50年以上のノウハウを持つユキワ精工がコレットチャック製品を拡充! 新カタログは事例がたくさん詰まっている!
写真左=滝沢設計開発部部長 右=酒巻常務
50年以上の培われたノウハウを駆使し、新製品の開発や専用機の自社開発に注力してきたユキワ精工(社長=酒巻和男氏、住所:新潟県小千谷市千谷2600-1)。同社といえば、国内80%のシェアを誇るドリルチャックのイメージが強いが、このほど「コレットチャック製品を拡充する」と発表した。
同社の酒巻弘和常務は、「加工ワークを精密に掴みたい、ワークのクランプを自動化したいという需要が年々増加していることを受け、お客様の要望に応える形でコレットチャック製品の標準化を図った。長年蓄積された製作実績を事例として紹介する専用カタログを作成するなど、ニーズに合ったコレットチャックをお客様へ提供できるよう製品を拡充します」と意欲を見せる。原理は簡単だが、つくる過程において非常に微妙なサジ加減がものをいうコレットチャックの設計開発に携わった滝沢功一設計開発部部長もユキワ製品の特長を「長年蓄積されたノウハウを基にした製品のつくりこみ」だと話す。現在、勢いのあるユキワ精工を訪ね、お話を伺った。
コレットチャックは奧が深い
コレットチャックは加工時にワークを固定する、あるいは切削工具を固定するための消耗工具だ。工作機械や搬送機などの部品の一部であり、それらの機械に組み込まれて使用される。コレットとチャックユニットで構成されており、ワークはチャックユニットに組み込まれたコレットが開閉することでワークの着脱と固定を行うものだ。何度も何度も開閉されるわけで、精度が悪いと壊れやすくなる。滝沢部長はユキワ製品の優位性について、「海外製のすぐに壊れる製品とユキワ製品は、見た目だけではほとんど区別がつかない。ところが熱処理など製品をつくるプロセスが違う。製品をつくる際に鉄の棒から削りに入って熱処理をするけれど、削りが悪いと内部応力といって鉄にストレスがかかる。例えば極端に速くに削ると鉄の内部に残留する応力があって熱処理後にはじけてしまう。製品が外力をかけないのに突然壊れたりするのも、この内部応力の仕業によるところが大きい。だから熱処理をすると、その加工がうまくいったかすぐに分かる。ユキワ独自のノウハウはこの難しい内部応力を緻密に計算しながら製品をつくりこむことにある。見た目はただの鉄の塊ですが、この1本の鋼材の中で硬度を変えるという繊細な過程を経て、丈夫で信頼性の高い製品づくりをしているんですよ」と、ワークを固定するという単純な原理の中にも複雑で高度な同社独自の製造プロセスがあるのだ、と説明してくれた。
顧客の要求に応える基は4~5万点の図面
相当数のラインナップを誇るユキワ精工だが、「弊社は標準もつくりますが、実際に受注するときは標準じゃなくてもいい。細かいことは相談に乗ります、というスタンスです」という酒巻常務。同社はユーザーの要望を第一に、柔軟に対応するという姿勢を貫いている。なぜ、こんなにフレキシブルに対応ができるのかと酒巻常務に尋ねたところ、「50年以上も培われた技術の裏に現在、4~5万点ほどの図面がある。この図面の数々には50年以上もお客様とやりとりした形が残っている。行き違いがあったり、苦労した部分もあったりして、その都度、先人は問題をクリアしてきたんですね。今は電子化されているから保管もラクになりましたが、これらの蓄積こそ、現在、われわれがお客様のニーズに応えられるという信憑性を示す材料にもなるのだと感じている」と返ってきた。
さて、コレットチャックといえば、本来、細かく打ち合わせをしないと製品がまとまらないものだが、実はここに高いハードルがあるのをご存じだろうか。この製品は、秘密事項の多い自動車関係の仕事を例にとると、“なにを掴むか分からないモノ”をつくらなければならない。新製品の試作だと図面すら来ないのがほとんどなのだ。こうした場合、滝沢部長は「ヒヤリングして聞きまくるしかない」という。これは、なかなか難しい。先方は説明のためにイラストを持参してくるが、イラストだって人によっては得手不得手もあるだろう。話し下手なユーザーも中にはいるかもしれない。「こちらはどこに使われているか分からないものをつくらなければならない。持参されるのもイラストのようなものですが、ここに4~5万点の図面を誇るわれわれのノウハウが活かされるわけです。曖昧なものも細かくヒヤリングすることで形が見えてくる。そこから“こんなのどうですか”という提案もできるし、先方からも“ここをこうしてほしい”と要求を聞くことができる。そうすると、また新しい図面がひとつ完成する」(滝沢部長)
コレットチャックで加工を制す
酒巻常務はコレットチャックのメリットを「スクロールチャックに比べ汎用性は低いがジャストサイズでワークを掴むことができる」点を挙げた。「弊社A級で8µm、スクロールチャックはJIS規格で40µmと精度・繰り返し精度の良さに加え、ワークのクランプは点アタリではなく、ワークを包み込みように掴むので、ワークに傷がつきにくいとこが魅力」だという。もうひとつ、コレットチャック製品を拡充した同社の、“コレットチャック専用カタログ”に注目したい。
これは、「お客様に様々な形状のコレットチャックがあることを認知してもらいたい」という願いのもと、長年にわたる製作実績の中から代表的な事例をまとめた事例集を専用カタログとして作成したものであり、ページをめくるとちょっとした技術指南書にもみえる。
滝沢部長は、「このカタログは主にコレットチャックを使う設計の方に読んでいただきたい」とのこと。「このカタログはコレットチャックを使う側の視点に立って作成されたものであり、内容を充実させるため、設計や製造部隊を合わせて6~7人で組んだプロジェクトのひとつだった」と教えてくれた。
このカタログはユキワのコレットチャック技術が集結した内容の濃いカタログだということが中身を拝見すると分かる。ちなみにこのカタログは、ダイジェスト版とさらに詳細なものが記載されている2種類がある。
また、今回の拡充に当たって、コレットチャック(外径把握用、内径把握用)を標準化している。『手軽に使えて、高精度』の手動コレットチャックとして、外径把握用のAシリーズ、内径把握用シングルテーパ型のBSシリーズ、内径把握用ダブルテーパ型のBDシリーズの3シリーズを本年7月から販売しているが、(*関連記事↓)http://seizougenba.com/node/4544
標準サイズは在庫を持ち、即納体制を取るという。サイズ違いについても特殊対応にて製作する。コレットチャックは既存の円テーブルと組み合わせて使用できることも嬉しい。エアシリンダーを取り付けることで、ワンタッチでワーク交換が可能だ。これについては酒巻常務も「これは重宝しますよ。コレットが中に潜っているので突き出しもほとんど無い。わざわざスクロールチャックのように鉄の塊を付けるよりは断然いいと自信を持っていえます」と太鼓判を押す。
ユキワ精工のコレットチャックは、同社がドリルチャックをつくるための社内設備を自動化するために設備として使ったのが始まりだ。その延長線上に円テーブルがあり、長年のノウハウをもとにコレットチャックを製品化していった。同社のコレットチャックは使うユーザーの視点に立ってつくられており、面倒なことを豊富なノウハウで払拭する力を秘めていたのはこういった歴史があったからであり、長年培われた4~5万点の図面が高い信頼性を物語っている。同社のコレットチャックはユーザーの意向を速やかに汲み取る工夫が満載だ。