「若い力に期待したい」 金型・東部支部新年懇親会開く
2011年01月28日
日本金型工業会東部支部(支部長=牧野俊清氏)は、1月14日午後4時より都内の上野精養軒で新年懇親会を開催した。
懇親会開催に先立ち、特別講演として、山本聡機械振興協会経済研究所調査研究部研究員が「5年後の国内企業のあるべき姿」をテーマに講演した。
成長する余地はまだまだある
金子敬一経済産業省製造産業局素形材産業室課長補佐が都築直史同素形材産業室の代理としてあいさつをした。その中で、「昨年、金型工業会の上田会長に菅総理のもとの円卓会議に出席していただきました。金型の仕事をしながら感じたことは日本の金型は韓国や中国に負けてしまうのか、ということだったのですが、昨年2回、金型関係で海外に出張いたしましたが、韓国は海外から仕事を取って来ます。これは学ばなければならないということが感想です。欧州に行った時には、『これは勝てる』というのが感想でした。ライフワークバランスを重要視している欧州は労働時間が短いのです。日本のほうが我武者羅なので、視点を海外に向けると成長する余地はまだまだあります。きっと今年は良い年になると期待しています」と述べた。続いて、勝本光久関東経済産業局産業部製造産業課課長が、「業界振興のみならず日本のものづくりを支えている皆様のご尽力を深く感謝します。外需以外、生産面で若干力強さに欠けるということで景況判断は横ばいとなっております。私どもも年末年始に20社ほどの企業様と景況感等の話をしましたが、景況感に差があるように感じます。さて、サポインの23年度ですが、まだ国会を通っていないので確約ができませんが150億円の予算が満額つきました。これは基盤技術が重要という認識のもとではないかと考えています。もうひとつはものづくり日本大賞が2月22日まで募集中です。内閣総理大臣賞、経済産業大臣賞、優秀賞とあるのですが、アンケートをしたところ、受賞されたところの8割が従業員のやる気が上がった、それ以上の9割が企業PRだけじゃなくビジネスもしやすくなったと応えています」とあいさつした。
既成概念を捨て生き残りを図る
上田勝弘金型工業会会長が、「金型業界は繁忙を極めている企業もありますが、一方、絶対量の仕事の不足により大変厳しい状況にある企業もあります。いよいよ金型業界も淘汰の時代になったのかなという感を抱いております。なんとかしてこの時期も生き延びてもらいたい。ところで、うさぎ年ということですが、実は草食動物のうさぎは愛嬌があって可愛らしい。うさぎは葉っぱを美味しそうに食べているイメージがあるのですが実はうさぎは肉食です。私は小学から中学までうさぎが好きで飼っておりましたが、うさぎが子供を出産したあと、生まれたての小さな子供見たさに、パッと灯りをつけて隠していた子供を見てしまったのです。すると、しばらくするとうさぎの子供の姿形がなくなっていました。親が食べてしまったのです。私は父に、大きくなるまで絶対に子供を見ちゃいかん、と言われていたのですがパンドラの箱を開けてしまったんですね。おそらくあのうさぎは空腹で子供を食べたのではなく、子供が外敵に襲われるのであれば、自分で食べてしまおうと思って食べたのではないかと思っています。また、モンゴルのツンドラ地帯に生息する馬は飼い主が撃って来たキツネやうさぎの皮を取られたあとの肉を食べる。草食動物のはずの馬は、食べるものがない冬だけ肉食動物に変わるのです。ツンドラ地帯に新芽が出る頃には、元の姿の草食動物に変わる。このように動物の生き残りの策がモンゴルにも展開されています。言えることは既成概念でうさぎや馬が草食動物であるということはないということで、生きるためには、なんらかの手を打って簡単に諦めてはいけないという1つの見本だと思っています。さて、菅総理の官邸にお伺いし円卓会議に参加しました。大手企業ばかりでしたが、経済産業省から金型産業からぜひ出席してもらいたいとの要請を受けました。一番問題になったのは法人税5%引き下げでしたが、法人税5%は儲けたあとのインセンティブです。儲からないものについてはなんのインセンティブもない。諸外国に比べ5%引き下げてもらっても、日本の法人税はまだ高いということ。菅総理大臣は5%を引き下げると1兆5000億の財源が生まれるので、これを大手の皆さま方に国内に投資をしてもらいたいという強い要望であります。ある大手の経営者は、『われわれは減税した分で投資し、国内の需要が増えるよう頑張ります』ということを言われていましたが、疑心暗鬼です。ある調査によると、そこで生まれた内部留保は70%まで投資するなら海外に投資をする、あるいは内部留保に留めておくという隠れた調査結果が出ています。ところで、先ほど山本先生のお話にあったとおり、韓国企業は元気がいい。私も韓国を調査しましたが、日本の金型が巧みに韓国企業に流れております。どういうことかというと韓国に金型を発注するのですが、テストも組立もいらない。検査記録だけでOK。お金はすぐ払いますから、ということで、痕跡も残さない。絶対に『どこの仕事をやったかを言うな』、『サンプルも渡さない』、という取引契約をやっている。私はそれを聞いた時に愕然としました。これは取引じゃなくて完全犯罪を狙っているんじゃないかと思うくらい異様な感じを受けました。これが現実に韓国で行われています。日本の真面目に協力したメーカーはたまったものじゃない。こういうことを日本の大手企業の外注担当はやるのかと義憤を感じて帰って来ました。しかし、そんなことは取引の自由ですが、実際に金型発注の流れがこのような方法になっている。日本の大手自動車メーカーは現地で調達できるものは全部現地でやる。『日本の金型を簡単に発注するな、コストが高い』という指令が出ております。私は日本の金型業界は淘汰の時代にさらされていると感じざるを得ません。ですから、特化技術、よそにマネのできない技術をやっていかなければなりません」とあいさつした。第26回素形材産業技術賞 経済大臣賞を受賞したサイベックコーポレーションの平林健吾相談役が牧野支部長から記念品が贈呈された。
牧野二郎牧野フライス製作所社長の乾杯の発声で和やかな歓談がはじまり、宴もたけなわの頃散会した。