年頭所感(日本工作機械工業会/日本工作機器工業会/日本フルードパワー工業会/超硬工具協会/日本工具工業会)

「産学官の英知と力を結集して先端技術の研究や規格・標準化に取り組む」
●日本工作機械工業会 会長 花木 義麿

2015年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

昨年の工作機械業界を取り巻く受注環境は、月を追うごとに回復基調が強まりました。年間受注額は、当初見通しの1兆3,000億円を大幅に上回り、更には、10月に上方修正した1兆4,500億円を超え、1兆5,000億円程度の水準に達したものと見込まれます。これは2007年に記録した1兆5,900億円に次ぐ、史上2番目の高水準となります。世界市場における日本の工作機械の高いプレゼンスを示すことができたと思います。

本年の工作機械受注動向については、アメリカの金融緩和縮小、新興国経済の成長鈍化、地政学的リスクの経済活動への影響など、一部には懸念材料もみられます。しかしながら、米国を中心として海外の主要市場において、需要は底堅く推移していくと見込まれます。国内の設備投資は、為替の安定による企業収益の改善に加え、ものづくり補助金や投資減税など政府の諸施策の後押しを受け、老朽設備の更新需要の顕在化により堅調に推移すると見込まれます。

このような背景を踏まえ、本年も昨年同様、高水準の受注が見込めるものと思われます。
当工業会は「工作機械産業ビジョン2020」で示した、①産学官連携の強化、②標準化戦略の強化、③JIMTOFの求心力強化、④人材の確保・周知策の強化等、中長期的な視点でわが国工作機械産業が克服すべき諸課題に取り組んでおります。これらを具現化していく日工会の事業活動は関係各位のご尽力により大きな成果を上げつつあります。

本年はこの活動をさらに強力に進めて参ります。例えば、産学官の英知と力を結集して先端技術の研究や規格・標準化に取り組む「加工システム研究開発機構」の立ち上げを図ります。また、将来、拡張が予定されている東京ビッグサイトで開催する次回JIMTOF・Tokyo2016に向けて、日本の優れた工作機械を国内外へ、より大きくアピールできるよう準備してまいります。そして、本年10月に開催予定の工作機械トップセミナーにおいても、学生の皆さんに工作機械産業の魅力を大いに発信していきたいと思います。

日本の工作機械産業が、世界のものづくり産業の繁栄に貢献していく重要な役割を果たすべく、これら諸活動に鋭意取り組んで参ります。関係各位にはご指導、ご鞭撻と更なるご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2015年が皆様にとって、大きな飛躍の年になることを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

「真に強いものづくり立国を目指していく」
●日本工作機器工業会 会長 寺町 彰博

あけましておめでとうございます。
年頭に際し、所見を述べさせていただきます。

昨年の世界経済は、前半は先進国の一部で弱い動きが見られ、新興国も以前と比較し成長が鈍化したものの、全体としては年の後半にかけて緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、東欧におけるウクライナ問題、中東におけるイスラム国の台頭などの地政学リスクが顕在化し、世界経済に横たわる不安定な要素が改めて浮き彫りとなった1年でした。

日本に目を向けますと、消費税増税後の需要の落ち込みが想定よりもきつかったものの、為替が円安に推移するとともに政府の各種施策が打ち出される中、企業業績は軒並み好調な結果となったほか、設備投資減税などの各種施策が奏功し、資本財分野の需要が堅調に推移しました。さらに、日本人が青色発光ダイオードの発明と実用化に貢献した業績が認められ、ノーベル物理学賞を受賞し、日本の技術力の高さが改めて世界で評価されるなど、日本の製造業にとっても大きな弾みとなった年となりました。

しかしながら、リーマンショック以降、アジアを中心とした新興メーカーが台頭する中、セットメーカーのみならず、部品メーカーである我々も厳しい競争の波に晒されています。彼らの成長以上に我々も成長を志向しなければ、現状を維持することすらままならないという現実と正面から向き合い、成長に向けた努力をひたむきにすべき時といえるでしょう。

