世界切削工具会議(WCTC)2013が開催! 切削工具業界からみた各国製造業の現状と展望を一挙公開する
「世界切削工具会議2013」(主催=JCTA日本切削工具協会[超硬工具協会・日本工具工業会]理事長=田中啓一超硬工具協会理事長〔日立ツール社長〕)が5月13日(月)~16日(木)の4日間、ウェスティン都ホテル京都にて開催され、海外90名、国内100名が参加した。
この国際会議はECTA(European Cutting Tool Association)の元理事長であるAnders Ilstam氏が発起人となり、米国USCTI(United States Cutting Tool Institute)への働きかけにより、世界切削工具会議(WCTC)として開催企画されたもので、わが国としては1998年4月に米国フロリダにて開催された第1回目に日本工具工業会が参加し、第2回(2001年5月、英国エジンバラで開催)から超硬工具協会・日本工具工業会との合同団体「日本切削工具協会JCTA:Japan Cutting Tool Association」として毎回参加している。今回、アジア圏では初開催となることから、日本を象徴する都市、京都で開催した。
世界の切削工具業界を取り巻く環境をみると、地球規模で活動している製造業の現状と展望が見えてくる。
各国の代表が説明した内容を一挙公開する。
開会宣言は田中JCTA日本切削工具協会理事長が行い、引き続き各国の代表が展望を説明した。概要は次のとおり。
「特定の国や株式が世界経済を引っ張っていく時代は終わった。今後は全ての地域で世界経済を引っ張っていくチャンスがある」
●JCTA日本切削工具協会 田中啓一理事長
この度は、この日本の古都、京都にお越し頂きまして誠に有難うございます。
ECTA(European Cutting Tool Association)、USCTI(US Cutting Institute)の方々が発足された1998年フロリダで開催された第1回より今回で5回を迎えることとなりました。そして、アジアで行われる最初の世界切削工具会議をこの京都に皆様をお招きして開催出来ることを関係者の一人として心より御礼申し上げます。
ご存知のとおり、アジア地区は急激な経済発展をしております。
しかしながら、GDPで見てみますと、全体としては緩やかな右肩上がりであり、この牽引役は中国、インド、韓国、インドネシアになります。
日本以外の他のアジア諸国の発展が今後のアジア全体を成長させることになるのだろうと予想されますが、長くアジアの牽引役であった日本市場の状況を説明すると、2005年をベースにした主な産業の出荷指数ですが、2007年まで緩やかな増加をしていた出荷金額も、2008年には減少に転じ、2009年のリーマンショックにより出荷は半減しました。
それ以降、徐々に回復に向かっておりますが、全体としてはリーマンショック前に到達しておりません。
しかしながら、国別で見て見ますと既にリーマンショック以前の状況に戻っている国もあります。最近は、以前のように特定の国や株式が機関車のごとく世界経済を引っ張っていく時代は終わったように思えます。これからは、全ての地域で世界経済を引っ張っていくチャンスがあるわけで、各地域の皆様のご活躍をお祈りしています。
日本の切削工具の状況ですが、日本には切削工具を扱う協会が二つあり、ひとつは特殊鋼を主材料とする工具メーカーが会員となっている日本工具工業会であり、その会員数は48社であり、もうひとつは、超硬合金を主材料とする工具メーカーが会員となっている超硬工具協会で、会員数は68社になります。それぞれの協会が会員に対して情報発信を行っており、両協会の連合体が「JCTA」になります。
特殊鋼工具の状況ですが、2007年を100%とした場合、2009年には生産額が約半分まで落ち込みました。
その後回復をし、2012年には約80%となりました。
この状況は、いずれの製品区分においても同じ状況になっております。
一方、超硬工具は全体として2009年には60%程度の落ち込みとなりました。しかし、その後の回復は鈍く2012年の時点でも80%程度しかありません。
両方の数字を合算してみますと、2012年で3658億円となり、今後の世界経済の変化とともに増加することを期待しています。
次に、我々切削工具メーカーにとって重要な産業についていくつかご紹介いたします。
まず、自動車業界をみてみますと、世界の自動車生産台数は2009年の大幅な落ち込み以降、回復をしております。その牽引役は中国を筆頭にアジア諸国であることは言うまでもありません。その中で、日本の生産台数は2010年から2011年にかけては、減少の傾向にありますが、2012年には増加に転じております。
