年頭所感(経済産業省製造産業局産業機械課/日本機械工業連合会/日本産業機械工業会)
「時代認識に立った骨太の取り組みを」
●経済産業省製造産業局 産業機械課長 須藤 治
平成25年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
さて、世界経済は、引き続き欧州政府債務危機やアメリカの「財政の崖」といった景気の下振れリスクを抱えつつ、以前より懸念されていた中国景気が目に見えて成長テンポを鈍化させているという予断を許さぬ状況で新年を迎えました。また、昨年は、中国における反日デモが、日本の産業機械メーカーの中国ビジネスにも少なからぬ影響を与え、中国ビジネスの難しさについて改めて考えさせられる機会となりました。
このように不安定な時こそ、短期の景気認識を超えた、中長期の時代認識に立った骨太の取組を、我々は進めていかなければならないと思います。
先進国の少子高齢化が進む一方で、途上国は人口が増加しており、世界人口は70億人を突破し増加を続けています。中国、ASEAN、インドは、テンポが緩まっているとは言え引き続き数%台の成長率を続けており、こういった新興国におけるインフラ開発、都市開発、資源・食料への需要増が世界経済を牽引することは間違いありません。また、エネルギーでは、需要面では新興国を中心にエネルギー消費が増加し、供給面では非在来型天然ガス開発だけでなく豪州等における在来型天然ガスの開発が進められており、天然ガスが石炭と並ぶ主要な一次エネルギーの地位を占めていくでしょう。
経済産業省は、この数年、「世界経済の成長を日本の成長に取り込む」ということで、戦略分野を策定して、その促進に取り組んでまいりましたが、上述の世界の中長期的構造変化を踏まえて、これまで以上に、関連産業の振興を強力に進めたいと思います。
一方、国内に目を転じますと、人口減少と経済成長鈍化による国内市場の縮小、高齢化や労働力人口の減少、エネルギー供給不安、製造業における新興国企業との競争激化といった諸課題に囲まれております。こういった課題を解決しながら新しいビジネスを創出しようというのが、今後も変わらぬ経済産業省の基本方針だと考えています。
産業機械課は、昨年11月、厚労省と連名で「ロボット技術の介護分野における重点分野」を策定・発表しました。今や団塊の世代が65歳以上となり、今後10年間で日本の総人口に占める高齢者の割合は30%に達します。介護を巡る様々な課題に対して有効な手段を講じていくことが急務となっており、課題解決の一端をロボット技術が担っていきたいと考えております。
製造業の国内維持も、引き続き我々の重要な課題と認識しています。今年は平成23年度補正予算による国内立地補助金を措置しました。今後に向けても、法人税引き下げや研究開発減税といった税制改正要望を行っておりますが、企業が恒久的に工場や研究拠点の立地先として日本を選択してくれるような国内立地環境について、広い視点から考えていきたいと思います。
産業機械課は、これからも、皆さんの生の声を聞き、それを産業政策に反映させていきたいと思いますので、良いアイディアやお困り事があったら、気軽にお声を掛けてください。
最後になりましたが本年が皆様方にとって更なる飛躍の年となりますよう祈念いたしまして、新年の挨拶と代えさせていただきます。
「成長分野を取り込むなど自らの構造改革を進めることも必要」
●日本機械工業連合会 会長 伊藤源嗣
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、お気持ちも新たに新年を迎えられたことと存じます。
年頭にあたり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様の暖かいご指導とご支援に対し、心より御礼申し上げます。