そのような中でも、我々には改めて見直すべき日本の強みがあります。そしてその強みをさらに磨き、活かしていくことが重要です。すなわち、日本の製造業の強みである「ハイクオリティ」、「ホスピタリティ」を兼ね備えた製品を、いかに「リーズナブル・プライス」で実現していくかが、日本の製造業がグローバル競争の中で打ち勝っていくための鍵となるのです。そして、これらの強みを失う事なく、日本の欠点であるスピード感の無さ、脆弱な企画力、低生産性を徹底的に改善し、改めて真に強いものづくり立国を目指していきましょう。

従いまして、当工業会といたしましても、会員の皆様とともに強い信念を共有し、日本の製造業の発展に寄与できますよう、積極的な活動を展開してまいる所存です。

最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

「一歩先を見据えた価値観の創造」
●日本フルードパワー工業会 会長 梶本 一 典

新年あけましておめでとうございます。平成27年の年頭に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。

新年を迎えたことで、あの東日本大震災から、早4年が経とうとしています。遅々として進まなかった復旧も、官民一体となった復興活動により、新しい東北の創造に向けた取り組みが着実に進み出しました。

一方、福島第一原発については、廃炉に向けて、乗り越える壁が非常に高く、現有技術の粋を集めても、長期化は避けられない状態です。困難な課題が多々残されていますが、将来のためにも、一歩一歩前進することを願っています。

さて、昨年のわが国の経済環境は、4月に実施された8%への消費税引き上げによる個人消費の落ち込みが、想像以上に大きく、第1第2と2四半期続けてのマイナス成長となりました。その結果、財政再建のために、政府が最低限必要と考えていた消費税10%への引き上げは、一年半先送りされました。

アベノミクスの成長戦略として、数々の第三の矢が放たれ、昨年10月に行われた日銀の大胆な金融緩和策第二弾も功を奏し、為替は円安に、株価は株高にそれぞれ大きく動きました。これらフォローの風も手伝い、グローバルに事業を展開している大企業の多くは、過去最高の業績を上げつつあります。

その反面、円安により原材料や燃料など輸入価格が上昇し、中小企業や家計には負担増となる影響もあり、賃金アップが物価上昇に追いついていない状況も起きています。そのような中、消費者は、長年続いているデフレ圧力や、100年に一度と言われたリーマンショックの影響が残るなどして、消費行動が慎重になっていると言わざるを得ません。

こういったことからも、今年は景気を好循環させ、消費者マインドを改善させるために、節目となる大切な一年と言えます。法人税引き下げや、投資を促進させるための税制の改革、女性活躍を主とした雇用政策、地域経済活性化による地方創生などの施策を早期に実現させ、デフレを脱却することにより、日本が再興されることを期待しています。

さて、私たち日本フルードパワー工業会は、昨年9月に3年ぶりに第24回IFPEX2014を開催しました。「超える技術、価値ある未来のものづくり」をテーマに、会員各社による新たな提案やデモンストレーションなどを通して、フルードパワー産業の新技術や新製品を、あらためてアピールすることができたと思います。

また、油圧、空圧とならび、新しい力として注目される水圧システムにもスポットを当てたり、産学連携コーナや学会セミナーを充実させたり、海外メーカの出展など、フルードパワーの新たな魅力も発信することができました。

当業界の国内需要は、公共事業や復興事業による需要の押し上げに、産業競争力強化法による設備投資の増加も加わり、油圧機器と空圧機器ともに前年対比5~10%伸びております。一方外需についても、一部の新興国では経済が停滞しているものの、自動化のための投資が本格化してきた中国市場や、経済回復が続く北米市場、新たに期待される中南米市場やアジア新興国など、明るい兆しが見えてきています。

私ども日本フルードパワー工業会は、長きにわたり築いてきた技術と製品を通して、グローバル社会に貢献することが求められています。国内では、海外工場に負けない生産効率の追求、人口減少による労働力不足の解消、女性の社会進出に欠かせない安全と安心の提供などに寄与することができます。そして、地球温暖化や大気汚染など、地球規模で早急な対策が必要な環境保護につながる取組みも、私どもがグローバルに貢献できるテーマだと思います。

