年頭所感(日本建設機械工業会/日本フルードパワー工業会/日本金型工業会)

「豊かな社会の実現に向け、環境・省エネルギーなど社会的要請に積極的に取り組む」
●日本建設機械工業会 会長 竹内紀行

新年あけましておめでとうございます。

昨年の国内の建設機械需要は、公共投資・民間投資の増大、震災復興需要、さらには排出ガス規制の生産猶予機関終了に伴う旧規制機の駆け込み需要等により、大幅に伸長しました。その反動から、本年は一定の買い控えが出ることが想定されますが、堅調な建設投資や震災復興の本格化等により、機種によって異なるものの、全体としては高いレベルの需要を見込んでおります。

今後も、小型クラスの2011年排出ガス規制対応機の生産猶予期間終了や2014年排出ガス規制の導入等が控えており、建機業界としては、この先数年が正念場となります。最新の排出ガス規制対応機の普及促進に努めることはもとより、会員各社の不断の努力により建機産業力を強化していくことが重要であると考えております。

一方、海外需要は、北米向けの需要が堅調に推移するものの、資源開発国向けのほか、アジア、欧州向けが減少しました。本年には、こうした傾向も底を打ち、緩やかに回復すると見込んでいます。

こうした需要環境のもと、豊かな社会の実現に向け、環境・省エネルギーといった社会的要請に積極的に取り組むとともに、環境負荷低減技術やICTといったさまざまな最新技術の導入を推進し、より効率的かつ利便性の高い製品・サービスの提供に努めていきたいと考えています。

さて、当工業会では、設立理念として「調和と発展による世界への貢献」ならびに「共生と競争」を掲げ、さらに①良き企業市民としての社会への貢献、②ステークホルダーとの共存共栄、③公正・透明な競争と適正な取引の推進、④世界の一員としてのグローバル化の推進、⑤安心・安全の追求と人間中心の経営の志向、⑥環境保護、省エネルギー、省資源の推進、⑦新しい商品および分野の開拓の7項目からなる「経営パラダイム」を策定しております。本年も、この理念・パラダイムの実現に向け、建設機械産業を取り巻く変化に柔軟かつスピード感覚をもって活動を推進してまいります。

本年が、皆様にとりまして、健康で幸多き一年となりますよう祈念し、新年の挨拶といたします。

「企業は社会の公器としての公正さも求められている」
●日本フルードパワー工業会 会長 脇 憲一

新年明けましておめでとうございます。平成26年の年頭に当たり一言ご挨拶を申し上げます。

「東日本大震災」、それに伴う東電の「福島第一原発事故」の発生から早くも3年の歳月が過ぎようとしています。昨年の11月に30~40年の長期戦を覚悟しなければならない廃炉に向けた未知との闘いが漸く始まりましたが、国内外の技術と英知を結集し、あらゆる手立てを尽くし、国も全力を挙げて支援し、復旧・復興が加速されることを願って止みません。

さて、昨年の我が国の経済環境を顧みますと、所謂「アベノミクス」は円安や株高を齎らし、昨年の11月に内閣府が発表した月例経済報告でも、「国内景気は緩やかに回復しつつある」との基調判断が示されています。実際に、円安による輸出環境の改善という追い風に加え、公共投資による押し上げ効果、消費増税による駆け込み需要などの内需の回復で上場企業の平成25年4~9月期の経常利益(連結)は前年同期に比べ42%増加し、平成26年3月期も前期に比べ28%増加すると予想されています。

このように、新興国の景気減速などで下方修正した企業もありますが、企業全体では業績回復が鮮明になってきています。然し、先行きは海外景気の下振れが国内景気を下押しすることも懸念されていますので、民需の回復力には未だ不安が残され、「輸出や生産が拡大して企業収益も改善し、設備投資や雇用が増加して賃金も上昇する」という成長サイクルが確立されつつあるとは言い切れません。このような懸念を払拭し、民需主導の景気回復を本格化させ、成長の恩恵を企業から家計に波及させるためには、財政出動や金融緩和などの各種政策だけではなく、成長戦略の第2弾、即ち日本の立地競争力を高める法人税の実効税率引き下げに加え、企業の投資を促す設備等投資促進税制の創設、研究開発税制の拡充・延長などの「税制の改革」、雇用条件を柔軟に設定できる労働法制などの「規制の緩和」、そして関税を撤廃することで広域・多国間の自由化を促進するだけではなく、開放することで日本の産業を強化・再生する構造改革にもつながる環太平洋経済連携協定(TPP)の締結などを始めとする「通商政策の転換」が必要であります。同時に、昨年の10月に閣議決定された消費税増税による反動減を緩和するための5兆円規模の対策とともに、消費税の円滑且つ適正な転嫁を確保するための実効性のある対策も不可欠でありますが、これらの諸施策の早期の実現と確実な実行を大いに期待するところであります。

ところで、昨年は著名なホテル、レストラン等の虚偽表示で消費者の信頼を裏切り、日本が世界に誇る「おもてなし」を揺るがせる不祥事が相次ぎました。経営者は「意図的に表示を偽って利益を得ようとした事実はない」と釈明していますが、価格競争が激化する中で企業の本来の目的や公正さを忘れ、目標の利益を達成しようとする余り、安価な食材を使いながらも、故意にメニューの表示を偽ったとしか誰の目にも映りません。

