製造現場に情熱あり! ニッチな製品群で切削工具マニアを魅了する栄工舎 

近年、「材料革命」と呼ばれるほど部品の材質も変化し、特殊な治具や工具が必要とされている。加工技術は、生み出す商品の善し悪しを左右する重要なものであり、今後ますます技術開発競争は熾烈さを増していくと考えられる。また、生産現場ではコスト意識も高いのが現状だ。

さて、最終段階で精密な部品の仕上げにリーマは必要だが、リーマ生産量日本一の会社が東京都大田区にある。この分野で国内トップシェアを誇るのは栄工舎(社長=安部川洋司氏、本社:東京都大田区)である。しかも同社がつくる切削工具の数々はニッチな分野で大活躍をしており、商品を製造販売するだけでなく再研磨まで行うという、ユーザーの面倒なことも引き受ける切削工具メーカーなのだ。同社の生産基地である新潟工場を訪ねた。

リーマ生産量日本一! 高品質かつ短納期が強み!

安部川社長
安部川社長
栄工舎は東京と大阪に営業所がある。
生産拠点は新潟工場(魚沼市十日町)と焼き入れ前の工程を行う広神工場(魚沼市山口)の2箇所。

安部川社長は、「新潟工場は工場全体が栄工舎のショールーム。来てくれるお客様には全て見てもらいたい。このような意識のもとで新潟工場は“みせる工場”という位置づけにある」と話す。


280°の工具は栄工舎だけ!
280°の工具は栄工舎だけ!
栄工舎のリーマは、ワークの材質に合わせたラインナップとオーダーメイドリーマ製作にも対応し国内トップシェアを誇っているが、その他の製品群には強い個性がある。

例えば球面に近い『超硬ソリッド球面カッター』は280°に切れ刃がある。280°の工具は世界中探しても栄工舎だけであろう。さらに超硬スパーミニコンベックス、超硬スーパーミニコンケーブ等のカッターシリーズもおもしろい。他にも破損タップ除去専用ソリッドドリル『タップリムーバー』も使い勝手がいい“折損タップレスキュー製品”として好評を博している。


このようにニッチな工具をつくって特色を出しつつ、特殊品を短納期で生産し製造現場に送り出すという強みがある。ユーザーからは「加工に困ったら栄工舎の総合カタログを見れば使える物が見つかる」とよく言われるとのこと。同社の工具は日本のみならず、台湾、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、韓国、中国、フィリピン、アメリカ、ドイツ、ロシア、オーストラリア、インド、ニュージーランド、デンマークなどに輸出されている。

新潟工場では現在、月間3万本を生産している。
ニッチな分だけほとんどが手作りに近いが、「高品質な工具を短納期でお届けできるノウハウがある。1本1本心を込めて工具をつくっている」とのことで、高精度な工作機械などの設備も増強し、さらなる安定供給と生産性アップへの意欲をみせた。

さて、気になるのは栄工舎の新製品だが、現在、本格拡販に向けて大詰めを迎えているという。新製品は『シート面カッター』。これは、Oリングのパッキンを埋め込む座ぐりの部位に使用されるという。「4工程を1度にやってくれる省力化工具ですよ」(安部川社長)

論より証拠! 見(魅)せる工場で全てをさらけ出す!

工場に入ると高精度マシンがズラリと並んでいた。
新潟工場の平均年齢は42才。写真にあるのは、外径8mm、全長270mmの工具である。

ふと見ると、“ワンポイントレッスン”という紙が掲げてある。佐藤 健取締役工場長に話を聞いたところ、「1人の失敗を全員で繰り返さないようにするため、失敗を共有している」と説明をしてくれた。

新素材ファイバー用カッタ
新素材ファイバー用カッタ
刃径、刃厚、全長などのバリエーションが豊富な栄工舎のカッターシリーズだが、写真にあるのは新素材ファイバー用カッターである。航空機産業で使われている。

工場内を歩いていると窓から差し込む淡い光が床面を照らしピカピカと輝いていた。とにかく整理整頓が行き届いている印象を受ける。ちなみに工場は2交代制で夜中の2時まで稼働しているとのこと。


佐藤工場長
佐藤工場長
「自動車も生産台数は増加しましたが、国内生産が減少しているのが残念なところ。量産品などの多くは海外に移ってしまいましたからね。われわれが生き残るには、ニッチな分野で頑張っていくしかない」(佐藤工場長)

最終ラインを覗いてみると、人間の手で刃を付けていた。
技能者が器用に刃を研削している。ヂッ、ヂッ、ヂッ・・・と規則正しく材料が擦れる音がする。

佐藤工場長が言うには「ここだけは人間の手でないと出来ない工程で自動化はできない」とのこと。栄工舎は技能者をマンツーマンで育てており、新人ひとりに担当者を付けて「新人教育早期戦力化」を実行している。

技能者の腕がキラリと光る!

熟練工が必要なライン。自動化はできない。
熟練工が必要なライン。自動化はできない。
優秀な職人を育てるために必要な時間を訪ねたところ、「5年くらいはかかるでしょうね」と返ってきた。

「この工程は熟練工が必要なので、このラインには派遣は置いていないんですよ」(佐藤工場長)

奥には凹凸をつくるためのプロファイル加工機(WAIDA社製)が置いてあった。形状精度±1ミクロン以下のニーズに答える最先端マシンだ。需要を見込んで今年2月に導入したばかりだという。

日本の製造業には規模が小さくても潜在的な力の大きな企業がある。

形状精度±1µ以下のニーズに答えるプロファイル加工機(WAIDA社製)
形状精度±1µ以下のニーズに答えるプロファイル加工機(WAIDA社製)
栄工舎では、国内外のユーザーや販売店様はもとより地元の学校からも工場見学の要請があり、ものづくりの素晴らしさを広めている。また、工場見学を受け付けているので、栄工舎の工具づくりをぜひ見て欲しい。最先端とアナログの融合から生み出されるニッチな工具をその目で確かめてみてはいかがだろうか。なお、特殊品(オーダー)も受け付けている。

ご相談は、03-3738-3970 熊田 まで。