私たちの生活を支える多くの製品に貢献! ~最新の生産システムで課題解決型商品を生み出すアマダマシンツール~
金属加工機械の総合メーカーであるアマダグループの切削機械並びに工作機械事業を担当しているアマダマシンツール(社長=末岡愼弘氏、本社:神奈川県伊勢原市石田200)。
切削機械と工作機械の拠点である土岐事業所は、2011年に愛知県小牧市と福井県坂井市に分かれていた拠点を集約して新設した事業所で、古くから美濃焼の故郷として知られる岐阜県東濃地域に造成された工業団地「土岐アクアシルヴァ」内にある。約4万7千坪の広大な区画に、工場棟、テクニカルセンター、モジュール棟などを構え、切削・工作機械事業の開発、製造、販売、サービスが一体となった拠点として重要な役割を担っている。
末岡社長は、「課題解決型商品の開発をするには、お客様の声を商品開発につなげることが重要です。われわれは常にお客様とともに発展するという姿勢を貫いています」と話す。
本年4月にアマダマシンツール社長に就任した末岡愼弘氏のものづくりへのこだわりや土岐事業所の特長、同社が満を持して生み出した最新マシンについて取材した。
土岐事業所は先進技術と自然の融合で“日本品質”を見せつける!
2011年に稼働した土岐事業所の狙いのひとつは体制強化だ。アマダグループの板金・プレス事業に並ぶ第2の事業の柱として切削・工作機械事業が挙げられた。最新の設備と徹底した温度管理や振動対策による高品質で高精度なものづくりで、生産の高効率化によるコストパフォーマンスの高い商品を供給している。
ものづくりの拠点を日本国内に設けた理由を末岡社長は、「土岐市は日本のほぼ中央にあり、自動車道のアクセスが便利。岩盤も頑丈で、自然災害への防災性も高い地域です。土岐市は陶器生産量が日本一。1300年以上も陶器づくりが受け継がれてきたものづくりの盛んな街でもあり、切削・工作機械事業の中心拠点としても最適です」と土岐の優位性を話してくれた。
美濃の自然とこの地域とともに発展していく――という気持ちは、飾られている陶壁にも表れている。事業所の入口にある「無限」をテーマにした美しい陶壁(加藤康景氏作)と、美濃の翠美しい丘陵から登る力強い太陽をモチーフにした「千年翠」。「千年翠」はなんと人間国宝である加藤孝造氏が制作したものだ。
「日本の約7割の陶器が多治見近辺で生産されていますが、ちょうどここの土を掘っているときに“良い土が出た”とのことで、トラック2台分にこの土を運んで制作して頂いたんです。この陶壁を依頼する直前に、加藤孝造先生は人間国宝になられました」(末岡社長)土岐事業所は他にも細かい箇所に地域の自然の恵みを活かしたデザインが施されており、環境への影響を考慮したつくりになっている。事業所全体は中部地区初のオール電化とし、太陽光パネルによる発電(最大300kW)や、雨水を資源として利用したり、地熱を空調に利用したり、自然通風の活用を取り入れたり、特にテクニカルセンターはゼロ・カーボンを実現するなど、最新の技術を取り入れていた。
日本品質のこだわりを見せつける! これが最先端の生産現場だ!
