ニセモノづくりに注ぐ中国の情熱
色違いガンダムや可愛くないドラえもん、最近ではプラスチック入り偽装米が中国市場で出回っているとシンガポールメディアが報告したという、とどまるところを知らない中国のコピー商品。あの国のニセモノ開発にかける情熱は凄まじいものがある。ここまでくると、「段ボールとプラスチックが国を支えているのか?」と意地悪を言いたくなる。あっ、発泡スチロールもあったか。
製造業界でも日本の工業製品は非常に優秀だから目を付けられるのも当然だが、それにしても腹立たしい。できることなら海外の買い物客で賑わう銀座のド真ん中で宣伝カーのてっぺんに乗り「コピー商品撲滅運動」のたすきを引っさげ、ついでにバイトを雇って「経営やめますか? それとも泥棒をやめますか?」なんていうキャッチコピーのついたティッシュを道行く人々に配りたいくらいだ。
・・・とまぁ、怒ると眉間にシワが寄るので、これくらいにしましょう。
さて、これは某工作機器メーカーさんのお話なんだけど、ある加工現場からクレームの連絡が入ったことからニセモノが出回ったと発覚した。
「精度が全然出ないじゃねぇか」と、先方は大層ご立腹の様子。そりゃそうよ、良い精度を求めて品物を購入したんだもの、精度が出なきゃ怒るわよ。
高い精度に評価も高いこのメーカー、精度が出ないと言われるのは屈辱でもある。某メーカーは顧客から説明を聞いたうえで加工現場から製品を引き上げ、調べることにした。
製品が入っていた箱も自社のロゴがきちんと入ってある。印刷がちょっとおかしいとか、そんなこともない。製品の刻印もちゃんと入ってある。どこをどう見ても外見上は、おかしなところがひとつもなかった。
ところが、顧客の言うとおり精度が出ない。
「おかしいな・・・なんでだろう」
某メーカーは首をかしげた。私も以前、ここの工場や前社長さんを取材したことがあったけれど、このメーカーの品質にかける熱意は素晴らしいものがあった。世界中に流通しても自社製品に責任が持てるようきちんと製造番号もふってある。売りっぱなしにしないという意気込みを感じたものだ。
「これはおかしい」
ということで、製品を分解した某メーカー。驚きの声をあげることになる。
「あっ! これはウチのじゃない! ニセモノだっ!」
そこではじめて気付いたのだ。ある部分がちょっとヘンだった。分解してはじめて分かったという。メーカーが自社製品のコピーを見抜くまで時間がかかるくらい、そっくりだったのだ。製品の箱から刻印、なにからなにまで見事にコピーされていたらしい。
日本の工業製品は優秀なので、日本のメーカー名を出すと信用される。そこに目を付けた悪い奴。このようなことが当たり前のように起きている今日この頃。
さらに腹立たしいことは、コピー商品が見つかってバレた時の言いわけだ。
「うちらはそちらで作ってる製品よりももっといい製品をつくってやったんだ。どこが悪い」と、粗悪品をつくっておきながら悪びれることもなく、開き直ることだ。
人のモノもオレのもの、オレのモノも人のもの―――なんというジャイアニズム。
それにしても、これらのコピー商品の研究開発にかかるコストを考えると、独自の技術開発に注力してもよさそうなものなのに、創意工夫ってもんがまるでない。
・・・・というか、創意工夫が「ニセモノづくり」なんだもん。先述のプラスチック入り偽造米だって、こんな突拍子もないことを思い付くくらいなんだから、独自の開発に活用すればいいものを。とにかくあの国のニセモノづくりにかける情熱は尋常じゃない。なにかニセモノ作りに強い思い入れや美学でもあるのか。
とにかくこのコピー商品の数々、年々、匠のワザが生きてきているようで、見破るにも一苦労だ。
このような時流の中、バッタもん製品の横流しをしている輩の存在は見逃すことはできません。