INTERMOLD2014の会場内で工作機械メーカー6社の社長に聞きました! ~製造現場に提案するマシンの優位性を教えてください!~
INTERMOLD2014/金型展2014」(主催=日本金型工業会・テレビ大阪)ならびに「金属プレス加工技術展2014」(主催=日本金属プレス工業会)が、4月16日(水)~19日(土)までの4日間、インテックス大阪で開催され大成功のうちに幕を閉じた。
最近の税制トレンドといえば、「生産性向上設備投資促進税制」が挙げられる。これは、先端設備、生産ラインやオペレーションの刷新・改善のための設備投資を即時償却または5%税制額控除という優遇措置で国が支援するものだ。こういったことも相まって最近は、設備投資意欲の高まりも感じる。そこで、今回、展示会場内でお会いした工作機械メーカー6社(アマダマシンツール、オークマ、キタムラ機械、ナガセインテグレックス、三井精機工業、安田工業)の社長に“製造現場に提案するマシンの優位性”についてお話を伺った。
常に視点はお客様とともに! 工程に改革をもたらしたアマダマシンツール
アマダグループは“プロセス・イノベーション”をテーマに掲げ金型業界に訴求。
アマダマシンツールの末岡愼弘社長は、「金型業界では海外に出て行かれるお客様も多いが、国内に残られるお客様は生産コストを削減しつつ、いかに精度を高めるか、という差別化を考えておられる。そこでわれわれが考えている“一貫加工”を提案したい。『MX-150』は、高精度5軸ミーリング、ターンミーリング、研削の3つの加工を1台に集約したマシンで、1段取り複数工程加工で滞留時間や段取り時間が削減されるうえ、様々な形状への対応幅が拡大するので高い経済効果が期待できます。段取りズレの品質低下も抑制するので、面品位も美しい」と優位性を説明。
今回、末岡社長が来場者に見せたかったのは、インコネルの加工だ。
「インコネルというと切削工具との親和性が大きく、熱伝導率が悪いこともあり切削加工が最も困難な材料として有名ですが、耐熱性や耐蝕性に優れており、自動車の排気部分や原子力のタービン、航空機のエンジン部など高温高圧の過酷な条件下で使用される材料。このような超難削材を1台で加工できるというプロセスはまさに革命でしょう」と自信たっぷり。末岡社長は、自動車、航空機はもちろん、新たに医療分野にも注目しているとのことで、「アメリカは医療分野が活性化しており注目している。われわれは常にお客様とともに歩んでいくんだ――という考えがある。生産性を重視する分野にわれわれの斬新な考え方と技術が詰まったマシンで、ぜひとも新たな価値を創造してもらいたいですね」とした。
マシンに高い知能を組み込んだオークマ
「われわれのマシンで日本のものづくりを合理化してもらえば嬉しい。鍵は工程集約です」と話したオークマの花木義麿社長。オークマといえばマシンに“知能化技術”を用いて、加工インフラ(基盤)に新たな概念を取り入れた画期的な企業である。温度変化を受け入れるという独自の考え方“サーモフレンドリーコンセプト”は、高精度な熱変位制御技術で長時間の連続加工でも安定した精度で加工を行うことができることを指す。また、自動・手動運転問わず、衝突防止機能もマシンに搭載し、世界初の“ぶつからない機械”として衝突によるリスク回避をしている。花木社長は「この10年来、オークマは知能化技術に注力してきた。熱変異補正については大げさに言うと産業革命以来の宿願とされていた。これを可能なレベルまでに高め、切屑が溜まっても冷却水をかけても長時間の連続加工でも精度を一定に保つことができる」として、高精度かつ安定した精度が確保できることを強調した。
今回展示していたのは『MULTUS U 3000』。もちろん知能化技術搭載の複合加工機だ。「われわれは実際の加工現場で活躍される皆様にどれだけお役に立てるかを追求している。高精度、高剛性、高機能、工程結合という全ての要求を1台に凝縮しているこのマシンで経済効果を実感していただきたい」と花木社長。オークマといえば洗練されたデザインも魅力的だが、「男女問わず20~30代が設計デザインを担当している。オールドマンではなかなか出ない発想もあるので、若者には期待しているんですよ」と若者にエールを送った。
人間工学的視野から機械デザイン見直したキタムラ機械
展示会では人間工学的視野から機械デザインを全面的に見直したというキタムラ機械。従来比5倍の処理速度を持つハイエンドな独自開発のコントローラ『Arumatik-Mi』を標準搭載した次世代型マシニングセンタ『MYSENTER-Gシリーズ』を出展した。このシリーズは、全軸フルストロークにおいて位置決め精度±2µ、繰り返し精度1µを実現し、高精度加工が可能だ。
北村彰浩社長は、「現在、従来からの工程分散型マシンを駆使するような、例えば30種類の加工を30台の機械でやる時代ではなくなった。何十種類の加工工程を1台の機械でこなす工程集約型の工作機械がトレンドとなってきている。そのため工具が折れると生産性や精度の低下を招くので、われわれの機械は剛性を高め、工具が折れにくいように設計をしている」と話す。「工具交換装置は、破損した工具の予備のためのものではなく、1本の工具を有効活用して工程短縮を実現し、能率を上げて経済効果を高めるツール。『MYSENTER-HX250G』は工具収納本数がクラス最高の100本対応しているので様々な加工工程をこなすことができ、しかも工具破損を防ぐようマシンに高剛性をもたせている」と工具寿命についてマシン側からも問題解決が出来るとした。また、『MYSENTER-Gシリーズ』の正面扉は炭素繊維複合材料を用いており、鉄製の約4分の1に軽量化に成功、3層大形特殊ガラスを採用し、使用者の操作性と安全性を高めた。ミクロン単位の超精密な技術を先端材料の機能を活かして、省エネルギー、省スペース、省力化を貫いたキタムラ独自の“スマートデザイン”もユーザーの感性を刺激してくれる。北村社長は最後に「マシニングセンタの専業だからこそ質を落とさずお求めやすい価格設定が実現しています」としめくくった。