アマダマシンツールの開発のキモは、日々、寄せられる様々な課題や要望を解決するために、マシン、周辺機器、ソフトウェア、加工技術など蓄積された情報や技術をもとに製品をつくりあげていることだ。高精度・高効率化した最新設備の導入と、徹底した温度管理や振動対策を行っている。
生産現場は部品や治工具などがすべて準備されたブース内で、一連の組立作業を行う「屋台ブース生産方式」を採用しているが、特に注目すべき点はアマダ独自の生産管理システム「AM-HIT’s」であろう。これはICタグにより自動的に作業を記録する装置“vPost”が工程の“見える化”を実現し、受注から顧客の元へ届くまでの進捗状況がリアルタイムで管理、共有される画期的なシステムである。“必要なものを、必要なときに、必要な量だけ”をグッドタイミングで各屋台ブースに供給することで効率的で無駄のない生産を行っていた。
「素材調達、加工、組立、検査までを社内で一貫生産することにより、品質や納期を徹底管理することができるため、われわれのこだわりである日本品質を追求したものづくりが可能になっています」(末岡社長)
さて、今回、マシンを製造するにあたり、工作機械の心臓部分であるスピンドルについてアマダマシンツールのこだわりを説明したい。
同社ではスピンドルの一貫生産から加工、組立、試運転を恒温環境(室温23℃±1℃、耐加重6t/㎡)で行い、徹底した品質のつくりこみと安定化を実現している。真円度、円筒度、同軸度、テーパーのすべてが1µm以下の精度が求められる加工を、超高精度の円筒研削盤で自動化を図っていた。このマシンは極限まで熱変位対策とネジ研削を複合した特殊仕様のマシンだ。ちなみにスピンドルモジュールの生産能力は144台/月。
最新設備はこれだけじゃない。
これまで蓄えた加工ノウハウを反映させたマシンの数々は、設備メーカーとのコラボレーションで高精度、高効率加工を実現している。
ベッド加工マシニング工程をみると、1テーブル2種部品加工とセラミックでの加工を実現することにより35~55%の合理化(加工時間短縮)したという。マシンには「〇〇〇〇〇/AS」(〇は秘密です。ごめんなさい!)との文字が刻まれていたが、ASはご想像のとおり、“アマダスペシャル”の略だった。
また、工作機械の仕上げには熟練工による“キサゲ”が必要だったが、これを可能な限りなくすため、クラウニング加工ができる世界最高の超精密門型ベッド加工研削盤を導入している。これも1テーブル2種部品の加工が可能だ。
このように、加工時間の削減と同時に部品精度を高めて工程短縮を図ったことで、導入設備の大幅な削減にも成功し、高能率かつクオリティの高いマシンの数々は土岐から世界に広がりを見せている。
技術者渾身の最新マシンMultiProcess Center『MX-150』は研削・旋盤の良いとこ取り! 独自の構造で多種加工が可能!
さて、このほどアマダマシンツールが新製品、マルチプロセスセンター『MX-150』を発表した。このマシンは高精度、1段取り複合工程、多種可能な複合加工機。 加工方法はミーリング加工に加え本格的な研削加工が可能。1段取り複数工程加工で滞留時間や段取り時間が削減されるうえ、様々な形状への対応幅が拡大するので高い経済効果を発揮する。段取りズレの品質低下も抑制するので、面品位も美しい。
構造の特長は、X・Y・A(ワーク旋回)の3軸とZ・B(工具主軸旋回)の2軸を完全分離することにより旋回2軸の割出誤差が累積しない構造となっていることで、これも旋盤メーカーの加工の経験から生まれた独自構造だとしている。
柳沢将人 工作機械開発部門 複合加工機開発PJ プロジェクトリーダーは、この機械のポイントについて、①高能率加工化、②精密高割り出し独立型5軸加工、③速度コントロール、④ターンミーリング化、の4点を挙げた。
「この機械の優位性は、低速回転領域での高効率加工と高速回転での微細・仕上げ加工を両立できることです。旋回軸を独立させた構造なので、幾何誤差、位置決め誤差が累積しません。空間誤差を補正することにより工具旋回軸の高精度化が実現し、工具の接近性もよい構造となっています。トラニオンの場合は2軸の回転誤差が合成されるため、割り出し時の回転誤差が大きいというデメリットがありましたが、そのような心配もありません。また、速度コントロールにも注目してほしいのですが、NCデータ毎に加減速設定(速度、精度、面品位)が可能な機能があります。急激な速度変化を抑制することにより、実速度が向上し、工具とワークに優しくなります。また、耐熱材料など難削材の高効率加工を実現するため、ターンミーリング化を取り入れました。切粉断片化により自動加工の安全性も向上しました」(柳沢プロジェクトリーダー) 機械の設計を担当した松村光二 複合加工機開発PJグループリーダーは、「開発当初は苦労しましたが、研削盤、旋盤、主軸、それぞれを極めた人が開発に携り、それぞれの特色を融合した機械です。ぜひ、この機械の良さを広く知って貰いたいと思います」とコメント。開発者がこのマシンにかけた意気込みがビシビシ伝わってきた。
ところで、Amadaといえば、鮮やかな赤と美しいデザインを思い浮かべる方が多いと思うが、このマシンのデザインは全て昔も今もTOP決裁とのこと。末岡社長は、「Amadaマシンの色には意味があるんですよ。情熱(passion)の赤、魂(spirit)の黒、革新(innovation)のシルバーなんです。ものをつくるということは、小さい感動の積み重ね。今後ともお客様とともに発展していきたい」としめくくった。
同社では、10月23日(水)~26日(土)までポートメッセなごやで開催される「MECT2013」に出展するが、今回、この『MX-150』もお披露目されるのでお時間のある方はぜひ見学して欲しい。