日本の2012年の生産台数は994万台で12社以上のメーカーが存在しております。
各自動車メーカーは日本以外の各国に生産拠点をもっております。また、その多くが日本で研究開発を行っているわけです。
そこには多くの工具が使用され、生産を開始するための工具も選定されています。
したがって、我々、切削工具業界の技術も同時に進歩することとなります。
また、自動車以外でも航空機産業と発電関連や自然エネルギーの分野もまだまだ期待できる産業であります。
特に、航空機産業で、今後20年間では倍以上の旅客があると予測しております。
近年では燃費の良い中型機を中心に新規の製造が行われ、2031年までには120席から170席までのジェット機が10137基も製造されるという予測も出ております。
日本には航空機に関するメーカーも多く工具の需要も見込まれます。
世界の国々の関心は、今後のエネルギー政策が具体的にどの方向に行くのかということですが、いずれにせよ、原油を輸入に頼っている日本にとって重要なインフラ整備は必須であり、そのため、日本の科学技術、工業技術は現在にもまして重要となり、更なる進歩が必要になってきます。
工業の需要も、この政策次第で伸長することが期待されています。
日本は2011年の3月に大地震がありました。幸い全世界から頂いたご支援のお蔭で東北地方を中心にゆっくりではありますが、復興に向けて立ち直りつつあります。
我々人類は、どんな場合でもNever Give Upの精神を忘れずに前進していくべきだと考えています。
「ヨーロッパ経済は小さな国が発達。ルーマニア、ブルガリア、ポーランドが牽引」
●Dr.Wolfgang Sengebusch (ECTA General Secretary)
ヨーロッパの経済の状況は、現在、小さい国々が発達しています。5年の間に発展している国々もありますが、それはドイツでもなく、イタリアでもない、スイスでもない。それらの国々はルーマニア、ブルガリア、ポーランド等です。こういったところが発展著しい。
成長率ですが、それほど携速に成長しているとはいえない状況です。
では、どのような領域が貢献因子になっているのか、GDPに貢献するのはどこなのか。
貢献するのはヨーロッパではなく、発展途上国・新興国です。GDPが世界で一番貢献しているのは新興国・発展途上国であって、もはやヨーロッパではありません。
2012年、2011年は輸出が成長の中心でありました。投資でもなく、民間消費でもなく、政府での消費でもなく、成長の中心は輸出です。
現在、残念ながら失業率が急速に伸びています。今後の失業率は11%までになると予測されていて、財務的な混乱もありますので、失業率も高まり、雇用の市場は良いものではありません。機械工具業界については投資が必要であり、投資も輸出に引っ張られてそこそこできています。それは海外に向けた生産に対する投資です。民間の消費は一番大きいところで重要ですが、これが弱くなっています。今後、良くなるという見込みはかなり弱含みです。
財政的なバランスではマイナスが続いていますが、われわれの業界をみてみると工業生産が減少しています。2009年で下がり、その後、若干上がってはいるのですが、回復していません。機械工具は最も大きな重要なパートナーとなりますが、ここでも状況は同じです。ところが動きがもっと大きく、40%以上が低下しています。かなり高いところまで戻ろうとしたんですが、その後がなかなか上がりきらずにその後、また減少しています。
発注量と実際の生産量は、2008年、2009年でとても下がっています。2010年でも低い。2009年よりも少なくなっており、今でも回復しきっていない。2008年ほど戻っていないし、2007年までのレベルまでも取り戻していないのが現状です。
ヨーロッパの機械工具メーカーが加入している協会が提供している予測値によると、2013年、2014年は若干ですが、機械工具については少し上がっていくと予測しています。今年、来年は若干の上昇がみられるでしょう。カスタマーは東アジアであり、次に北米です。切削工具の輸入、海外からヨーロッパへ、ということですが、これも同じように一番大切なのは東アジア、その次に北米がきています。
切削工具業界ですが、ラフな世界の市場の予測をみると160億€となっています。約40数%がアジア、40%弱がヨーロッパ、20%がアメリカとなっています。これは単なる予測であり、正しい数字を出すのは難しいのですが、それほど大きく外れてはいないと思っています。ヨーロッパにとって切削工具の最も重要なお客様の地域は、北米、東アジア、東南アジアです。輸入は異なっています。二つ目が中東になっていて、三番目が北米となっています。