有益な価値を提供したナガセインテグレックス
近年、製造業界が熾烈な国際競争の中にさらされている中で、ナガセインテグレックスの強みといえば、一台一台受注生産によりつくられていることだろう。既製品にはない独自性溢れる超精密マシンを生み出す同社の顧客は95%以上が日本企業だ。長瀬幸泰社長は、「お客様の競争力強化のためにお手伝いができることはなにか――をテーマに掲げている」と話す。今回展示していたのはサドル形高精度成形平面研削盤『SGE 520』。細溝、コンタリング成形、総形、鏡面加工までマルチに対応できる高精度マシンである。日本でしかできない仕事をつくる一台として展示されていた。特長は0.1µmのNC指令値を活かせるサドル機史上最高の高剛性構造設計である。一般砥石のみならずCBN、ダイヤ砥石を用いた加工も可能だ。さらに注目すべき点は、匠の手で丹念に仕上げられたきさげ面と独自の摺動面設計がもたらす優れた真直運動精度だろう。これらの技術がよく分かるワークやユニット、数々のソリューション事例を数多く展開していた。
長瀬社長は、「ここ数年、超精密研削盤の“ECO”に本腰を入れ取り組んできた。超精密を狙う研削盤にこそ、省エネルギー化・環境対応が必要だと考えた。今までも省エネ・自律温度補正技術“スマートサーモニクス”など、新技術を発表してきたが、ただ単に省エネルギー化・環境対応するのではなく、さらに精度や加工能率、経済性も高める発想や技術をひっくるめたところにナガセが目指す“ECO”がある」と独自技術の拘りを説明してくれた。既成概念を払拭し、真の価値とは――を考えさせてくれる展示内容であった。
コンパクトなマシンに秘められた大きな力を見せつけた三井精機工業
「精度の三井」への原点回帰をテーマに掲げた三井精機工業。人気の『Vertex』も位置決め精度・繰り返し精度の許容値を大幅に向上させていた。岩倉幸一社長は、「昨年末、工作機械の自社精度規格を3割ほど高めてユーザーに保証すると発表したが、工作機械はつくり込みで精度が出ることを強調したい」と話す。
今回は人気機種『Vertex』シリーズをリニューアルして新しく『Vertex55X Ⅱ』を展示した同社。このマシンの特長は、X、Y、Zの直線3軸はコラム側で移動、A、C軸については、ベッド両側の壁を利用して傾斜A軸を駆動・固定し、テーブルは前後・左右には移動しないという“キューブオン構造”だ。この構造が可能にしたのはマシンの小型化だった。この仕組みが加工エリアにおいての“ゆとり”をそのままに、二面高速主軸を標準装備している。マシンの設置スペースは幅2m、奥行き3mというコンパクトなボディに最大φ750mm、高さ525mmのワークが搭載可能というから驚きである。また今回、ATCのサイクルタイムを約40%短縮している。目標精度に対して機械特性を把握し、最新の制御技術を適用し加工時間を最短にできるようパラメータをベストチューニングする“MPAC(パラメータ最適化)”も優位性のひとつ。主軸回転数を毎分最高3万回転まで高めたり、A軸テーブルとφ400C軸テーブルにDDモータを採用する“高速同時5軸制御パッケージ”も新たにオプションで設けた。岩倉社長は、「弊社のマシンはカバーを外したらその良さが分かる。高い精度に拘るお客様がお求めする加工に貢献します」としめくくった。
“揺るぎない精度”を誇る安田工業
精度と機能が安定したものでないと市場に通用しないと考える安田工業。
安田拓人社長は、「日々進化する“超小型精密加工”に超高精度・高面品位というユーザーの高度なニーズに応えるハイエンドマシン『YMC430 Ver.Ⅱ』を展示したが、お陰様で高い評価をいただいている」と話す。このマシンの特長は、全軸(X・Y・Z)高速リニアモータ駆動に加え、高剛性をもたらすシンメトリカルフレーム構造、そして経験と技術に培われた先進の熱変位対策だろう。「極めて高い精度を確保する技術が詰まっている」としているだけあって、安定した高精度加工を維持するための技術に注目したい。
リニアモータ駆動採用で実現したのは高精度X-Yテーブル。ベッドの中心部・低位置に設置された移動体は低重心構造により高速移動時の反力よる振動を抑え、高精度加工を実現している。また機体温度制御システムも優位性のひとつだろう。これはコラム内部、スピンドルヘッド内部、X・Yテーブルなどの機体各所に温度制御された専用の熱交換駅を循環させることで各軸の熱変位を低減させる仕組みである。特にコラムは前後左右対称のシンメトリカルH形形状で温度変化によって生じるコラムの歪みを抑制している。オプション(+RT10)でDDモータ駆動の高精度傾斜円テーブルをドッキングすることもできる。ワンチャッキングでの多面割り出し加工はもちろん、高い追従性が必要な同時5軸加工にも対応し、バックラッシュのない高速・高精度な位置決めを実現した。安田社長は、「多種多様化する次世代ニーズに合致したソリューションを提供し、加工現場に貢献したい」としている。