5軸加工機の優位性とは~使いやすさを徹底した5軸マシンの開発に成功したマキノ『D800Z』の魅力~

少し前まで国内における5軸加工機といえば、①5軸用CAD/CAMが未熟、②加工能力(削れない、速度が遅い)に難がある、③精度に難がある、④操作性に難がある、⑤スペース効率が悪い――といったイメージがあった。
汎用機の時代からテーブルが傾斜・回転する機械が珍しくなく、5軸加工を受け入れやすい土壌があった欧州、航空機部品など5軸でなければ加工できないものがあり、早くから5軸に取り組んでいる北米などに比べると、日本は5軸加工機の普及が遅れてしまったといえるが、実は2009年以降、国内市場が停滞する中で5軸加工機の需要が増加している。

その理由として、5軸加工機の使用を前提とした工作物が増えていることや、突き出しの長い工具を用いて無理して3軸機で加工しているものを5軸加工機に置き換え短い工具で精度良く、かつ効率的な加工へのニーズが高まっていることが挙げられている。
使いやすさに徹底した5軸加工機の開発に成功したマキノの『D800Z』の魅力を探る。


5軸加工機の優位性とマキノDシリーズ開発コンセプト

加工物を傾けることでボールエンドミルの先端での加工を回避
加工物を傾けることでボールエンドミルの先端での加工を回避
5軸加工機のメリットといえば、まず形状精度の改善と加工時間の短縮が挙げられる。加工物を傾けることで、干渉を避け、工具突き出し長さを短く出来るなどの理由から加工の諸条件が向上する理由からである。突き出し長さが半分になると、①刃物の靱性は4倍、刃物の曲がりは1/8倍、切り屑排出量は9倍になると考えられており、また、加工物を傾けることで、ボールエンドミルの先端での加工を回避することで加工面品位の向上が可能になる。さらに、一段取りで他面の連続加工ができることにより、リードタイムの短縮が実現し、コストダウンという大きな経済効果が生まれる。

さて、牧野フライス製作所の5軸加工機は2012年国内受注が前年比約2.5倍の伸びをみせているが、このほど同社は使いやすさに徹底した5軸加工機の開発に成功している。新しく市場投入されたのは立形マシニングセンタ『D800Z』だ。

この『D800Z』の開発は、「金型加工・試作加工・高精度部品加工市場においてφ1,000mm、1200kgの工作物を5軸で加工し、工程集約と競争力の強化を図りたいユーザーへ供給する商品」を狙いとしている。ユーザーの評価も高い同社のDシリーズの開発コンセプトは、①テーブル、主軸の接近性に優れ、使いやすい機械、②高精度な5軸加工が可能、③加工時間を短縮できる高い機械剛性と加工面品位に配慮した高速主軸を装備――であるが、このほど開発された『D800Z』は従来以上に使いやすさを徹底した造りとなっている。

まず、大物工作物(φ1000mm、1200kg)でも段取り作業が簡単である。テーブル周りは3方向がオープンであり、干渉の少ない構造になっていて、作業者は加工室内に入り、工作物の際まで接近できる。加工室の正面、側面扉が天井を含めて全開でき、まどろっこしい加工物の搬入出もラクになる。また、主軸への接近性にも優れており、操作盤側から主軸への接近性、視認性も抜群で、段取り作業も主軸・テーブル干渉防止機能(標準付属)が有効で、作業者は安心して作業が進められる。また、床面からテーブル上面までの距離が1200mmに抑えられているにもかかわらず、高い剛性を確保していることや、大物工作物に対応(積載質量1200kg)していることも優位性のひとつであろう。

重心変化の少ない傾斜軸構造で荒~仕上げ加工まで連続した高精度加工を実現!

テ―ブル構造にも注目したい。φ800mmのテーブルを傾斜面が下から支え、工作物(荷重)の重心位置が必ず系車軸の旋回中心付近となるようできており、剛性の高い軸受と鋳物構造はダイレクトドライブモータが振動の少ない滑らかで俊敏な回転を実現している。工作物を動かし回しても重心変化が少ないので、①回転軸位置決め・繰り返し精度:±0.8sec以下、②5軸割出加工・形状精度加工:10µm、③回転精度:2µm以下(加工物質量が変化しても同じ)と、加工による工作物の質量変化に影響されず、高精度な加工ができるわけなのだ。

一段取りで他面の連続加工ができ、リードタイムを短縮
一段取りで他面の連続加工ができ、リードタイムを短縮
さて、気になる切削能力だが、荒加工から仕上げ加工まで、連続した高精度加工が可能であり、40番主軸、50番主軸を準備してくれる。3軸加工機と同等の重切削能力も魅力である。しかもマシン自体、幅3200×奥行4410×高さ3600mmというスペース効率に優れていることも『D800Z』の大きな特長だろう。“欲しかった工作機械が大きくて工場に入れられなかった”という苦い思い出のある経営者には朗報である。

他にも標準で主軸・テーブル干渉防止機能があり、機械の構造が干渉を起こすことを防いでくれるうえ(手動モードでも有効)、簡単に回転軸の中心位置を測定/設定するので、温度変化や環境変化での誤差の発生を防いでくれる。なお、93°より大きな傾斜角を必要とする加工など一部の部品加工はできないが、加工できない形状と引き替えに、接近性やスペース効率など多くのメリットを有する機械である。販売価格も優位性を誇りながらも69,500,000円(消費税別)と手頃であり、まさに精度のこだわりを持つユーザーの満足度を高めてくれるマシンといえよう。

■『D800Z』展示予定■

●2013年6月24日~28日、厚木事業所
1社毎、個別に対応する発表会
①実加工による切削能力の確認、②機械性能の説明と質疑応答、③組立現場の見学

●「EMO2013」 2013年9月16日~21日、ドイツ・ハノーバー
『D800Z』 加工サンプル 自動車フロントスポイラーの金型

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