ドイツの生産量は、2008年以降、2009年に減少しましたが、徐々に取り返してきており、今では増加しています。
ヨーロッパの切削工具の生産量の変化ですが2009年は悪い年でしたが、その後回復しました。企業は努力をし、生産量を増やしました。50億ユーロ以上となっています。来年、再来年は若干の上昇はみられるものの、現状はフラットであるといえましょう。
「アメリカ全体の製造業界は健全な状況で動いているが、若干昨年より落ち込んでいる」
●USCTI David J.Povich (USCTI President)
全体の切削工具業界、アメリカ全体の総売上ですが基本的には下げ傾向です。2年前の状況で同じ質問をしたときには、ほとんどの加盟企業が切削工具業界はこれからも成長を続けるということでほぼ97%が応えていましたが、企業の業績について聞いたところ、加盟企業が伸びを感じていると応えたのは30%ほどで、次の四半期に売上げが伸びると考えている企業が3分の1になりました。19%が同等、そして約半分の加盟企業が売上げの縮小を感じています。
次に向こう1年間の売上げ予測です。
加盟企業ごとに状況を聞いたところ、明らかに下げ傾向にあります。まだ判定していませんが、売上げが上がるだろうと感じている企業は約40%、30%が同じ、残りの30%は今後12カ月間、売上げの減少を見込んでいます。
次に原料価格やその他の財務的なこと、主にカーバイトや超硬材料や、スチールのコストについてです。過去においてはサプライヤーからの原料の価格が大きく伸びておりました。100%が伸びているとおっしゃっていたのが2年前の状況ですが、現在は、コストが上がっていると応えたのは8%です。そして70%が同じ水準に留まっている、そして22%に関しましては、サプライヤーからの原料価格が下がっているという状況です。
2年前は価格が下がったと応えたところは0%でしたが、今は22%がコストが下がっていると応えています。
次にカーバイトやスチール等をサプライヤーにオーダーしてから実際に納品されるまでリードタイムをみたものですが、アメリカ2年前の状況はかなり厳しい状況で、納入期間が延びていました。ところが現在では、リードタイムが長くなったと応えているところが11%しかおらず、60%はほぼ横ばい、そして30%の加盟企業が原料納入のリードタイムが下がっているとしています。
次に売上げに占める輸出の割合です。
今年の第1四半期の輸出額と前年同期を比較すると残念ながら、影響のある成長はみられておりません。26%の企業が昨年第1四半期と比べて輸出売上げが伸びている、26%が横ばい、半数の企業が輸出は減ったと感じています。
各企業の総売上に占める輸出の割合は、企業の22%が同じで、そして48%が総売上に占める輸出の割合が減ったとしています。
雇用についてですが、アメリカの切削工具業界の雇用状況をみてみますが、これに関しては優秀な人材を雇うことが難しいということはわれわれの協会の会議でも行われていますが、現時点ではそれほど大きな問題ではないようで1/4の企業が雇用を増やしました。そして約半分が横ばい、そして、1/4の企業が従業員数を減らしたと過去6カ月月において応えています。
次に財務状況について、調達コストに関しての質問をしました。
たとえば機械の導入、そして装置の導入、または与信枠を上げることによって売り掛けを増やすことにおける調達コストは現在、世界的に調達コスト、金利は低いので各国の中央銀行は景気刺激策として非常にリード性の高いアグレッシブなスタンスをとっています。こういったことから調達コストは非常に低く、ほとんど90%の企業が1年前と調達コストは横ばいであるだろうと、14%はさらに下がると予測されています。
顧客ベースの過去6カ月間の在庫日数ですが、この3年間は安定して推移していることが分かります。41%が在庫量はほぼ横ばい、35%が在庫量は削減されています。おそらく売上げが若干落ちてきたことと関連していると思われます。
売掛日数について、顧客から納品から支払いまでのサイトをみたものですが、アメリカ全体の製造業界は健全な状況で動いております。基本的にはお客様から期日どおりのお支払いが得られています。やはり市場流動的ですので、企業の景況感はそれほど悪くないことを示しています。
