平成25年度 機械工業 生産額(改訂)見通し調査がまとまる
日本機械工業連合会がこのほど「平成25年度機械工業生産額(改訂)見通し調査」をまとめた。
1.概要
平成24年度の生産動向>
日本の機械工業は、当初、東日本大震災からの復興需要や政策等により緩やかな回復基調にあり、本格的な回復への兆しとなるかに見えた。しかしながら、欧州では金融不安に端を発した停滞が続き、米国は底堅い動きを続けたものの、中国の成長鈍化による海外需要の減少により輸出に牽引される品目には厳しい影響を与えた。また、電力料金の値上げや年度途中まで続いた厳しい円高は企業活動に悪影響を及ぼした。
こうした中で平成24年度の機械工業生産額は前年度比2.6%減の65兆9103億円となった。
機械工業の主な動向は次のとおりである。
(1)一般機械
一般機械の生産額は、前年度比(以下同様)5.5%減お12兆7326億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「ボイラー・原動機」はガソリン機関やディーゼル機関等が生産拠点の海外シフトが継続し、生産は減少したものの、ボイラー・タービンが大幅に増加したことから、全体で5.0%増。「土木・建設機械」は、国内が震災復興需要の継続等により増加したものの、輸出は北米を除く地域での景気の悪化から減少し、8.0%減。「印刷・製本・紙工機械」は、国内が横ばいだったものの、海外は欧州をはじめ、北米、中国の市場も低迷したことから、4.4%減。「油空圧機器」は、油圧機器が中国の景気低迷による需要の大幅な落ち込み、空気圧機器もアジアでの半導体製造装置向けが落ち込み、16.0%減。「ロボット」は、国内が自動車作業向けで好調だったものの、海外は中国での設備投資抑制の影響を受け、欧州向けも低迷したことから、12.6%減。「動力伝導装置」は、欧州、アジアとりわけ中国の景気減速により、需要先の工作機械等での需要減の影響を受けたことから、4.0%減。「農業用機械器具」は、国内向けが戸別所得補償制度の定着、米価の高値安定などにより、海外ではアジア地域での現地生産化の拡大等があるものの、米国向けが堅調で、全体で1.8%増。「金属工作機械」は、年度後半にアジア地域での需要減少、なかでも中国市場における電気機械向けが急激したこともあり、10.5%減。「第二次金属か工機械」は、液圧プレス等は伸びたものの、機会プレスやワイヤーフォーミングマシンが落ち込み、7.3%減。「鋳造装置」は、鋳造機械、ダイカストマシンがともに伸び、6.6%増。「繊維機械」は、化学繊維機械、紡績機械が増加したものの、準備機械、繊機、編組機械等は大きく減少し、全体では23.8%減。「食料品加工機械」は、復旧・復興需要や近年手控え状態にあった設備投資が見られたこともあり、
%増。「事務用機械」は、海外での現地生産が進み国内生産の減少傾向が続いたことから
%減。「ミシン」は、工業用ミシン、家庭用ミシンともに厳しく、23.2%減。「冷凍機・同応用装置」は、冷凍空調用圧縮機が減少したものの、空気調和関連機器、冷凍冷蔵関連機器は増加し、全体で2.2%増。「軸受け」は、国内が下期から自動車向けで減少、海外も北米向けは増加したが、欧州、アジア向けで減少したため、10.5%減。「半導体製造装置及びFPD製造装置」は、半導体製造装置が年後半から設備投資の抑制を受け、FPD製造装置は高精細、中小型パネルや勇気ELの投資に下支えされたものの、TV向けを中心とした大型パネル用の設備投資が先送りされたこともあり22.1%減少した。
(2)電気機械
電気機械の生産額は、前年度比(以下同様)2.0%減の6兆6941億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は、回転電気機械では交流発電機、交流電動機、小型電動機が好調、静止電気機械器具では、電力変換装置が再生エネルギー固定買取制度の開始に伴うパワーコンディショナーの増加等により、3.0%増。「民生用電気機械」は、家電製造企業のグローバル展開に伴い、海外生産シフトが進み、さらには海外生産、海外販売を行う「アウトアウト」も拡大化、電球LEDランプの普及の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少し、10.7%減。「電気計測器」は、電気計器が増加したものの、電気測定機、工業用計測制御機器、放射線計測器、環境計測器は減少し、全体では15.9%減少した。
