誠実は信用の基! 技術力で確かな素材と工具をつくるマコトロイ工業

工具は摩耗したら終わり―――。
そんな概念を覆す切削工具を生み出したメーカーがある―――。

マコトロイ工業(本社=東大阪市新喜多2-4-38)の社名の由来は、「誠実は信用の基」。戦後の混乱期にあった昭和25年の創業以来、長年に亘り超硬素材生産から工具完成まで広範囲に対応する組織体制のもと、工業の発展を支えてきた。

今年3月、同社は、「R ドリル」(セルフリグラインド ドリル)が、日本発明振興協会と日刊工業新聞社共催の「第38回発明大賞 発明功労賞」に選ばれている。発明大賞は資本金10億円以下の中堅、中小企業または研究者・個人発明家の中で、発明考案・研究を通して科学技術の振興、産業の発展に寄与した企業や人に贈られる賞で、同社が受賞した発明功労賞は優れた発明考案で業績をあげた企業および個人またはグループに贈られるものだ。

同社の第一線で活躍している橋本英二関東営業所所長にお話を伺った。

CFRP加工に挑んだ『コーティングRドリル』

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)といえば、金属材に比べ軽量で強度が高い素材であるため、最先端の航空機にも採用されている材料だが、現在、軽量化によるCo2削減効果などを見込んで、自動車やエネルギー分野など様々な産業に広がりをみせている。

その一方で、CFRPは難削材であり、効率的な加工をするのが困難だとされている。
CFRPのやっかいなところは、材料の特性から激しく工具が摩耗し、その結果、デラミネーション(表面損傷)が起きて加工品質が低下してしまうことだ。

橋本氏は、「CFRPを能率良く加工するための高速切削は切削熱を発生させ、CFRPを構成している樹脂が溶け出してしまう。この問題を回避するためには、通常、大量の工具と加工時間が必要になります。産業界では魅力あるCFRPですが、加工現場では強烈な難削性に加えてコストがかかるという現場泣かせの材料だといえます」とCFRPのやっかいな部分を説明してくれた。

困難を極めるCFRPやGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の穴開けに革新的な性能をもたらす同社のドリルが注目されたのは昨年のことだった。その名も『コーティングRドリル』。この製品は、特殊な形状とダイヤモンドコーティングの連携によってドリルの摩耗進行箇所を調整し、鋭い切れ刃を維持し続ける新技術“セルフリグラインド”を採用した工具だ。

驚愕! こんなに穴をあけてもデラミネーション知らず!
驚愕! こんなに穴をあけてもデラミネーション知らず!
「“セルフグラインド”とは、ワークを切削しながら自助作用で切刃が形成される現象を指します。製品名のRドリルからも分かるとおり、刃先に丸みを持たせて切削負荷を分散させているのも大きな特長です。従来比5倍の切削速度で6倍以上の加工長さという性能を実現しましたので、リードタイムの大幅な短縮と工具コストの削減を図ることができるんですよ」(橋本氏)

ここでは航空機用のCFRPに4500発の穴を空けている写真を掲載しているが、穴はデラミネーションの発生もなく、美しい穴が分かるだろう。同社のRドリルはすでに航空機産業に採用されている。
「自動車用のCFRPだともっと穴があくでしょうね」と橋本氏はRドリルに自信たっぷり。

工具摩耗が進行しつつも切れ味を保つこのRドリルは、需要が拡大しているCFRPの安定加工を可能にした工具として現在、航空宇宙産業から熱い視線を注がれており、海外からも注文を受けた。現在テスト加工も非常にうまくいっている。

もちろん責任者である橋本氏の営業力が功を奏したのは言うまでもない。

マコトロイの強みはフットワークの軽さ! 常に「お客様の目線で」を意識

鍛造用超硬合金素材 使用目的に近い形状での納品を可能にしている。
鍛造用超硬合金素材 使用目的に近い形状での納品を可能にしている。
さて、製造現場ドットコムでお馴染みの“超硬合金”といえば、タングステンカーバイドとコバルトの粉末を圧縮・加工して加熱焼結する“粉末冶金”という方法で造られるダイヤモンドに次ぐ高い硬度を持った金属で、生活家電や車、航空宇宙分野などありとあらゆる産業で多彩な用途に活用されているが、マコトロイ工業の超硬合金製造部門では、独自の技術で原料粉末を配合するのは当然のこと、ほんのわずかな異物混入もないよう、工場内の清掃を徹底的に行うなど良質な製品づくりに注力している。

「弊社は、超硬合金素材も扱っており、そこに切削工具を合体させた製造販売を展開しています。材料の保証もできるうえ、被削材に合わせた工具の製造販売をする貴重なメーカーだといえます。長く培ってきた技術と徹底した衛生管理が生み出す品質の根底にあるのは“お客様の信頼に応えること”です」(橋本氏)

ますます複雑化する鍛造についても、最近、以前は問題にならなかったようなトラブルも発生すると聞く。

「このような事態に備え、小ロットでの注文など、お客様の状況に合わせた対応で解決を目指しています。われわれはお客様の加工コストをいかに抑えて貢献するかを考え、使用目的に近い形状での納品も可能にしています。素材からつくるメーカーだからこそできる製品づくりとサービス、そして打てば響くようなフットワークの軽さが弊社の強みでもあります」(橋本氏)

「今後もどんどん航空宇宙分野は発展し、広がりを見せることでしょう。この分野で使われる技術はエネルギー産業などに応用される技術でもありますから、重要な産業です」と話す橋本氏は、持ち前のバイタリティでどんどん国内外問わず航空宇宙分野に営業をかけていった。先述のとおり、切削工具はすでに海外を含む大手3社から注文を受けている。

よい技術も売れなければ死んでしまう。たとえ技術で勝ってもビジネスの世界で勝てるとは限らない。熾烈な競争分野に身を置いている橋本氏は、「お客様に貢献してナンボの世界ですから、お客様から加工のご相談があった場合、できる限り素早く解決したいと考えています。加工に困った場合、遠慮なくご相談ください」とぬかりのない営業マンらしい一面を見せてくれた。

最後に営業マンとしての秘訣を聞いてみたところ、「営業マンが営業をかける場合、窓口になられた担当者様がきちんと自分の上司に説明ができるネタなのかどうか、私はいつもそれを念頭に入れています」とのこと。
思わず、「そうか!」と膝を打ってしまう返答だった。

われわれの暮らしの発展の裏には様々な企業や人が活躍している。
技術を高めるための努力と目標にまっすぐ向かうマコトロイ工業の姿勢に、改めて時代を超えて顧客と共に歩んでいくという強い思いを知ることができた。