次にアメリカの切削工具協会の加盟企業ですが全体で20億ドルくらいの売上げ規模になります。2007年の数値を100として指標化しており、現在、だいたい115%くらいですので、経済危機の時代を乗り越えて成長軌道には乗っているとは思いますが、現時点では2月3月、昨年度の2月3月と比較した場合、若干減速している傾向があります。7%ほど昨年同期と比べると減速がみられますので2011年と比べると業績は悪くありませんが、現時点では、ドルベースのボリュームでは若干昨年よりは落ちています。
「韓国の国内切削工具市場は停滞しているものの、生産力と開発ノウハウで輸出主導の成長を実現」
●韓国代表 Hokeun Song (KOTIC Director)
韓国経済は1998年に経済危機、2009年には世界金融危機などに直面してきながらもそこを乗り越え急速な成長を遂げてきました。ところが最近では成長エンジンが失速しています。四半期成長率をみると2012年の第四四半期には1.5%まで成長率が落ち込み、最近ではフラットになっており、韓国では今後の見通しを不安に思っています。
韓国製造業は輸出によって成長が牽引されてきました。この傾向は2009年の世界金融危機以降に続いています。輸出の成長は毎年10%を超えてきましたが、2012年はマイナス成長に転じました。韓国経済の二つの軸、輸出産業と製造業ですが劇的にその成長エネルギーが低下しています。輸出成長は2009年に大きく落ち込みつつ、その後急速に回復をしましたが、再び2012年にはマイナスに転じています。2010年からは劇的な低下にあるといえます。さらに製造成長率ですが2009年、こちらも落ち込みがありました。その後、同じように急速な回復がみられましたが、劇的に再び低下をしています。したがって経済の見通しとしてはあまり、良くはないというのが現状です。
韓国の切削工具産業協会が提供している小売市場は全工具生産の75%を占めています。このデータの中にはダイヤモンド工具、ハンド工具、パワー工具が含まれています。そして全工具市場の57%を占めています。また、国内消費よりも輸出が大きいというのが市場の特長です。
切削工具の生産は毎年、8%の成長を遂げてきました。そして強い輸出市場によってこの成長が率いられてきましたが、国内市場としては停滞しています。
切削工具の韓国の市場は輸出が主導しており、輸入もまた多少増加傾向にありますが、国内市場は停滞しています。輸出市場は韓国の切削工具生産の75%を占めています。最も早く成長している輸出市場は中国であり、韓国初の切削工具輸出の最大仕向地も中国です。2007年と2012年を比較していますが、この5年間で韓国の切削工具の輸出は68%増加しました。中国は2007年においては13.9%でしたが、5年後には22.5%に伸びています。68%に輸出が増えていますし、中国も非常に大きくシェアを伸ばしています。韓国の切削工具産業にとってのお客様としては中国が非常に強くなっています。
そして、切削工具の輸入は2007年から2012年までの間、毎年7%成長をしてきました。この間、国内市場は停滞していました。日本製の切削工具は外国製品の中では最大のシェアを獲得しています。日本、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、といった先進国のシェアは60%を超えていますが、中国製品のシェアも徐々に増加しています。こちらもまた、輸入を2007年と2012年で比較してみますと、2007年では4.52億ドルの輸入額でしたが、これが43%5年後伸びまして、6.47億ドルまで拡大しました。
輸入されている切削工具は1/3が日本製です。
主な取引産業をみますと、自動車産業では38.6%、カッタは19.2%、そして機械が11.8%、これに続いて、製鉄、電気、半導体、船舶の建設などが続いています。
次に韓国の自動車、そして機械工具産業です。
2012年において、韓国の自動車生産は450万台でした。これは2011年に比較すると、2%の減少です。今後の見通しとして2013年は0.4%増加するとみられています。機械工具生産ですが、2012年、韓国での国内生産は58億ドルでした。しかし、この成長率ですが2011年の19%から1%に低下しています。2013年ですが、わずかに伸びて5%増が見込まれています。
右側の表の機械工具生産ですが、機械工具の生産も韓国は世界で第5位の位置にあります。2009年では下がっていますが、2008年よりもかなり高い水準まで成長しました。2009年に落ち込み、大きく回復し2012年には減少しました。
韓国産業のリスクを説明します。まず市場に関するリスクです。
