日本メーカーの健闘目立つ「SIMTOS2014」を特別レポート!
会場となったKINTEX(Korea INTernational EXhibition Center)。ソウル市の北東約30kmの京畿道高陽市一山西区にある。KINTEX1は2005年に、2は2011年にオープンした。展示面積は1と2を合わせて108,483m2あり、これは東京ビッグサイトの82,660m2の1.3倍である。KINTEX1では主に工作機械、2では主に工具・測定機の展示を行っていた。写真上がKINTEX1、下がKINTEX2。
4月9日~13日の5日間、韓国ソウル郊外のKINTEXにてSIMTOS2014(2014 Seoul International Manufacturing Technology Show ソウル国際製造技術展)が開催された。
概要をレポートする。
(文・写真=下村栄司)
韓国の工作機械産業
韓国の工作機械産業の生産額は約5300億円(2013年)でドイツ、日本、中国、イタリアに続く5位である。世界における地位はここ数年5位の状態が続いている。
韓国の主要な工作機械メーカーはDoosan Infracore(デゥサン・インフラコア)、Hyundai Wia(ヒュンダイ ウィア)、Hwacheon(ファチョン)、S&T Dinamics、SMEC(サムスン工作機械)といったところであり、これらのメーカーは会場内でも大きなブースを構えていた。
SIMTOFの概要
SIMTOSは韓国最大の、世界でも4番目(展示面積での比較)の工作機械の国際展示会である。
今回の展示会は35カ国850社が出展し、展示面積は102,431㎡である。来場者5日間で100,351名であった。ちなみにJIMTOF2012の来場者は155,416名(重複あり)で、うち海外来場者は14,410名(全体の9.3%)。
今回時間がなかったこともあって、工作機械を展示しているKINTEX1の1~5ホールを視察した。韓国内のメーカーの展示が目立ったのは当然であるが、次に目立ったのは日本のメーカーであり、こちらの方が印象的だった。また、展示会名に「国際」を名乗っている割には日本以外の国(ヨーロッパをはじめ中国、台湾など)のメーカーの出展がほとんどなく、海外来場者の比率も1~2%と低い。この点は中国のCIMTの方がよほど国際的である。韓国内の需要が出展状況にも反映されているのかもしれない。
ところで筆者の勝手な疑問だが、この展示会名がなぜ”KOREA”ではなく、”SEOUL”なのだろうか?JIMTOFにしてもCIMTにしても、展示会名に国名が入っているのに韓国だけ違うのはなぜだろう?
韓国メーカーの展示について
《Doosan Infracore(デゥサン・インフラコア)》
韓国内では最大手のひとつ。工作機械の他に建設機械、産業用車両、エンジン等も手がけており、工作機械の社内シェアは約20%。低コストモデルの工作機械で数量を伸ばしている。
(写真右)多目的コラム移動型5軸立形マシニングセンタVCF350LSR。
ストローク X:3500/Y:850/Z:800でテーブルサイズは3500×870。テーブル固定でコラム側が移動するタイプ。左側がφ800のロータリーテーブル付きで5軸加工、右側が通常のテーブルで主軸チルトの4軸加工、それぞれ違うワーク・工程を加工できる。
《Hyundai Wia(ヒュンダイ ウィア)》
韓国内では最大手のひとつ。
1976年にキア自動車の100%持分投資によって設立されたが、後に現代グループに編入された。車部品事業と機械事業の2本柱で機械事業の社内シェアは33%。
(写真右)複合加工機だが、左前面のカバー部に大型の液晶パネルを組み込んでいる。未来的な感じがするが、右側の操作パネルが従来のままでデザイン的にはアンバランスな感じだ。
(写真下)5軸立形マシニングセンタ Hi-MOLD750/5A。
ストロークX:650/Y:765/Z:510、テーブルφ630×500、主軸15,000回転(HSK-A63)、早送り50m/min。金型用5軸MCと謳っており“Mold Package”をオプションで用意。詳細内容は不明。構造は最近はやりの立形5軸機にそっくり。外観デザインは森精機スタイル。
