碌々産業が「AFTER JIMTOF2014~微細加工技術研究結果報告会~」を開催 展示サンプルの種明かしを披露

あいさつする海藤社長
あいさつする海藤社長
碌々産業(社長=海藤 満氏)が12月11日(木)~12日(金)の両日、「AFTER JIMTOF2014~微細加工技術研究結果報告会~」を開催し、JIMTOF2014の会期中、同社ブース内で展示していた微細加工技術のつまった展示サンプルの種明かしを説明した。

開会のあいさつで海藤社長は、日頃の感謝を述べたあと、「JIMTOFではたくさんの加工サンプルを出した。今回、そのサンプルの加工技術について報告をさせていただきたい。JIMTOFでは“四位一体のブレークスルー”をテーマに展開し反響を得た。四位一体というのは、微細加工機と加工をするための工具、工具を走らせるCAM、そして環境。これらをトータルで考えないと究極の微細加工は出来ないと考え、今回、加工技術まで突っ込んで、皆様の加工に対する解決策のご提案をしていくというスタンスで頑張っている」とあいさつをした。

「AFTER JIMTOF2014~微細加工技術研究結果報告会~」をレポートする。

前回のJIMTOFと比較して

今回のJIMTOF2014で碌々産業が展示していた冷間鍛造金型だが、前回の展示会(2012年)のものと比較する。材質:超硬合金VM-50、硬度:89HRA(73HRC相当)、ワーク寸法:50×50×30mm、切削剤:不水溶性切削剤エアブロー。

JIMTOF2012では、荒加工:φ4電着砥石9本、中仕上げ加工:R2、R1ダイヤコート3本、仕上げ加工:ダイヤコート1本、加工時間は約43時間。気になる金額は16万円。

これがJIMTOF2014では、荒加工:φ電着砥石6本、中仕上げ加工:φ2、R1電着砥石3本、仕上げ加工:鏡面加工用工具1本。加工時間は、約21時間。金額は5万円。

JIMTOF2012年では加工時間が約43時間だが、そのうち30時間は荒加工の時間だという。そこで今回のJIMTOF2014では、碌々独自の「PR-MILL」を使用し、従来、30時間もかかっていた荒加工を1時間に抑えることができ、加工時間を43時間から21時間に抑えることができた。工具も押さえることができている。

従来の薄切込み・高送りによる高速加工は、工具の先端のみで切削するため能率が悪く、先端に摩耗が集中することで工具寿命も短くなってしまう弱点があった。
その弱点を克服した荒加工用をメインとするCAM「PR-MILL」だが、特長は独創的なアルゴリズムで工具の側面を有効的に使用する軌跡を作成し、工具にかかる切削負荷を計算して最適な切り込み制御ができることである。これらのメリットが最短時間での除去加工を可能にし、大きな経済効果を生むとしていた。

ピカピカの鏡面
ピカピカの鏡面
他にも鋼材への鏡面加工について説明があった。
面祖度は一刃送り量と加工ピッチで決まる。ピッチを細かくしても鏡面にならないので、工具の重要性が問われる。同社では、鋼材への鏡面加工に「Luminousシリーズ」を提供している。この工具の特長は、①刃先に特殊処理を施し鏡面精が向上、②強いねじれ刃にすることで切削性、切屑排出性能向上、③h4シャンクでUNO(MST高精度ホルダ)に対応、④有効長、刃長を短くすることで剛性を向上、⑤ショートシャンク採用により、焼ばめ時に切断しなくていい――である。今回は新しくなった「Luminousシリーズ」の開発について説明があった。高い対摩耗性と潤滑制を備えた新コーティングと、刃先処理のチューニングを見直している。

1ミクロンのものは±0.5℃でも精度不良が起きる! 超精密恒温室の開発

工場見学ではきさげ作業をみることができる
工場見学ではきさげ作業をみることができる
時代はさらなる高精度加工へ―――。
スマホもどんどんしており、カメラモジュールの画素数も800万画素から1300万画素にアップし、位置精度要求も1µmから0.5µmまで高まった。これらのニーズを満たすためには、「温度環境を考慮することが重要である」と考えている同社には、精密微細加工における高い安定性と高い精度を維持し、高精度化するニーズに応えるための設備「J-BOX」がある。鉄は1℃変われば10µmも変化する。

同社では温度環境について相当なこだわりがあるが、そのきっかけは、過去にレンズホルダ金型加工の16個が失敗してしまったことにあった。加工したワークに同心度1µmオーバーが発生してしまったのだ。なぜ、こんなことになったのか調べた結果、昼休みの時間帯に問題が起きていたことが分かった。つまり、社員の多くが工場内から出てしまったために起きた温度変化が精度不良に繋がったという。「1µmのものは0.5℃でも精度不良が起きる」ことを突き止めた。そこで、海藤社長は、「究極の微細加工を極めるためには±0.1℃の超精密恒温室をつくる必要がある」と考え、「J-BOX」が誕生したとのことだった。

加工環境を“超精密恒温状態”にすることが必要になることから設置した「J-BOX」だが、
箱の中の箱をイメージして欲しい。「J-BOX」内は、±0.1の極めて安定した温度環境を提供し、超精密恒温環境により、さらなる精密微細加工を可能にしている。しかも無人環境による加工を実現するため、遠隔操作盤による加工開始/停止、CNC画面の確認、サウンドチェッカーによる加工モニタが可能になっているという最先端の設備である。この中に設置されている加工機は超硬精度高速微細加工機「Android」だ。海藤社長いわく、「この中に人間が1人入ると0.1℃変わる。人間が出て40分後に温度が安定することが分かった」とのこと。こういった徹底した設備もあって、位置精度±0.5µmを達成し、3回加工をしても安定性を実証している。

工場見学の様子
工場見学の様子
同社の営業技術課は10名在籍しているが、海藤社長は、「微細加工に真剣に取り組んでいる社員が10名いると思ってもらえると嬉しい。トライアンドエラーを繰り返しながらも研究開発に注力し、真の四位一体になるよう努力していく所存である。今後もお客様の困った、を解決するために邁進していく」としていた。

なお、同社では2015年1月14日(水)~16日(金)まで開催される「インターネプコンジャパン」に出展する。この展示会にて、国内外に対して最新鋭の微細加工機をはじめ、「小径穴開け加工のBreakthrough」をテーマに「小径穴開け加工のバリレス加工サンプル」を展示する。出展小間番号は東6-13。

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