一つ目はグローバル経済の長く繰り返しおこる景気後退が挙げられます。二つ目は困難な経済周期の予測です。最近、世界中の様々な切削工具の関係者と話をしていますが、一番大きな問題は長期に亘って市場が大きく回復をしておらず、少しずつ少しずつ後退しているように思えます。回復のシグナルは出てきていても、回復の割合としましては低い水準です。
競争に関するリスクですが、まず、アベノミクスによる円安政策は韓国経済にとって非常に多くの問題を提起します。次に高度な技術や強い投資の中国の追い上げです。韓国の技術や投資に日々中国が追いついてきています。ここもリスクです。そして新しいリスク要素としましては技術のギャップが狭まりハードの差別化による成長に限界が生じています。競合の間での差はどんどん小さくなってきています。その3つを合わせますと、不確実性とリスクの増加といえると思います。結論としましては、韓国産業の先行投資、先行市場参入といった成長エンジンの鈍化がみられるということだと思います。韓国は常に早く、先行投資をしてきました。これも強みのひとつでありました。そして新興国にはいち早く参入し、ポジショニングをしてきました。これが韓国産業の強みであったのですが、こういった傾向が薄れてきています。
まとめと結論ですが、韓国の国内製造産業の潜在力の低下がみられます。
設備投資は2012年でマイナス1.8%でした。たとえば2012年の第一四半期は8.6%でしたが、四半期ごとに追っていきますと、マイナスの成長率となっています。どんどん設備投資が少なくなっています。韓国企業はキャッシュをたくさん保有しているのですが、どのように投資をしていいかというのが判断できずにいます。将来の見通しがたたないので、その判断ができずにいます。
中国、インド、東南アジアといった成長市場でよいポジションを獲得しましたが、韓国の国の位置は中国、東南アジア、インドもさほど遠くないので、とてもよい位置にあるといえます。IMFによる今後の見通し、成長の見通しですが中国、8.0%、インド5.7%、ASEAN5カ国が5.9%、これは韓国産業にとって良い要素となっております。
韓国切削工具メーカーは生産技能の蓄積があります。世界中の大企業を支える周辺産業により、高精度、高速機械加工、超硬材や切削困難な材料に関する技術力や開発力が向上しています。韓国ではサムスンやヒュンダイといった大企業があり、そういったところによって、力が向上しています。これをまとめますと、韓国の国内切削工具市場は停滞しているものの、生産力と開発ノウハウで輸出主導の成長を実現しています。
「成長著しいインドはジョイントベンチャーが日本とつくられており、2万台のバイクが1日に製造されている」
●インド代表 Rakesh Aghi (Founder member of ICTMA)
他国の地域は経済が停滞しているとのことですが、インドは大きくなっています。9%のGDPの成長があり、マイナス成長ではありません。25才未満の人口が人口全体の半分が25才未満であり、自動車、バイク、食品、いろいろな需要がそこにあります。もちろん、切削工具もそこに入ります。また、2020年までに920万人が就労人口になるだろうと予測されています。また、教育のシステムがしっかりできていて、独立した司法、独立した報道機関があります。
自動車業界は非常に急速に成長しています。2015年までに3000億ドルまでの数字に輸出が到達すると考えられています。20%が自動車コンポーネント、自動車に関して、乗用車に関しては6番目のマーケットであって、メーカーとしては5番目です。過去20年を振り返ってみますと、2005年、2006年、だいたい1000万台が製造されていました。2010年は4000万台の製造がありました。
インドでもとても大事なことはジョイントベンチャーが日本とつくられていることです。例としてはホンダなどが挙げられますが、2万台のバイクが1日に製造されています。今年も国内向けにモーターサイクルだけで1350万台が製造されています。また、自動車コンポーネント、部品においてもたくさん製造されており、400億ドルという数字に出ています。
これらの全てが切削工具につながってきます。
2011年~2012年、乗用車は310万台、予測は2020年が500万台、2021年が970万台となっています。自動車、トラクターやトラック、製造にかかわる自動車、車両は二輪車、三輪車が一番大きいところですが、2020年には3000万台が国内主要向けに造られるとされています。インドが強いのは自動車部品の領域です。