(3)情報通信機械
情報通信機械の生産額は、前年度比(以下同様)9.3%減の4兆2023億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「民生用電子機器」は、年前半にエコカー補助金による自動車生産増の影響を受けたカーナビゲーションシステムや、一眼レフタイプで人気がでたデジタルカメラの需要造があったものの、薄型テレビ(対前年比82.5%減)、DVDビデオ(同73.1%減)が地上デジタル放送完全移行後の需要減少の影響を大きく受けたことから全体では27.8%減。「通信機器」は、有線通信機器がネットワーク接続機器や有線部品は増加したものの、有線端末機器や有線ネットワーク関連機器が減少し、無線通信機器では多機能携帯電話の需要増があり、通信機器全体では2.7%増。「電子計算機及び関連装置」はパソコンが低価格化の影響を受けたこともあり、全体で3.3%減少した。
(4)電子部品・デバイス
電子部品・デバイスの生産高は、前年度比(以下同様)11.4%減の6兆5319億円となった。
電子部品が多機能携帯やタブレット端末の海外での需要拡大効果があったものの、半導体は国内需要が減少、ディスプレイデバイスは薄型テレビ向け緒方パネルの需要減により、「電子部品」は2.1%増加、「電子デバイス」は17.9%減少した。
(5)輸送機械
輸送機械の生産額は、前年度比(以下同様)2.7%増の28兆8681億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「自動車」は、年度前半には国内販売でエコカー補助金による需要喚起により東日本大震災のため落ち込んだ前年を上回ったため、後半にその反動減や海外生産の拡大等による減少があったものの、自動車全体で4.9%増。「自動車部品」は、自動車市場で上期はエコカー補助金・減税の興亜で堅調、下期に減少したものの、通期では1.2%増。「産業車両」は、フォークリフトトラック、ショベルトラックともに輸出の低迷が続き、下期からは設備投資の抑制が国内需要に影響したことから全体では3.8%減。「鋼船」は、手持ち工事の減少により徐々に操業を落としたことにより。9.7%減。「航空機」は、機体、発動機が減少したものの、機体部品、発動機部品、装備品が大幅に増加し、全体で14.4%増加した。
(6)精密機械
精密機械の生産額は、前年度比(以下同様)4.0%減の1兆2876億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「計測機器」は、計量機器が産業機械、工作機械等の需要先で設備投資が伸びず、分析機器は中国への輸出が奮わず、国内も弱含み、光学測定機は国内で横ばいだったものの、米国、欧州での回復が奮わず、測量機器は国内での復興需要が続いたものの、海外は低迷したことから、計測機器全体で5.0%減。「光学器械」は写真機が4.1%増、望遠鏡・顕微鏡は4.5%増、カメラの交換レンズ・付属品が5.4%減となり、光学器械全体で2.1%減少した。
(7)金属製品
金属製品の生産額は、前年度比(以下同様)1.5%減の2兆6505億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「鉄構物・架線金物」は、4.7%増。「ばね」は、下期に自動車生産台数減の影響を受け、4.15元。「機械工具」は、特殊鋼工具が自動車向けは下期に落ち込み、5.9%減。超硬工具は大口需要先の自動車向けが下期に厳しかったことから、5.3%減、ダイヤモンド工具が半導体、太陽光発電向けで減少し、6.5%減、機械工具全体では5.6%減。「バルブ・コック・鉄管継手」は、海外需要の落ち込みにより、3.4%減少した。
(8)鋳鍛造品
鋳鍛造品野生産額は、前年度比(以下同様)5.4%減の2兆5566億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「粉末冶金製品」は、0.1%増。「鍛工品」は、自動車、産業機械、建設機械、輸送機械向けともにいずれも減少し、7.4%減。「銑鉄鋳物」は、8.8%減。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は、7.9%減。「非鉄金属鋳物」は、3.3%減。「ダイカスト」は、自動車向けが堅調だったものの、一般機械、電気機械、二輪自動車向けは減少し、全体で2.8%減少した。
