではないか、との思いも致しました。

今年は、9月16日(月)から21日(土)まで、ドイツ、ハノーバーにて「EMOハノーバー2013 」が開催されます。当協会では今年も恒例の輸入促進ミッションを派遣いたします。新しい工作機械の需要分野とされるエネルギー・医療・環境対応・航空宇宙関連産業における加工方式に対応した、優秀な工作機械が多数展示されております。
多数の皆様のご参加をお待ちしております。

厳しさの続く市場環境において、私共は優秀な輸入工作機械と周辺機器を発掘してその導入を図ると同時に、海外メーカーと一体になったサービス体制を構築することによって工作機械の輸入拡大を図り、バランスのとれた業界の発展と日本のものづくりに貢献できるように努力して参ります。

最後に皆様にとって、今年が最良の年となりますように祈念いたしまして新年のご挨拶とさせていただきます。                                           

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