さて、我が国の経済は、昨年は東日本大震災からの復興需要の本格化に伴い、景気の回復が期待されましたが、欧州債務危機の再燃と中国等新興諸国の経済減速で輸出が急速に鈍化したことから、昨年7-9月期の実質国内総生産(GDP)は3四半期振りにマイナスとなり、10-12月期も引き続き減少する見通しであります。今後は、復興需要は底堅いものの、海外経済の回復は不透明であり、政策効果が薄れて個人消費も減速感が見え始めており、景気は後退期に入ったとの見方が強まっています。自民党を中心とする新政権には景気の後退が長期化せぬよう、実効性のある経済対策を迅速に実行して頂きたいと思います。
我が国を取り巻く社会経済環境は、大変厳しい状況にあります。デフレからの脱却は容易ではなく、経済成長の低迷に伴う税収減少と高齢化による社会保障費の増加で政府・地方の債務は20年間で3倍に増大しています。また、新興諸国を含めた厳しいグローバル競争が加速する中、超円高や世界一の法人税率など6重苦と言われる我が国の事業環境の改善は遅れており、企業の国際競争力の低下と海外進出の加速、海外からの投資抑制の要因となっています。加えて、東日本大震災からの復興や原発事故に伴う今後のエネルギー確保など、難題が山積しています。
我が国が現在の困難を乗り越え、今後の繁栄を確保するためには、政府、企業、国民が一丸となり、諸課題の解決に全力で取り組んで行く必要がありましょう。
とりわけ政府の役割は重要であります。昨年末の衆議院議員選挙では、消費税増税、脱原発、TPP(環太平洋経済連携協定)など、我が国の今後を左右する重大な問題が争点となりましたが、新政権には将来にけっして禍根を残さぬよう、正しい方向を選択し、速やかに実行に移されることを期待致します。
企業活動を後押しし、新しい需要を生み出す成長戦略は経済再生のために非常に有効であり、確実な実行が求められます。少子高齢化が急速に進む中、持続可能な社会保障制度の構築と中長期的な財政健全化のために「社会保障と税の一体改革」の早期実現も欠かすことができません。また、我が国の事業環境は企業が国内においてものづくりを続けていくことが困難な状況となっており、これらが早急に改善されなければ、我が国からものづくりの基盤が失われてしまう懸念があります。実際、製造業の就業者数は20年前より3割近く減少しています。製造業の活力を取り戻し、国内雇用を十分確保するためには、国際水準の事業環境を整備することが必要であり、政府には大幅な円高の是正、規制緩和など有効な政策を講じて頂きたいと存じます。
資源に乏しい我が国にとってエネルギーセキュリティへの対応も極めて重要であり、電力供給の安定化は国民生活や産業活動のために是非確保せねばなりません。そのため全電源の約3割を占める原子力発電は欠かすことが出来ず、安全性を十分確保した上で再稼働に向けて検討すべきと思います。また、我が国の国是である自由貿易を一層加速させ、アジア等新興諸国の需要を取り込むためには、交渉開始が決まった日中韓及び東アジア全域との自由貿易協定、対EUとの経済連携協定に加えて、TPPへの交渉参加も進めるべきであり、政府には国益という「全体最適」の視点から早急な決断をお願い申し上げます。日機連と致しましても各国・地域の関係団体と協力しつつ、国際連携強化のための努力をして参りたいと存じます。
我々機械工業は我が国産業の中核として、イノベーションによる新技術や新製品の開発、コストの削減などにより国際競争力に秀でた製品を作り上げ、輸出し、我が国の繁栄を牽引してまいりました。しかし、近年、新興諸国等の技術力は飛躍的に向上しており、その国際競争力は大幅にアップしております。我々がそれらに対抗し、打ち克ち、我が国経済の未来を切り開いていくためには、従来以上に研究開発に力を入れるとともに、厳しいグローバル競争を勝ち抜く戦略を構築し、実践していくことが重要であります。また、メーカーの知見やシーズを活かして新たな需要を創出するとともに、変化する市場の需要動向を的確に捉えて成長分野を取り込むなど自らの構造改革を進めることも必要と考えます。