また、世界経済のグローバル化がさらに進む中、TPPなどの経済連携もますます拡大し、我々を取り巻く環境は、大きく変化してきます。工業会としても、日本の政府機関や現地の工業会団体と連携し、各国の市場動向やリスクの把握を行い、タイムリーに情報提供することで、会員企業の海外事業展開をしっかりと支えて参ります。

昨年は青色発光ダイオードの開発により、3人の日本人がノーベル物理学賞を受賞されました。世界中の人たちが幸せを感じる素晴らしい開発だと思います。日本フルードパワー工業会も、世界中の人たちの暮らしを豊かにするために、ありとあらゆる所で役に立てるよう、さらなる努力をしたいと思います。

2020年には東京五輪が開催され、2027年にはリニア新幹線が開業します。世界が注目するこれらの大きな事業は、日本経済に、必ずより良い影響を与えるはずです。この千載一遇のチャンスを生かし、私たちの子孫が安心して暮らすことのできる国を築くことが、我々に与えられた使命ではないでしょうか。

日本フルードパワー工業会として、皆さん一人一人の力をお借りしながら、一歩先を見据えた価値観の創造に努めて参りたいと思っています。今一度、皆様方に更なるご協力をお願いいたしまして、新年のご挨拶とさせて頂きます。

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

「Made in Japanのものづくりの発信が大きなうねりを起こせる」
●超硬工具協会 理事長 増田 照彦

予想を上回るジムトフ来場者数の余熱と工作機械業界の上方修正発表の熱狂で幕を閉じた2014年でした。

いろんないいこと、忘れたいことをリセットしてくれる仕掛けとしての年末・年始。区切りが有ることを上手く活かしてお屠蘇をいただく。すべてのことは旅の途中、プロセスであります。常にどんな状況の下でも日々是好日、朝ごとに 喜びの朝 幸せの一日 と思える心。その積み重ねであります 日々が一生。

それでも新年の凛とした空気は特別です。

咳払いをひとつして、お屠蘇の杯を傾けます。新年の余裕からか普段とは違った心持ちで一人思索を巡らせながら、言葉遊びを致します。

「なにしに来たの?」

この疑問文は、ときと場合と語調によってまったく違う意味合いになります。

「猪」は場所によって「いのしし」になったり「ぶた」になったり。
「やさし」は時代によって「恥ずかしい」であったり「優美」になったり。
お酒は「百薬の長」ともてはやされたり、「命を削るかんな」と毛嫌いされたり。
鍼は、身体を弛緩させたり、緊張させたりで気の流れをコントロールします。

お屠蘇を重ねすぎて、すでに話題が千鳥足になっています。
同じ言葉でも文脈によって、使う人によって、年代によって、聞く人によって変化します。これぞ生きている、ということでしょうか。

「柵」は「しがらみ」と読むのだと教わりました。
断るに断れない腐れ縁などマイナスのイメージが臭いたちます。
もうひとつの意味は、「雨風によって大木が流れくることがあり、その流木から橋を守る上流の杭のこと」だそうです。

平時のときは、穏やかな流れの中でいかにも役立たない木偶の坊。せいぜい藻が絡みつく程度の杭でしょう。ところが、ひとたび嵐になりますと木除け杭になり、身体を張って橋を守る、とても頼りになる蔭の力です。

伊勢神宮の五十鈴川をまたぐ全長100mの宇治橋をφ50cmの8本が「しがらみ」となってお守りしています。リスクヘッジの一種ですね。

すごい仕掛けだと思います。「しがらみ」にはそれがプライドでしょうし、宇治橋の橋げたはその存在をよく承知していて常に感謝をしているのでしょう。互いに敬愛しあって、生かされている。だから何千年も歴史が、伝統が繋がっているのでしょう。これは人間一人ひとりにも当てはまります。

新しい年2015年はそういった橋の命を預かるという気持ちで、相手になにも求めず、しかも思わず手を差し伸べたいという気持ちを頼りに、ものごとを進めたいと願っています。当然ながら、相当な覚悟が必要になると思われます。