平成25年度の生産動向
平成24年度下期から落ち込んだ日本の機械工業の生産動向は、25年度上期を通じ弱含みに推移したものの、大胆な金融緩和政策や為替の改善効果に加え、政府が10月に打ち出した来年4月からの消費税率引き上げに伴う経済対策パッケージ、とりわけ設備投資減税・研究開発減税・事業再編促進減税などの一連の効果が今後期待され、緩やかな回復基調を辿っていくものとみられる。
こうした中で平成25年度の機械工業生産額は前年度比1.4%増の66兆8484億円となる見通しである。
機械工業の主な動向は次のとおりである。
(1)一般機械
一般機械の生産額は、前年度比(以下同様)4.7%増の13兆3300億円となる見通しである。
機種別にみると以下の通り。
「ボイラー・原動機」は、はん用内燃機関で生産拠点の間以外シフトが継続するものの、ボイラー・タービンでは外需の伸びを期待でき、全体で3.3%増。「土木建設機械」は、国内が引き続き堅調に推移、輸出も下期から緩やかに回復すると見込まれ、7.0%増。「印刷・製本・紙工機械」は、国内外ともに環境対応、小ロット対応等の高付加価値設備やデジタル関連設備にシフトしたユーザーからの需要増を期待し、7.0%増。「油空圧機器」は、中国を啓とする新興国向けが依然として厳しいものの、内需は復旧・復興需要が、外需は米国や東南アジア向け需要が期待でき、2.2%増。「ロボット」は、米国が引き続き堅調なものの、欧州、中国での需要が伸び悩むと見られ横ばい。「動力伝導装置」は、スチールチェーンで円高時の在庫残があり、輸出増への期待が厳しいものの、変速機で需要先の生産増や発電関連、老朽化対策等の需要増が期待でき、全体で1.3%増。「農業用機械器具」は、国内向けが農業機械関連補正予算や排ガス規制による需要造、海外向けは北米、アジアでの伸びを見込み、全体では7.0%増。「金属工作機械」は、国内外ともに緩やかながら回復傾向にあるものの、中国の電気機械産業における需要の落ち込みにより、6.7%減。「第二次金属加工機械」は、機械プレス等の大幅な増加が見込まれ、40.9%増。「繊維機械」は、準備機械、繊機、編組機械等が中国や他のアジア新興国で大幅な回復が見込まれ、全体では46.7%増。「食料品加工機械」は、手控え状態が長期化してきたが更新需要が期待され、0.8%増。「木材加工機械」は、国内が新設住宅着工増によるプレスカット機械の需要増、海外が合板機械の需要増が見込まれ、17.2%増。「事務用機械」は、海外での現地生産が進み、国内生産の減少傾向が続くことから、18.5%減。「ミシン」は、工業用ミシンがアジア市場で回復が見込まれ、4.7%増。「冷凍機・同応用装置」は冷凍空調用圧縮機、空気調和関連機器、冷凍冷蔵関連機器のいずれも増加が見込まれ、全体で4.0%増。「半導体製造装置及びFPD製造装置」は、ファウンドリ投資の継続、モバイル用メモリー市場の回復、TV用大形パネルの設備投資の再開への期待から、14.3%増加する見通しである。
(2)電気機械
電気機械の生産額は、前年度比(以下同様)0.6%増の6兆7346億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。
「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は、国内では電力供給安定化に向けた需要増が一段落するものの、景気刺激作による民間設備投資の回復、中国向けの輸出下げ止まり等を見込み、0.7%増。「民生用電気機械」は、家電製造企業のグローバル展開に伴い海外生産シフトがさらに進むとみられ、0.6%減。「電球」は、生産拠点の海外化や海外からの電球形LEDランプの輸入の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少すると見込まれ、7.5%減。「電気計測器」は、環境計測器が増加するものの、電気計器、電気測定器、興行用計測制御機器、放射線計測機器が減少し、全体では6.0%減少する見通しである。
(3)情報通信機械
情報通信機械の生産額は、前年度比(以下同様)8.5%減の3兆8444億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。
