人が使うモノだからこそ人に使われやすい製品づくりを目指す! ユキワ精工


新潟県といえば金属加工業を思い出す方も多いと思うが、中でも小千谷市は高精度・高品質を得意とした特定分野で高いシェアと技術力を持つ企業が豊富である。この地で昭和21年の創業以来、独創的な技術を育みながら新製品の開発や専用機の自社開発に注力してきたユキワ精工(社長=酒巻和男氏、住所:新潟県小千谷市千谷2600-1)は、主要製品であるドリルチャックは国内で80%のシェアを誇っている。ハイテクを駆使する分野で高い評価を得ている同社の『グリーンG1チャック』は、昨年、「グッドデザイン賞2012 グッドデザイン・ものづくりデザイン賞受賞 中小企業長官賞」を受賞した。酒巻弘和常務を訪ね、お話を伺った。

外観も美しい『グリーンG1チャック』

機能美を追究した「グリーンG1チャック」
機能美を追究した「グリーンG1チャック」
ユキワ精工の技術開発におけるテーマは、「人が使うものだからこそ、人に使われやすい製品を目指す」。同社では設計技術、計測技術、制御技術、精密核技術、精密組立技術など製品に関わるあらゆる技術の研究開発を強力に推進しながら設備機械とその周辺技術にユキワならではの成果を発揮してきた。

昨年、日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞 中小企業長官賞を受賞した『グリーンG1チャック』は、「外観の仕上げも美しく、加工の高速・高速度化、高精度化、高能率か、経済性や環境性の向上など日本のものづくりに優れたデザインとなっている」と審査委員に評価された。

酒巻常務はこの製品の開発について、「従来は粗加工用と仕上げ加工用の2本のツーリングホルダが使用されていますが、これを1本で済むようにしました。1回で仕上げ加工を行うことで加工時間を大幅に削減することができるよう、ホルダの剛性、精度を最大限に向上する構造です。高速・重切削時に発生するびびり振動を抑制するため内部に振動減衰機構を設けることで、工具への負担が大幅に軽減しました。工具寿命が延長したことで経済効果も高く、廃棄物排出低減に貢献することができ、環境面にも配慮した製品です」と話す。

切削工具を工作機械に取り付けるホルダだからこそ、工具の落下を防止し、安全に工具交換を行うよう注意が必要だが、工具交換時に掴みやすく、滑らないように工夫がされていることにも注目したい。爽やかなグリーンが他の工具との識別をしやすくし、視覚から作業ミスを低減するよう配慮がなされている。

人が使うものだからこそ―――という同社の“人間の視点”からみた技術がここにも活用されていた。

小千谷は金属部品メーカーの集積地。高いシェアと技術力を持つ企業も豊富!

 
人口4万人弱の小千谷市にはユキワ精工の他にも理研精機、第一測範、日本ベアリングなど、高い技術力を持つ企業が目立つ。それゆえ職人の技能伝承について真剣に取り組んでいる地域でもある。

近年、製造業を取り巻く環境は、少子高齢化や技能者の高齢化や技能の伝承などが問題視されているが、金属部品メーカーが集積している小千谷だからこそ対応策が急務だとされている。そこで、企業が集結し、 人材育成することは必要不可欠であるとした小千谷鉄工電子協同組合では機械加工の技術を継承することを目的として「テクノ小千谷名匠塾」設置している。 “心を磨く”、“物を磨く”、“技を磨く”の三本柱を掲げて地場の活性化を図っており、会員企業のユキワ精工も若者の人材育成に注力している。


「優れた技能を習得するには経験や学びが必要ですが、技能だけでなく、機械や工具を大切に扱う心や、仕事に対して積極的に考え行動するという人間的なスキルの向上も含めた“人材育成”を考えています。受講生はテクノ小千谷名匠塾で専門講師に一定期間、技能習得に励んでもらいますが、他社の受講生と交流することで触発されてヤル気が倍増したり、新たな発見があったりと、若者の技能習得に対する意識の高さに驚かされることもあります。“ものをつくること”に対する責任と誇りを持つ優秀な若者が増え、その習得した技能をまた後輩に継承していく循環をつくっていきたい。それがゆくゆくは、企業の発展はもちろん鉄工業が盛んな地域の発展にも繋がると感じています。」(酒巻常務)


数々の製品はもちろん、専用の加工機までも自社で生み出す開発力を持つユキワ精工。
まさに心を込めて“品質をつくり込む”といった一人ひとりの意識が信頼の“ユキワブランド”を築いている―――。

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