それぞれが備えを万全にして、「流るゝ雲のごとく」の自然体で、「天にも地にも我一人 他にかわるものなし」のプライドをもって取り組むとしたら、それは、それは大きな流れになりましょう。

今年は超硬工具協会の理事長としては日本工具工業会殿との統合を是非とも実現したいと願っています。

ハイス、超硬と矢面に立つ材料で組織を分けてきましたが、実際のお客様はどちらの材料も用途によっては必要です。二つの組織が(というより会員各位が)融合し、学びあい、教え合い、情報を補完しあい、日本ならではのこだわりをきめ細かく発揮しMade in Japanのものづくりをもっともっと発信できたならば、大きなうねりを起こせると夢見ています。

慌てることなく、汗をかき、また汗を拭き取り、果て無き頂上に向かってご一緒に一歩一歩登ってゆきたいと思います。

「技術の素晴らしさを如何に伝えるか」 
●日本工具工業会 理事長 堀 功

みなさま明けましておめでとうございます。ご家族共々すばらしい2015年の新年を迎えられたことと思います。

昨年も広島土石流、御嶽山の噴火、また直近では長野北部の地震など自然災害の多い年でしたが、幸いにも会員各位の被害もなく正常な生産活動が行われたものと思います。

2013年に理事長に就任した際に、工業会の出荷高という数値にこだわりたい旨を申し上げました。2014年度の見通しは上期実績540億円、下期も546億円を見通し、2014年通期では1,087億円と前期比7.5%の増額となる予定です。4月の消費税増税による反動減による機械工具の出荷の落ち込みを非常に心配しましたが、好調な工作機械出荷や、航空機産業の活況にも支えられ、1,000億円の規模の維持ができることは、会員各位の努力の結果だと思います。

さて昨年開催のJIMTOF2014では、16万人を超える入場者があり、小間数の割り当てには制限はあったものの、日本の最先端の工具の開発技術を世界に発信することができたと思います。2年に一度のJIMTOFに向けて各社切磋琢磨の上に開発新商品を展示されており、日本の産業の底力を海外からの来訪者にも感じてもらったことと思います。

工作機械も5軸加工機や複合加工機が当たり前になり、また、3D積層造型機と切削を組み合わせたハイブリッドな機械も多く展示されておりました。まさに、世界の機械加工の進むべき道筋がJIMTOFで示されたと言っても過言では無いでしょう。

最近日本の将来を考える機会がよくあります。私事ですが、産学連携機関が主催する社会人大学院の授業を受け持ち、過去35年間の工具屋人生のことを話しています。社会人といっても30歳前の若い方々が多いのですが、授業を通じて彼らは「自分のものしてやろう、吸収してやろう」という気持ちや高い志がひしひしと伝わってきます。巷では、大学生の学力低下や機械技術者の不人気が言われて久しいですが、決してそうではない。教える方に情熱があれば、自分がやってきたことに自信を持って伝えることができれば、皆目の色が変わるのです。技術の素晴らしさを如何に伝えるかが非常に重要であると感じる今日この頃です。将来を左右するのは、今を生きている我々が鍵を握っていると強く思います。

自分たちの開発プロセスで苦労したこと、ブレークスルーはどうやってできたかを語ることで、技術開発に興味が湧き、何かを生み出そうという気持ちになると私は思います。

最後になりますが、今年は長年の懸案だった超硬工具協会との統合を計画しています。現在工具工業会の超硬出荷は全体の25%を超え、材料の違いによる垣根はなくなっています。また、仮に統合すれば4,000億円を超える大きな工業会が誕生します。今まで以上に、日本が世界の工具技術のリード役になり、魅力を高めることに繋がると考えています。それにより機械工具産業に携わる技術者の魅力が上がり、若い技術者に与える影響も大きくなると信じています。

未年の「未」は、成長途上の未熟の意味でもあります。本年の統合を機に、世界一の切削・耐摩工具の工業会に成長することを祈念して、新年の挨拶にいたします。

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