日本機械工業連合会では、我が国機械工業の競争力を維持、発展させていくための課題に鋭意取り組んでおります。本年も、理数系グローバル人材の育成・教育調査、ドイツ機械工業連盟と協力した模倣品対策調査、レアメタル等資源制約に対応する材料再資源化の調査研究、機械の安全対策や標準化など会員各位の企業経営にとって密接なテーマを取り上げ、調査研究を進めるとともに、税制面での改善方策など機械業界の事業環境改善に向けた要望や政策提言などを行って参ります。また、折にふれてホットイシュなどについての情報提供を行うため、会員講演会、セミナー、シンポジウム等を適宜適切なテーマにて開催しており、昨年は計12回実施しましたが、本年は昨年以上の会合を開催し、機械業界への情報提供に務める所存です。
皆様には大変厳しい事業環境が続く中、ご苦労が多いことと存じますが、日本機械工業連合会は、新たな時代に求められるニーズに対応し、皆様と産業界の利益のために誠心誠意努力を続けたいと存じます。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げます。
「日本再生 出発の年に」
●日本産業機械工業会 会長 佃 和夫
平成25年を迎えるにあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
皆様には、気持も新たに新年を迎えられたことと思います。
昨年を振り返りますと、わが国経済は、国内総生産(GDP)が4~6月、7~9月と2期連続でマイナスとなるなど、世界経済の減速や復興需要の息切れ等を背景に弱い動きが続き、4月頃からの景気後退局面入りが浮き彫りになったとみられます。なお、12月に内閣府が発表された景気動向指数では、数ヶ月先の状況を映す先行指数が改善に転じるなど、わが国経済に「ほのかな灯り」も見えつつあるようですが、歴史的な円高水準の長期化や、長引くデフレ、電力の供給不足などが続く中、企業の皆様にはご苦労が絶えなかったのではないかと推察いたします。
私ども産業機械業界の昨年の受注は、内外需とも悪化し厳しい状況が続きました。年初には海外で大型LNGプロジェクトを受注するなど、外需を中心とした持ち直しの動きが拡大するものと期待しておりましたが、世界経済の減速を背景にアジアを始め殆どの地域で需要が減少した他、内需も製造業・非製造業とも低調に推移するなど、先行き不透明感が高まっております。
今後、業界全体が活性化し更なる発展を目指すためには、国内外の需要を喚起するため、新たな技術やシステムの開発等を通じて、社会に貢献していくことが益々重要であると考えます。
また、円高や諸外国企業との競争激化等を受けて日本全体が悲観的な気分に傾いておりますが、これに流されることなく、自らの得意分野を冷静に見極め、生産性をさらに高めると共に、海外への事業展開についても国内事業との役割分担や共存を念頭に置いた上で推し進め、世界の成長センターであるアジア地域の経済社会の発展に貢献しながら、共に成長していくことが必要になっていると思われます。
さらに、地球環境保全と経済発展の両立を図ることが世界共通の課題として認識される中、わが国産業界が世界に誇る高い技術力を有している省エネルギー・再生可能エネルギー・環境保全の分野を強化・育成していくことは、日本再生に必要な新しい需要や雇用を創出することに繋がると共に、日本企業の技術や製品、サービスを結集し、海外に普及させることは、地球規模での低炭素社会の実現という国際貢献にも繋がるものであります。
以上のような認識のもと、我々産業機械業界は、東日本大震災により被災された地域の経済社会の再生に引き続き取り組むと共に、わが国産業のものづくり力・国際競争力をより一層強化するため、高い技術力のもと高品質で信頼のおける製品の提供に取り組んでいく所存です。
同時に、わが国の強みであるエネルギー・環境保全分野に関する技術やサービスにさらに磨きをかけ、関連産業と連携しながら新たな市場を創造し、地球環境保全と日本経済の再生に引き続き貢献してまいります。
昨年末に誕生した新政権におかれては、震災復興と成長戦略の一体的推進や円高是正に向けた各種施策の機動的・戦略的展開、EPA・TPPの取り組み強化、エネルギー価格の安定と供給体制の整備等、日本再生に向け、成長と競争力の強化を重視した政策の一刻も早い実現を強く期待しております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。