オーエスジーが75周年記念のモニュメントを披露 込められた思いは「不可能なことはない」

昨年3月に75周年を迎えたオーエスジーが、このほど記念行事の一環としてオーエスジーアカデミー(豊川市一宮町)に建てられたモニュメントを記者団に披露した。同社の大沢輝秀会長は、「この場所は弊社の頭脳が集結する場所でもある。オリジナリティを持って果敢にチャレンジする精神を持って欲しいという願いも込められている」と話す。モニュメントを制作したのは、数々のプロジェクトをこなし、多くの受賞歴を持つ世界的な彫刻家の三澤憲司氏。お二人の出会いから、このモニュメントを制作した意図、込められたメッセージなどお話を伺った。

頭脳の集積地に込められた思い

写真左:大沢輝秀オーエスジー会長 右:三澤憲司氏
写真左:大沢輝秀オーエスジー会長 右:三澤憲司氏
グローバルテクノロジーセンター、デザインセンター、ゲストハウスが並ぶオーエスジーアカデミー。設計・開発・切削試験部門が集結した同社の重要ポイントに今回、地上7.5mの鎖が空に向かって垂直に立った。中央には直径2mほどのピカピカの円盤が配置され、観る者を圧倒する。また、鎖の最上部の接合は、工具メーカーらしく同社の工具による穴あけとめねじ加工が施されている。75周年事業ということもあって7.5mの高さを持つこのモニュメントは7月5日ぴったりに出来上がったが、三澤氏いわく、「出来上がりの日は偶然だった」と笑う。

タイトルは「宇宙と地球を結ぶ」(英語名Nothing is impossible~不可能なことはない)。
「宇宙船地球号が、人間の英知をつらぬき、夢と希望へ向かい、お互いが力強く組み歩んでいく姿をシンボリックに表している」と三澤氏。

大沢会長はこのモニュメントに「私は常々、社員にも新しいものにチャレンジする精神を大切にしてもらいたいと思っている。立つわけがない鎖がこうして立っているけれど、鎖も立つかもしれないという発想やオリジナリティを発揮して欲しいという願いがある。私自身も三澤先生のようにオリジナリティを持った方の刺激を受けていたい」と社員に向けてメッセージを送った。世界中の競争相手と勝負し、勝とうと思ったら世界中の猛者を追い越さなければならない。そのためには斬新な発想と個人のオリジナリティを発揮して欲しい、そんな願いもあるのだろう。

始まりはまねき猫 2人の出会い

巨大な招き猫が鎮座している
巨大な招き猫が鎮座している
オーエスジーアカデミーには、他にも様々なオブジェが並んでいる。昨年12月、最初にやって来たのは、巨大な招き猫だった。

「ある日、自宅で不整脈が出てしまって慌てて病院に行ったところ、“明日にでも手術をしましょう”ということになってしまった。“2、3日の余裕はあるでしょう”と聞いたら、医師が“そんなことはない。もし、今日の夜、明日、なにかあったら取り返しのつかないことになりかねませんよ”というので、手術をした。その先生に養効果の高い天然ラドン温泉が豊田市の猿投にある、と教えてもらい行ってみたらあの招き猫に出逢った。この猫がどうしても欲しくなって、持ち主に『なにがなんでも譲ってくれ!』と粘ってお願いしたんですよ。あいつ(招き猫)がここに座ってから、世界中のあちこちから、いろんな人が来てくれるようになった。三澤さんとも出逢えた(笑)」(大沢会長)

ファッション関係に従事され海外生活の長かった大沢会長の娘さんが帰国をして住んだところが三澤氏のアトリエの近くだったという縁もあって知り合った二人。

風で回転する石のオブジェ
風で回転する石のオブジェ
「“お父さん、三澤さんていう世界的に有名なおもしろい作品をつくっている方がいるよ”というんで、作品を見せてもらったら、常識人が理解できないものをつくっている。これは面白い! ということですぐに話を進めた。だけど、三澤さんは彫刻家だと思っていたら、油絵も描くというじゃないか。恐ろしい芸術家ですね(笑)」(大沢会長)

回転する石のオブジェも三澤氏の作品だ。タイトルは「誕生」。地球会社オーエスジーのシンボルイメージだという。上部の大きな白い石の部分が風の力でクルリと回転するのは、石と石の間には金属製のベアリング軸が組み込まれているからだ。

「この巨大な白い石は、シベックというイタリアの石で、作家ロダンが彫刻などに使用しているものです。現在はこれだけ大きな石の採取は難しく入手困難なんですよ」(三澤氏)

彫刻は叡智の集結

さて、この鎖のモニュメントだが、構造と構造が結んで立っている。鎖の真ん中はどうやって繋げたのか。

「それは秘密です(笑)。鎖はひとつですがあの中には大変な構造が入っている。重たいものだから、立った瞬間に崩れることがないようにしなければならないので、潜水艦をつくるような方が設計をする。つまり、芸術家というのは、いろんな方の叡智を集結しなければできない職業なのかもしれません。彫刻は技術の結晶です」(三澤氏)

三澤氏は、「現代美術の面白さは、「作品の存在そのものにある」と力強くいう。

「現代美術は、いくらになる、というものではない。移動したって売れないから売買の対象にはならない。そういうところが好きですね」(三澤氏)

自分で自分を楽しむという三澤氏。「一生を通して僕というオモチャを神様が僕に与えてくれたと思っている」と話す。

「僕が僕を楽しんでいる。だから僕にあれやれこれやれ、という僕が僕の中にいる。毎日そういう自分が楽しい。自分が面白いから自分がテーマ。なんだか幽体離脱をしているみたいですが、自分でも予測不能な部分があって面白い。自分を作り替えたりして飽きることもなく、永遠に続いている。もう、一生じゃ間に合わないと思う。3回くらい生まれ変わらないと楽しめないよ(笑)」(三澤氏)

そんな話をしていると、大沢会長が、「わたしは芸術のことは毎日考えられないけれど、商売のことは毎日考えているよ。こうしたらどうだ、ああしたらどうだ、インドをどう攻めようか・・とね」と笑った。

「大沢会長は芸術品が好きですが、おそらく脳を活性化して刺激をしていると思う。それが芸術作品を必要としている理由だと思います。それでなければ用のない人は買っても意味のないものです。絵画などは所有してくれるお客さんを選びます。いくら大金持ちでも、どういうわけかいい絵画が手に入らない人もいる。良い人格はもちろん、社会的な仕事をした方じゃないときちんとした絵画は入りません。作品は人を選ぶんですね。僕はそう思っています」(三澤氏)

「世界的な会社として売上高で勝負するのではなく、中身で勝負できるような会社を目指したい」とする大沢会長。今回、記者が感じたことは、三澤氏の作品通して伝えたかったことが、社員へ期待を込めたエールそのものなのかもしれないということだった。地から空に向かってまっすぐ伸びる鎖は、まさに目標に向かってブレずに頑張る姿そのものにも見える。

今度は80周年に向けてどんな展開が待っているか楽しみである。
これらの作品はオーエスジーアカデミー内のゲストハウス前で鑑賞することができる。

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