企業は常に利益の最大化を追求していかなければなりませんが、利益は企業にとって人体の血液のようなものであり、存続し成長していくためには欠くことのできないものであります。然し、利益は飽くまでも目標であって目的ではありません。二宮尊徳翁は「経済なき道徳は寝言である」と述べている一方、「道徳なき経済は罪悪である」とも述べていますが、企業は利益だけを追求するのではなく社会の公器としての公正さも求められています。

中国の戦国時代の著名な儒学者であった荀子の「義を先にして利を後にする者には栄えあり、利を先にして義を後にする者には辱めあり」という名言がありますが、これは正しい理念で経営に当たれば、利益は自ずとついてくるということを示しています。

フルードパワーは社会の「安全」や「安心」などの一翼を担う重要な産業であります。このフルードパワー産業に携わる企業は、変化が激しく混沌として先行きが不透明な状況にあっても、品質を重視するなどの変えてはならない普遍的な価値を「義」として守りながら、時代や社会の求めに応じて変えるべきものは革新し、新たな付加価値を持続的に創出することで長期的な成長を実現し、公正さにも配慮しながら企業価値を高めることで顧客、従業員、取引先、株主、被災した地域など、より広範なステークホルダーの要請に応え社会に貢献していくという本来の目的を希求していく使命と責任があります。利益に囚われ過ぎ本来の目的や公正さを失えば、企業は必ずや社会からの信頼を失墜し存亡の危機に直面することになります。

最後になりますが、本年(平成26年)は午年であります。「人間万事塞翁が馬」の諺のように、先行き何が起きるかを予測できたとしても、それが「いつ」起きて「どう」転ぶかを予想することは殆ど不可能であると言っても過言ではありません。日本フルードパワー工業会の会員各社様には、厳しい現実に確りと向き合い、環境を冷徹に見つめ、不測の事態に備えながらも内部留保を厚くするだけではなく、投資すべきものは投資し、健全な競争と協調のなかで共に成長・発展し、雇用の増加や賃金の上昇などを齎す本格的な景気の好循環に寄与することが望まれています。

これを実現するためには、各需要業界の皆様方のご支援が必要不可欠でございますので、更なるご協力を切にお願い申し上げ新年のご挨拶とさせていただきます。

「緊急事態が続く今年も“元気な業界”として乗り越えていく」
●日本金型工業会 会長 牧野俊清

平成26年の新春を迎えるにあたり、謹んで会員の皆様、関連官公庁、関連業界の皆様にお慶び申し上げます。

‘08年9月のリーマンショック、円高、‘11年3月の東日本大震災が、日本経済を苦しみ続けておりました。特に円高は’07年6月1ドル124円だったのが、政治の無策か大震災後も続き、’12年2月には76円と163%も高くなりました(対中国135%、対韓国196%)。日本製品が6割も高くなったのです。各国の物価上昇率との差異があるにせよ、日本のものづくりの競争力が落ちるのが当然です。その結果、自国通貨ベースのGDPは、’12を’07と比較すると、日本93%、中国198%、韓国131%、米国112%となってしまいました。幸。アベノミクスによって経済環境は好転しつつあります。昨年は103円くらいに戻しており、製造大企業は高収益を得始めています。

金型業界においては、金型の昨年10月までの1年間の生産額は、一昨年とほぼ同様ですが、リーマンショック前2007年の7割と緊急事態が続いております。型種、需要業界の違いもあり、会社によって、業績は様々のようです。機械統計では、鍛造専業金型がリーマンショック前の1.7倍であり、大型プレス専業金型も現在活況のようです。

大企業の新製品開発が円高・大震災等により停滞していたかもしれませんが、好業績をあげられたことにより、顧客は、その利益を新製品開発(金型発注)、価格見直しに振り向けていただきたく思います。2020年の東京オリンピック招致の決定もあり、今年の金型業界、製造業界、日本経済が良いことを期待します。

昨年3月、経済産業省で「新素形材産業ビジョン」が作成され、工業会でも「新金型産業ビジョン」の作成を、3月完成を目処に進めています。金型業界の将来を担い、将来のあり方に最も影響される、若手を中心に議論をしていただいており、金型業界に密接に関与されている有識者の応援もいただき、皆様にお役にたつものになると確信しております。
「新金型産業ビジョン」として、①技術力、②営業力(発信力)、③新分野への展開と付加価値向上、④海外市場とグローバル展開、⑤人材(経営者・社員)等が検討されています。

日本金型工業会は、事務局員数が昨年より少なくなりましたが、東京・名古屋・大阪の3事務所にて、ウエブ環境の活用による役割分担した一体化を進め、会報・ホームページのリニューアル等、サービスの拡充を進めており、会員も若干ではありますが増加しております。また、さらに新たなご入会が増えることを期待しております。

緊急事態が続く今年においても、会員、賛助会員、顧客、経済産業省素形材産業室始めとした監督官庁、学会の大きな応援により、この難局を、「元気な業界」として乗り越えていきたく思う所存でございます。皆様のご理解ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げ、年頭の挨拶とさせて頂きます。

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