国際ウエルディングショーで見た! アマダ、ダイヘン、不二越のココがすごかった!
溶接に関連したあらゆる技術、製品、情報が一堂に展示される「国際ウエルディングショー2014」が去る4月23日(水)~26日(土)までの4日間、東京ビッグサイトで開催された。そこで、今回、注目企業3社(アマダ、ダイヘン、不二越)を特別レポートする。
さらに加工領域を拡大するアマダグループ
現在、金属加工機械の総合メーカーとして加工領域を拡大しているアマダグループ。
積極的な世界展開を進めてきたミヤチテクノスが4月1日、アマダミヤチに社名を変更し、今回の展示会では合同でアマダグループが持つ溶接技術の総合力を訴えた。
「それぞれ得意な分野が違い、“レーザ溶接・加工技術”と“抵抗溶接技術”を合わせ持つという双方のシナジー効果に期待がもてます。また、今回自社製発振器を搭載したファイバーレーザ溶接システム『FLW-4000MR』は段取りレスでの加工を実現するとして注目していただきたい」と話すコーポレート・コミュニケーション部門の山下佑介氏。
さて、このファイバーレーザ溶接システム『FLW-4000』だが、4kW発振器を搭載し、3次元スキャニングによる高速リモート溶接が可能である。また、光学系とロボットの動作を強調させ、2台のポジショナーと走行台車で2種類のワークを連続溶接することにより、マシン停止時間を削減し、段取り時間レスでの加工を実現するというもの。
『FLW-4000MR』には、新しいテクノロジーが搭載されていた。
●高速溶接
ガルバノススキャナーヘッドにより高速溶接が可能。長焦点距離と大気中溶接により、加工対象から離れて溶接するためワークとの干渉を回避。
●高出力レーザ溶接
自社製4kWファイバーレーザ発振器搭載、高出力CW/パルス溶接が可能。
●効率的な加工を実現
2台1軸ポジショナーと走行台車にして、ワーク搬入出とワーク回転を自動実行し、効率的な加工を実現。段取りエリアにおける作業車の安全を3系統のセンサーが監視し、安全を確保する。
なお、同社では業界最大規模のプライベートイベント『AIF2014』を本社ソリューションセンターにて5月17日(土)~6月14日(土)までの毎週木・金・土の13日間と、海外からの来場者を対象にした6月19日(木)~28日(土)の木・金・土にて開催する。期間中の来場者数は国内外から2,200社、5,000名を予定している。
独自開発の『Welbee』があらゆるシーンで大活躍! ダイヘン
「新たな溶接時代の幕開け」というキャッチコピーのもと、大々的に展示していたのは、溶接制御LSI『Welbee』。超高速サンプリングされた溶接電流・電圧を忠実にフィードバックし、緻密な波形制御が可能となり高精度・高品質溶接を実現した製品。さらにUSBやLANによるスマートな溶接管理も可能となる。
「独自開発している『Welbee』は革新的。全ての電源に搭載している。今のところ、CPU性能を上げる以上に溶接性や使い勝手も含めて好評を得ています」と話すのは、藤田雅成 メカトロ事業部企画部参事。
『welbee』の特長は低電流域のみならず中高電流域でのスパッタを大幅に低減し、生産性を向上させていることだ。発生するスパッタが小粒であるため母材や治具への付着が低減、この効果によりスパッタ除去工数が大幅に削減され、煩わしいノズル清掃回数の減少に繋がるわけである。
IT化による品質管理と拡張性にも注目したい。USBポートを標準搭載し、“溶接条件目盛り機能”の編集や、バックアップをパソコンで容易に管理することができるのだ。さらに、拡張ボードを搭載することで、USBメモリやネットワークを介して詳細なデータを大量に収集できるようになり、トレーサビリティによる品質管理の向上やトラブルシューティングに活用できるメリットもある。
この製品のチップを開発したのは田中良平技術開発本部企画部 通信技術開発部部長。なんとシリコンバレーに駐在していたという。
「『Welbee』はフルデジタルの制御をする。市販のチップだと応用範囲が限られてくる。本当にやりたい溶接の調節ができるデジタル制御を実現するには独自のLSIをつくらなければならなかった。シリコンバレーに駐在することにもなって、そこのデザイン会社と一緒に設計をして溶接機のやりたい制御のロジックを自分たちでつくり、中に組み込んで、溶接専用の制御ができるコントローラを内蔵させたんですよ。面白いのは、シリコンバレーにいたデザイナーたちは元インテルとかIBMの人達が集まっていたことです。刺激になりました」(田中部長)
「以前、PCに“インテル入ってる”の台詞のCMがありましたが、溶接機に“Welbeeチップ入ってる”が、弊社のウリになります。開発者の頑張りがあってインテルのことのようなことがダイヘンとしてもできたわけなんですよ」(藤田参事)
驚異の速度を誇る不二越
創業より培ってきた工作機械の自動化技術と油圧制御技術で世界中のものづくりの現場から高い評価を得ている不二越。同社のロボットというと、“非常に速い”ことが特長だが、「人気のスポット溶接ロボット『SRAシリーズ』が従来比で約3割スピードアップしました。お陰様でラインの生産性が著しく上がったと評判です」と話す国崎 晃 ロボット事業部ロボット企画部長。同社のSRAシリーズは2011年、日刊工業新聞社主催の10大新製品賞を受賞した製品でもある。今回はさらにバージョンアップをして新しく『SRA-Hシリーズ』として登場した。
新製品の『SRA-H』は中空構造のアーム内に溶接ケーブル・ホース類をスッキリと内装したケーブル内蔵中空アームが特長。ケーブルの飛び出しによる周辺装置との干渉を回避するので、取り回し配管を気にする必要がない。
国崎部長は、「スポット溶接ロボットで中空を出すというのは新しい考え方だと思っています。ケーブルはブラブラすると断線する可能性がある。シミュレーションも優位性のひとつで、オフライン教示の精度も向上しました。ロボットの動きはシミュレーションができますが、ケーブル等のブラブラした動きはシミュレーションができません。ケーブル内蔵型の『SRA-H』はブラブラする配線がない分、溶接ケーブルを含めたシミュレーションが可能なのでオフラインシ教示精度が上がるのです。しかも動作が速く、シェアもうなぎ登りです」と自信たっぷり。
軽量、高剛性、高速制御技術を進化させ、クラストップレベルの高速スポット溶接動作を実現している――とうたっているだけあって、そのスピードの速さには目をみはるものがあった。「ロボット作業のサイクルタイムを最短に」という開発者の思いがつまっているようにもみえる。
「使いやすさと高い信頼性を目指している」という国崎部長が次に説明してくれたのは、『ティーチペンダント』。画面をタッチパネルにし、タブレット型にしたのだ。もちろんワイヤレスである。ワイヤレスなので持ち運びも便利だ。
「ワイヤレスティーチペンダントというのは実はすごい技術なんですよ。非常停止ボタンを押したら“必ず作動する”というのは、なにがあっても保証されなければならないことなんです。ブレーキのない車は認証されないのと同じこと。無線なのに絶対に効く、という安全認証を出せているのはなかなかない。安全面も認証されたワイヤレスティーチペンダントはNACHIの強みです」(国崎部長)