世界に広がるマーケット 仕事をつくっていきたい
水野正男氏はイスラエル・ノガエンジニアリング社(Noga Engineering Ltd.)の日本法人として、1996年に埼玉県上尾市にノガ・ジャパンを設立した。
ノガ社は、金属・プラスチック等の切断面・ドリル穴等のバリを手作業で簡単に除去するバリ取りシステムのパイオニア。イスラエルの工場より世界50カ国以上に、独自の製品を輸出している。精密機械部品加工時の精度測定用のテスト・インジケーターやダイヤルゲージ等を保持するマグネット付ホールディングシステムの分野でも特許式の手元微動送り機構の付いたノガフレックスをはじめとして世界最高級の製品を豊富に揃え、その他、金属加工時の切削油吹付装置として、極少量の切削液のみを塗布するセミドライ加工用のコブラ2000ドロップエジェクターやミニクール、ノガマニフォルドを生産している。
同社では、1998年度より世界でも成長著しい作業工具メーカーであるドイツ・ビーハ社(Wiha Werkzeuge GmbH)の製造する作業工具の日本総代理店として、ドライバー、六角レンチ、ハンマー、ビット等の在庫販売を開始、さらに2002年より、イスラエル・カーメックス社(Carmex Precision Tools Ltd.)、2008年よりイタリア・ジェラルディ社(Gerardi S.p.A.)及びアルベルティ社(Alberti Umberto & C. snc)、2010年より米国・ナイアガラカッター社(Niagara Cutter Inc.)の日本市場における総代理店となっている他、一部の製品(LEDスタンド、デュアルアーム等)を日本で製造している。
生産性を左右する切削工具
今年からナイアガラ・カッター社の日本総代理店となり、標準品の在庫販売、特注品の販売を開始した水野社長は言う。
「ナイアガラ・カッター社は最先端の製造設備をすべて取り揃えています。CNC加工機、真空熱処理炉、CNC研磨機械、PVDコーティング設備、結晶ダイヤモンドコーティングシステム、冶金および機械加工試験室など充実しており無人運転を可能にしています。ロロマテック社製のマシンもざっと100台は並んでいます」
最近のトレンドである航空・宇宙分野で使用されているアルミ、ステンレス鋼、チタン、複合材の加工技術に適した工具形状、素材、薄膜コーティング技術、製品寸法公差、製造技術などを組み合わせそれぞれの製造現場に最適な工具を送り出しているという。
「われわれが扱っている製品は加工に関する問題を解決する工具です。世界で数社しかない特別なものを扱っています」(水野)
同社が扱っているナイアガラカッター社の工具は最新の航空・宇宙産業用素材に対応する最先端の工具。航空機部品メーカーとの緊密な協力関係により、高い性能を発揮する。今や航空機は金属を中心とした機体から、高性能の金属合金と組み合わせた先進的複合材へと転換、重要構造体の50%までが複合材によってつくられ、その他の基幹部品の15%がチタンとなる。これらの素材に対応する切削工具は、工具の刃先に熱が溜まれば工具摩耗が進むだろうし、熱の発生に対応するために切削速度を遅くすれば生産性が悪くなる。適正な工具の形状とコーティング技術が高能率加工を実現するのだ。
「ものづくりはウソが言えません。すぐバレるから」
「世の中多種多様なビジネスがありますよね。中には眉唾ものの投資話等もあります。ですが、ものづくりはウソが言えません。結果がすぐ出るからすぐバレちゃう(笑)。今や設備が良ければ国を問わず優れた加工ができるようになりました。どの地域で加工をしてもクオリティの高い製品ができます。このような時流で、“仕事をつくっていく人”と“仕事を待っているだけの人”じゃ、どっちが稼ぐか目に見えています。バブル時代、日本と中国の格差はおよそ50~70倍もあったのに、今はせいぜい10倍くらい。20年ほど前のアジアはイコール日本だった」(水野)
今や中国などの開発途上国は消費市場としても将来性が見込まれ、成長も著しく魅力に溢れているが、ハイテクという観点からいくと先進国に依存せざるを得ない側面もある。最後に世界を飛び回る精力的な水野社長は、「世界中でマーケットは広がっています。特定の産業は残るだろうし、新しい産業が生まれる可能性だってあるのですから、どんどん仕事をつくっていきたいですね」と話した。