碌々産業と由紀精密が共同開発 第一号機を初披露
両社は昨年9月にデスクトップ微細加工機ブランド「VISAI」の立ち上げとマシンを開発することに合意し、お互いのノウハウを結集して開発を進めてきた。「VISAI」は“微細で最小限”という価値観を実現するため、両者のエンジニア、デザイナーのチャレンジによって誕生したブランドである。想定しているターゲットは、機械式精密高級時計の部品を加工する職人、航空宇宙機器向け精密部品の開発にいそしむエンジニア、そしてこれまで設備規模の問題もあり高精度マシンの導入が難しかった一般趣向分野への展開も視野に入れている。
数ミリサイズの製品をつくるためのマシンが大きいことに疑問
開発に至った背景だが、超精密部品を加工している由紀精密が、数ミリサイズの製品を作るためのマシンが大きいことに疑問を持ったことがきっかけだったという。由紀精密の大坪社長は、「コンパクトで省エネ、数値制御による複雑な形状加工もできる“美しい工作機械”が欲しかった。①小さく、②高精度、③CNC、④満足感の得られる美しさの4要素が揃ったマシンは世の中にはないと分かり、企画した」と話す。そこで大坪社長が目を付けたのが、名機「MEGA」をはじめとした高精度微細加工分野を対象とした微細加工機の製造を手がける碌々産業だ。「小さなパーツは小さな加工機で作りたいという強い思いがあり、声をかけた」とのことで、由紀精密が2006年に導入した碌々産業のマシニングセンタは、「競争力の源」と大坪社長も絶賛している。
ところが――。剛性を考えると、どうしてもマシンが重くなる。碌々産業の海藤社長は開発時の苦労について、「長年培った微細加工機のノウハウをもとに、碌々の微細加工機を極限まで小さくすることは工作機械を知り尽くした私たちにとっても大変困難なものだった」と振り返る。
「もちろん難しい課題だったがイノベーションを生む可能性を秘めたやりがいのある挑戦だった。新しく誕生した「VISAI」は、まさに美しさも兼ね備え、“機械を操る悦び”と“モノをつくる悦び”に加え、“機械を所有する悦び”を与えてくれるマシンになった」(海藤社長)
高さ300mm×幅800mm×奥行き560mm、機械質量は40kg、制御装置質量(制御盤、操作盤、モニター)も40kg。総質量は80kgにしかならないこの卓上マシンだが、省エネであることも注目したい。なんと、このマシン、家庭用の電気で動くのだ。剛性が気になるところだが、リブで補強し剛性を保っているという。こうした技術を盛り込みながら、今回、デスクトップでミクロン単位の加工精度を実現していた。
画期的だ、と感じたのは、一般趣向分野への展開も視野に入れていたことだ。
流通しているものを調達するより、部品などを自分でつくり組み立てていく悦びを感じる人々が確実に存在する。そういったマニアックな方達の欲求を満たす工作機械をつくったことの根底には斬新な発想があった。大人の遊び心をもくすぐる「VISAI」ブランドの展開が非常に楽しみである。