中国に比べインフラにおいてインドは20年先を走っています。現在、これから5年のあいだに、1兆USドルのインフラに対する投資が行われることになります。
現在、インド中、どこにいっても、どこかが掘り返されており、ハイウェイが造られている、あるいは金が掘られている、石油が掘られています。新しいハイウェイ、港、橋、空港、が造られています。これらは全て民間投資です。もはや政府の投資ではありません。最も大きな投資はインフラ投資であるといえます。
また、皆様ご存じだとは思いますが、近隣諸国は危険いう難しい状況にあります。
パキスタンがあり、中国があり、たくさんのいろいろな対立が歴史上ありました。資源を守るという意味でも軍備というのは大切になってきます。また、軍備に関するものの輸入は、インドが一番、次いでロシア、アメリカとなっています。航空機宇宙、特に軍備に対しては2009年~2010年で278億、3月4月でありますが、2012年~2013年で523億、2017年においては1300億ドルの投資になるだろうと予測されています。
製造業者はこれらの製品をインドでつくることになります。このお金の50%が全てインド内に落とされる。2カ月前インドは、フランスのファイタージェットの契約を1000億ドルで結びました。
50億ドルが10機ということですので、これについてもいろいろな機械が必要、そして機械工具が必要になります。したがって、航空宇宙、防衛の産業は大きく成長しています。
航空宇宙、ミサイルの発射、あるいは宇宙船の打ち上げなど全ては国内製で行っています。すなわちそこで機械をつくり、切削工具も使い、様々な超合金のことも必要です、これらについて切削工具の業界では大きなチャンスがあるということです。
2018年には300億USドルの民間の常用飛行機の投資が行われることになっています。非常に大きな成長マーケットです。それがますます成長し、20~25%年率で成長しています。軍備においても商用についてもどんどんと航空機が造られ、多くのお金がインド国内に落とされていく。
日本とインドの関係でありますが、800以上の日本の企業がインドで活動しています。
三菱、スズキ、ホンダ、トヨタ、などなどが存在します。一番大きいのがスズキですが、最初にインドに来た企業です。1982年にドイツ政府とジョイベン(注:ジョイントベンチャーの略・JV)を組んで自動車をつくりました。現在、70%のマーケットシェアを享受しています。日本はどんどん投資を増やしていて、DMICのプロジェクトですが800マイルあるハイウェイを構築することで、900億ドルの投資をするとしています。日本からの投資は今後5年に亘り45億で、これに対応するのはインドの国内の民間企業です。
切削工具の業界は小さい業界ですが成長をしています。
1960年代以降、活動が活発に進んでいおり、約60%がカーバイトインサート、ソリッドツールが約42%です。
自動車は大きな消費者になっています。2番目がゼネラルエンジニアリング、一般的なエンジニアリング、それからエネルギー、そして航空宇宙となっています。
ICTMAの組織は、昨年構築されました。サンドビック、ケナメタル、IMCグループ、三菱、国内においてはCTC、インストリングス、コブラなどがメンバーです。18のメンバー組織があって、レベニューの70%を占めています。理事会があって四半期ごとに会議を行っています。アイデアとしては、インドの切削工具の分野というものを公平な平等なマーケットにしていって、一緒に切磋琢磨していこうというものです。法律に準拠しています。ヨーロッパ、アメリカの基準というものを考慮しています。
インド政府とも協力しており、政府と一緒に成長していこうとしています。さらに非常に大きく成長して活気のある国であるということ、みんなが非常に楽観的主義で前向きである。どの分野をみても成長している。英語を喋る人が多い、教育レベルが高い、世界のことを良く知っている。透明なメディア、報道機関、独立をした法律、インドというのは最も大きな成長のハブになるという風に思います。2020年においては1130億ドルの自動車コンポーネント業界ができるでしょう。
「フォーチュン500」をみても450社はインドにオフィスを持っています。また知財の権利にしてもその保護はしっかりとしています。皆さんがインドにいらしても、どこの誰がマネをしてそれをつくるという問題は回避されます。パートナーシップの場でもありOEMの場でもある会社がやってきて、ローカルマーケットで製造し、そして国内向けで輸出することもできる才能のある人達がたくさんいる。
切削工具業界は防衛にも航空機産業にも自動車産業にも大きなチャンスがあります。