大きな利益をアジア市場の成長とともに OSG

切削工具メーカーのオーエスジー(社長=石川則男氏、愛知県豊川市)は、1月14日午前11時30分より豊川市内にある同社GTセンターで新年賀詞交歓会を開催し、取引先を含め多数の来場者で賑わった。

石川則男社長
石川則男社長
冒頭、石川社長がお礼の言葉を述べたあと、「世界同時不況から2年あまりが経過いたしました。世界経済は各国の政府の景気浮揚策、そして中国を中心とする新興国経済の発展、また、スマートフォン、電気自動車等の新技術、新製品といったものが次々と発売されたことによって、世界経済は着実に回復の道を歩んだと思います。一方、私どもの国内製造業に目を向けますと、思いがけず円高が長期化いたしまして、製造業の海外移転はますます進んでいる状況です。そんな中、特に製造業の中小企業はまだまだ大変厳しい状況であると認識しています。そのような中、弊社の2009年度は、上場以来、営業赤字という大変厳しい状況に陥りましたが、2010年度は本日お集まりになられた皆様方の多大なるご支援、ご協力のお陰でなんとか最悪期から脱出することができました。そして1月11日に発表させていただいた数字ですが、売上高、695億円。これは対前年比130%でした。利益面ですが、営業利益が75億円、経常利益67億円、純利益37億7000万円と、お陰様で黒字化を達成することができました。また、財務状況ですが、有利子負債を139億円減少させました。この主な理由は営業キャッシュフローで140億円を創出することができました。結果的にはフリーキャッシュフローも85億7000万円と大きく改善することができ、この財務内容を糧に、2011年度は前向きな投資を行う環境が整ったと考えております。また、先日、決算と同時に発表させていただきました中期経営計画では、次の成長を見越して3つの拡大を推進するために新たな投資を行います。3つの拡大は、まず1番目として重要顧客産業の拡大、これは自動車産業に弊社は大変お世話になっているのですが、自動車産業以外の顧客のグループをいかに拡大していくかということです。2つめは、アジア市場での受注力の拡大、これは生産能力も含め、提案力、アフターサービスといった総合力の受注力を拡大していこうと考えております。3つ目は製品のラインナップの拡大ということで、弊社の営業でのスタイルも大手のお客様のアプリケーションをピンポイントで攻めるということに少しずつ変わり、その製品のラインナップを拡大したいと思っています。また、将来の投資の原資である利益はタップ、転造工具といった弊社がまだ優位性を保っている製品をさらに断とつさせ、ここで大きな利益をアジア市場の成長とともに生み出していきたいと思います。そしてその利益を顧客開拓、新製品開発、ものづくりの技術の改善・革新に投資することで長期的な成長を可能にしたいと考えております。今期はすでにはじまっていますが、この2011年中期計画の1年目として、売上高750億円、営業利益100億円、経常利益92億円、純利益52億円を予定しております。お客様に愛されるオーエスジーを目指して、そして皆様とともにこの業界の中で、チャレンジする心を忘れずに社員一同邁進する所存でございますので、今まで以上に皆様のご支援、ご鞭撻をお願いするものであります」とあいさつをした。


出稼ぎをする覚悟はあるか

大沢輝秀会長
大沢輝秀会長
続いて大沢輝秀会長が、「リーマンショックという世界経済を痛めつけたショックを乗り越えて、日本が相変わらず厳しい中でいると理解しています。豊川市は地元の経済界であり地方経済です。大都会にいると大企業が多いのですが、日本経済は大企業がまわしているところが見受けられ、大企業を中心に考えると日本経済が良くなっていると実感しています。ところが地方を見てみますと、大変厳しい状況が相変わらず続いています。リチャード・クー氏の最新レポートを読みましたが、興味深いことに日本経済はまだまだ捨てたもんじゃないとありました。i pod、i pad、i phoneを例にとりまして、この中身を調べたところ、たとえばI padという製品は世界でみんなが欲しがっていて、この中身が34%全て日本製だとしています。そして14%が台湾の産業がそれを支えている。12%が韓国製です。そして中国で組み立てている。よくよくみると、デザイン等はアメリカのアップルが行っているのですが、マニュファクチャード・バイ・チャイナになっている。このバイ・チャイナはジャパンであるべきだと言っています。組み立てに使われている中国は6.4%。中国で稼いでいるのはたったの6.4%だということ。これらの製品は単価が一番高いのは約8万円弱、安いのは4万9800円くらいで買えるわけですが、この大きな数字からみたのは6.4%は中国が組み立てコストに使っているということで、これはどう考えても中国製ではなく、日本製だ、としています。最近は日本がガラパコス化するとも言われていますが、その中で製品は高級品化しているのが現状です。私は社内にこういう風にいっています。私どもの会社のことを私は地球会社と表現しているのですが、『オーエスジーは地球会社だぞ、みんな出稼ぎをする覚悟はあるか』と、私は社内に問いかけています。日本の現状を問いかけたときに、少子化はもう始まり、日本国内マーケットはかつて1億2700万が隆々としていたのですが、世界を見渡せばアジアが25億、30億がマーケットです。このような中で稼ごうと思うと、今後日本でやっていくのは困難であるというのが私の見方です。どういうことかというと、昔、雪深いところで冬場に仕事ができなくなると出稼ぎをやるというものの考え方が日本にあった。同じような考え方が、例えばフィリピンの最貧国に近いところでは自国に仕事がないから外に出て行ってメイドさんになって本国に送金するというような出稼ぎですが、日本がやれるパターンは、現在、個々が勉強して外に目を向け、たとえば世界の金融界で働くという非常にグローバルな状態になっている。これをやれる人はやる。これは個人的なことですが、今後は、会社が現地に出ていって現地で稼いでそれを日本へ送金するという、こういうパターンがどんどん増えていく。これからは出稼ぎの時代であると思っています」と挨拶し、途中、プロバスケットボールチームの「浜松・東三河フェニックス」の中村和雄コーチが壇上に立ち、選手の紹介をした。
浜松・東三河フェニックス
浜松・東三河フェニックス



新機軸を打ち出していく

吉井亨 山善社長
吉井亨 山善社長
続いて取引先を代表して、吉井亨山善社長が、「先ほど石川社長が前期の決算報告がありました。増収30.4%、695億円、それから損益各項目黒字転換ということでまさにV字回復だと思っております。そしてバスケットのpjリーグですが、山善もスポンサーとさせていただいております。22勝2敗、まさに組織力だと思います。誰かが飛びぬけるんじゃなくて、みんなの力でやっておられる。まさに組織力です。オーエスジーが標榜されている地球企業、まさに世界力、そして、専門力。われわれは専門商社ですし、オーエスジーさんも専門企業です。専門力をさらに高め、そして最後は組織力。世の中の変化変動に対応するためには新機軸だと思っています。過去と同じことをやっていれば必ず企業は衰退をいたします。常にイノベーションを起こして、新しいものに挑戦する。これは企業が存続する、発展する条件だと思っています。われわれも変革し、新機軸を打ち出していかなければならない。そのためのイノベーションをおこしていきたいと思います」と挨拶をし、続いて鏡開きが行われた。[(注)吉井山善社長の吉は土よし]

乾杯の発声は三橋誠テヅカ社長が行った。この中で、三橋テヅカ社長は、「今年はうさぎ年ということで、日本経済も跳ねる、飛ぶと言われています。日本経済も光が見え、エサのあり場も分かって来ました。日本の製造業が脱兎のごとく飛び跳ねて今年中には先行グループに食いついていきたい」と挨拶をし、和やかな歓談が始まった。

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