セコ・ツールズが医療用インプラント OEM、セラミックに狙いを定める!

膝頭のレントゲン写真
膝頭のレントゲン写真
主要な医療用インプラント OEM はほぼすべて、セラミック材料から一般的な各種インプラントを製造しているが、課題があった。金属やポリマに比べて、はるかに高い強度、耐摩耗性、滑らかさ、生体適合性をもたらす一方で、被削性に欠けるという点である。

セコ・ツールズのDon Graham 教育/技術サービス部門マネージャは、次のとおり述べている。

セラミックインプラント
セラミックというと、ほとんどの人は、固い床に落とすとすぐに砕ける食器やコーヒーカップを思い浮かべます。工業用セラミックや医療用セラミックはこれとは違います。はるかに頑丈で高密度であるため、砕けにくく、残念なことに従来の方法では容易に切削できません。しかしこの問題を、レーザー光線が解決してくれる可能性があります。

現在製造されているセラミックインプラントは、単純な形のごく限られたものだけです。これは、製造に使用されているダイヤモンド砥石の付いた研削盤では、コンタリングやポケットなど、複雑な部分の形状を処理するのに限界があるためです。また、研削処理には時間がかかり、製造コストが高くなるため、最終的にインプラントは非常に高価になります。そのため、より低価格な金属インプラントに比べ、セラミックインプラントを選ぶ患者の数は限られています。

今日製造されているインプラントの大部分は、チタン、コバルトクロム、またはステンレス鋼製です。最も広く使用されているインプラントは人工膝関節と人工股関節ですが、大腿骨、関節、脛骨用コンポーネントも普及しています。

金属インプラントの平均寿命は使用状況によって異なります。インプラント移植者が活動的であればあるほど、インプラントの摩耗も早くなります。場合によっては 10 年ほどしかもたないこともありますし、あま
り活動的でない人の場合は 25 年もつ可能性もあります。つまり、金属インプラントの移植者が若い場合、最初のインプラントは生涯のうちにおそらく 1 度か 2 度交換しなければならないということです。また、人工股関節置換や人工股関節置換のような整形外科手術のリハビリにはかなりの苦痛が伴い、大がかりなものになることも考慮する必要があります。

セラミックインプラントについて考えてみましょう。平均の寿命は 75 年ですから、基本的には一生涯もちます。インプラント移植者は、手術を1度だけ受け、リハビリの期間も1度ですみます。また、金属インプラントが摩耗したときのように、インプラントが摩耗して体内に異物が混入するようなこともありません。

しかし、セラミックインプラントのメリットは、材料を安く加工できるようになり、インプラントを手頃な値段で簡単に利用できるようになって初めて実現されます。そのため、製造工場、大学、その他の研究施設では、従来の工作機械を使ってセラミックを加工できるようにさまざまな手法が研究され、試されていま
す。これまでのところ、レーザーを使ったある技法がかなり有望な結果を出しています。

セラミック切削加工の重要な要素
この費用効率の高いセラミック切削加工で重要な要素は、マルチタスクマシンツールに設置された特別設計された切削チップと画期的なレーザーの使用です。切削チップの先に正確にレーザー光線を当て、被削材を柔らかくすることで、切削を容易にします。

費用効率の高いセラミック切削加工を促進しているカッタ技術の開発には、多結晶ダイヤモンド(PCD)と立方晶窒化(CBN)があります。CBN はさまざまなセラミック加工で高い効果を上げています。さらに、セラミックに対する超硬工具の試験も行われています。

これまでのところ、レーザーを利用した切削加工によって、窒化ケイ素セラミック、ジルコニウムセラミック、アルミナセラミックなどのセラミック材料の旋削加工、フライス加工、ねじ切り加工が可能になっています。しかし、最も重要なことは、これまで不可能だった部品の製造を可能にしながら、切削工具の寿命を延ばし、これらの材料の処理時間を短縮できることです。

レーザーによる切削加工技術の発展にかかわっている組織は、引き続きセラミック切削処理に関する全般的理解を深め、医療産業だけでなく、自動車や航空機のエンジンコンポーネントやベアリングなどの用途でもセラミックの利用を大きく拡大させていくと思われます。しかし、現在はさらに試験を重ね、切削工具の刃先処理や、切削工具と特定のセラミック材料間の化学的相互作用の理解を深める必要があります。今後の試験では、セラミック材料をより速く加熱するためのレーザーの効率的な使用法や、加熱すべき被削材部分に関する精度の向上なども対象となります。

レーザーによる方法が現在のペースで進展し続ければ、セラミックの切削加工は、20 年前に高硬度旋削が研削に置き換わったのと同様に、ダイヤモンド砥石研削に置き換わるでしょう。この方法は初期段階にあるとはいえ、医療用インプラントや工業用セラミックのコンポーネント製造コスト削減を目指す中で、重要なマイルストンはすでに達成されているのです。

(文:セコ・ツールズ Don Graham 教育/技術サービス部門マネージャ)

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