《Hwacheon(ファチョン)》
工作機械専業メーカーだったが、事業多角化の一環で2000年に自動車部品加工に進出。
機械のカバーデザイン等がヨーロッパ的に見えたが、欧米での評価を受けているとのことだ。
(写真右)パラレルメカニズム的なマシニングセンタだが、パラレルよりは剛性はありそうに見えた。デザインも操作盤もヨーロッパ的。
(写真上)パレット800□の横形マシニングセンタをカバーなしで展示。剛性があるところをPRしたいのか?。
X,Y軸はツイン・ドライブだが、Z軸がシングル・ドライブでセンタートラフではない。どうせならX軸をシングル、Z軸をダブルにしてセンタートラフにすれば良いのにと思った。
《S&T Dynamics》
工作機械以外に武器、風力発電、自動車部品、鋳造等手がけている。工作機械はギア研削盤、NC旋盤、マシニングセンタ、研削盤等いろいろやっているようだ。
《SMEC(サムスン工作機械)》
1988年にサムスン重工業として設立された。ターニングセンタ、タッピングセンタ、立形マシニングセンタ、ロボット等を手がけている。
日本メーカーの展示について
冒頭でも述べたように、地元メーカー以外唯一検討しているのが日本のメーカーであった。下の図は工作機械を展示している1~5ホールのレイアウトだが、水色で示した部分が日本メーカーのブースである。これ以外はほとんど地元メーカのブースである。
《ジェイテクト、三井精機工業、光洋機械工業》
TPA Engineering(JTEKT工作機械部門の現地法人)のブースにe300GAおよびGL4A-63E CNC円筒研削盤の2台を展示。三井精機工業と光洋機械工業はパネル展示。
《牧野フライス製作所》
DMG森精機、マザックに次ぐ展示スペース。a61nx、D300、放電加工機等を展示。ブース天井部分が展示会場の天井から吊り下げてられているため柱がなく、開放感がある。
DMG森精機
地元メーカー以外では最も大きなブースを構えていた。展示会によってブースの規模は違えどイメージは統一している。展示機はDMGの製品が圧倒的に多い印象。このブースもマキノと同じく「吊り天井」方式。
《ヤマザキマザック》
DMG森精機に次ぐ規模での展示。ブース前面にF1カーを展示するなど華やかなブースであった。ここも「吊り天井」方式のブース。はやりなのか?
《安田工業》
TRUE TRADINGのブースにYBM950VとYMC430の2台を展示。YMC430はAWC装置付で展示。
《ボールねじ・ガイド関係》
日本からはTHK(サミックTHK)、NSKが出展。台湾からはHIWIN(上銀科技)とPMI(銀泰科技)が出展していた。韓国内ではボールねじ・ガイドのメーカーは少なく生産の技術を持っているところはない(唯一TIC(大成精密くらい)。また、NC装置のメーカーもなく(出展機の搭載NCを見るとFANUCが圧倒的で、その他はHEIDENHAIN、SIMENS)、工作機械の要素については輸入に頼らざるをえないのが韓国の現状である。
工具メーカー・その他
工具、測定機器は工作機械とは別のKIMTEX2で展示していた。会場が離れており、時間がなかったため詳しく見ることができなかった。小職が回った時間帯が悪かったのか(初日の午前中)、会場には関係者と思われる人以外はほとんどいなかった。あとで聞いた話では週末にかけてここも賑わっていたとのことだった。
日本メーカーも検討。写真右:三菱マテリアル。写真左:手前がOSG、奧がMSTコーポレーション
手前がセコ・ツール、奧が大昭和精機
【参考資料】
「韓国の機械産業の構造及び現状の分析」Invest Korea
www.investkorea.org/ikwork/iko/jpn/com/
SIMTOS2014ガイドブック(PDF版)
http://c.simtos.org/file/1_SIMTOS2014_Guide_to_Visit.pdf