「民生用電子機器」は、薄型テレビやDVDビデオで引き続き地上デジタル放送完全移行後の需要減少が続き、カーナビゲーションシステムも前年の増加による反動源、デジタルカメラがコンパクトタイプで多機能携帯電話の影響を受けることから、全体では17.7%減。「通信機器」は、有線通信機器では国内事業所の設備投資の回復により有線端末機器が増加したものの、国内のネットワーク設備投資の一巡や海外生産シフトにより有線ネットワーク関連機器が減少し、また、無線通信機器では電気通信事業者の調達方針変更による日経メーカーの多機能携帯電話事業からの撤退の影響を受けることから、通信機器全体では9.3%減。「電子計算機及び関連装置」は、パソコンがWindows XPのサポート終了を来年4月に控え法人需要が堅調であり、個人需要も価格が手ごろなノートブックパソコンで伸びが期待できることから、1.3%増加する見通しである。
(4)電子部品・デバイス
電子部品・デバイスの生産額は、前年度比(以下同様)11.1%増の7兆2601億円となる見通しである。電子部品は受動部品のセラミックコンデンサが多機能携帯電話向けの輸出増、半導体は半導体素子が発光ダイオードや太陽電池セル、集積回路はフラッシュメモリの伸びが期待でき、ディスプレイデバイスは多機能携帯電話向けの中・小型の液晶デバイスの伸びが期待でき、「電子部品」は5.1%増加、「電子デバイス」は14.7%増加する見通しである。
(5)輸送機械
輸送機械の生産額は、前年度比(以下同様)0.3%減の28兆7758億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。
「自動車」は、海外では輸出環境お改善があるものの、海外生産の進展が予想され、国内販売では下期には景気の持ち直しによる回復や消費税率引き上げ前の駆け込み需要への影響から、自動車全体では2.0%増、「自動車部品」は、上期の自動車販売が厳しかったことから、下期も大幅な改善は難しいと見ており、5.9%減。「産業車両」は、フォークリフトトラックが下期以降、国内設備投資の回復に伴う需要増、排ガス規制強化や、消費税増税前の駆け込み需要への期待もあり、2.0%増。「鋼船」は、引き続き手持ち工事の減容により徐々に操業を落としていくことが見込まれ、12.6%減。「航空機」は、機体、発動機、機体部品、発動機部品、装備品のいずれも増加し、全体で24.4%増加する見通しである。
(6)精密機械
精密機械の生産額は、前年度比(以下同様)1.0%の1兆2753億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。計測機器は、計量機器が住宅着工戸数増によるメーター類の需要増、分析機器は中国への輸出が回復途上にあり、光学測定機は米国向けが上向くものの、欧州、中国で減少、測量機器は国内で需要、海外は中国、欧州で低迷が見込まれ、全体で0.8%減。「光学機械」は、写真機が2.0%増、望遠鏡・顕微鏡が新興国向けの成長が期待できるが、中国向けの不振が続き1.3%減。カメラの交換レンズ・付属品が2.7%減、光学機械全体では1.4%減少する見通しである。
(7)金属製品
金属製品の生産額は、前年度比(以下同様)1.3%増の2兆6860億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。
「鋳物・架線金物」は、2.4%増。「ばね」は、自動車生産の増加の影響を受けると見られ、1.6%増。「機械工具」は、特殊鋼工具が下期の回復が期待され1.8%増、超硬工具が、米国や東南アジアでの需要増が見込まれ5.0増、ダイヤモンド工具が、電子部品・デバイス向けで回復が見込まれ1.3%増、機械工具全体では3.7%増。「バルブ・コック・鉄管継手」は、震災の復興需要等で、1.4%増加する見通しである。
(8)鋳鍛造品
鋳鍛造品の生産額は、前年度比(以下同様)1.4%減の2兆5206億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「粉末冶金製品」は、7.6%減。「鍛工品」は、自動車向けが横ばい、輸送機械向けで減少、産業機械向けが微増、土木建設機械向けで減少が見込まれ、鍛工品全体では0.7%増。「銑鉄鋳物」は、1.0%増。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は、3.9%減。「非鉄金属鋳物」は、1.7%減。「ダイカスト」は、自動車向け等が上期に落ち込み、2.5%減少する見通しである。