「1兆5500億円の見通し」 日本工作機械工業会が賀詞交歓会を開催

日本工作機械工業会(会長=花木義麿 オークマ社長)が1月8日、東京千代田区内のホテルニューオータニで新春賀詞交歓会を開催した。
花木会長のあいさつの概要は以下のとおり。

昨年は世界市場における日本の工作機械の高いプレゼンスを示した

昨年の工作機械業界をとりまく環境は、月を追うごとに回復基調が強まり、年間の受注額は当初の見通しの1兆3000億円を大幅に上回った。週末に情報修整をした1兆4500億円を超え、1兆5000億円ほどに到達し、2007年に記録した史上最高の1兆5900億円に次ぐ史上第2位の受注額になった。世界市場における日本の工作機械の高いプレゼンスを示した結果であると言える。

2015年の工作機械の受注動向についてはアメリカの金融緩和縮小による影響や新興国の成長鈍化、原油価格の急激な低下などの懸念材料もみられるが、海外の主要資料をみると、米国を中心として工作機械の市況は底堅く推移していくと見込まれる。日本においても昨年4月の消費税引き上げ後の反動を乗り越え、景気は緩やかに拡大していくものと見込まれる。工作機械の内需は為替の安定による企業収益の改善に加え、投資減税やものづくり補助金等により老朽設備の更新需要が期待され堅調な設備投資が続くものと見込まれる。

このような背景から本年は高水準であった昨年と同水準か、またはそれ以上の需要が期待できるのではないか。そこで本年の日工会受注総額は、1兆5500億円を見込みたい。これをなんとして達成したく、ご協力をお願いしたいと思う。

短期的な視点では、工作機械需要がその時々の経済環境の影響により増減するが、新興国の台頭や世界の人口増加により、自動車やスマートフォンなどの消費財生産などをはじめとして、工業製品の需要規模は着実に増加を続けている。これら工業製品の生産は製造業のグローバル化を促し、工作機械の需要もグローバル規模で増加をしている。膨大な潜在需要を獲得すべく、世界の工作機械メーカーが競い合っている。各社におかれてはこの競争に打ち勝つべく、得意とする5軸マシニングセンタや複合加工機の一段の高度化、知能化技術等に磨きをかけて頂きたいと思う。

また、新たな生産手段の動向として、アディティブマニファクチャリングと工作機械の融合や工作機械とロボット技術を組み合わせた無人化自動化技術等が進んでいる。販売サービス面では生産性向上や技術革新などのソリューション提案を積極的に推し進めていく販売体制の確立、迅速且つ丁寧な顧客の立場に立ったアフターサービスを提供するネットワークの準備も進めて頂きたいと願う。世界には多種多様のユーザーが存在し、求められる製品やサービスのニーズも様々である。そのような顧客ニーズに応えるため、工作機械産業は前進し続けていく。

一昨年5月、私が日工会の会長に就任して以来、『工作機械産業ビジョン2020』で示された産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOFの求心力強化、人材の確保等、中長期的な視点でわが国工作機械産業が克服すべき諸課題に取り組んできた。関係委員会の皆様をはじめとして多くの業界関係者のご尽力によってこれらの事業は遅滞なく進められ、大きな成果を上げている。産学官連携と国際標準化戦略については、産学の英知を結集して、先端技術の研究や規格化に取り組む加工システム研究開発機構、これの立ち上げに向けてちゃくちゃくと準備を進めている。

JIMTOFの求心力強化については、昨年開催したJIMTOF2014年の来場者数が前回比5.8%増の13万6000人ほどで史上2番目となる大変盛況なものとなった。うち海外来場者数ははじめての1万超えとなり過去最高を記録するなど国際化の面でも大いに前進をしたかと思う。人材の確保などは、JIMTOFの会期中に開催した恒例の工作機械トップセミナーに過去最高となる621名の参加を得て大変盛況であった。このように日工会事業は幸い高い成果を上げてきているが、まだまだ多くの課題を抱えている。

日本の産学官連携は、欧州主要国のように工作機械メーカー、ユーザー、大学・研究機関などとの共同研究が活発に行われる状況に至ったか。私ども加工システム研究開発機構に関する研究と準備を一段と強力に進めていかなければならない。また、当業界とあまり馴染みのない一般の方々に工作機械とはどんなものかと理解して頂いているか。日本の工作機械産業の未来を次の世代に託して行くには世間一般の幅広い層の方々に工作機械の果たす役割について認識を深めていただく必要がある。まだまだ心配無用という状況には至っていないと感じている。

次回のJIMTOFは、来年11月に拡張される東京ビッグサイトで開催されるが、業界各社の最新技術を世界のユーザーへ発信していくことはもとより、一般の方々への訴求力を高め、一段と業界のPRを強化していかなければならないと思っている。本年10月に開催されるメカトロテックジャパン2015の会期に合わせて開催する工作機械トップセミナーにおいても工作機械産業の魅力を大いに発信していきたい。

日工会の内外比率は2000年代初頭は概ね半々であったが、その後、外需比率が上昇し、2010年以降は概ね7割レベルに達している。その背景には中国をはじめ、アジア新興国市場の急成長がある。一方で、日本企業の生産の海外移転は着実に進んでおり、研究開発などの機能移転に関する動きも進んでいる。私ども日本の工作機械産業は外需7割時代にあって、日本と世界のものづくりにどう貢献していくか、業界活動をどのようにグローバル化していくかといった課題への取り組みが今後一段と重要となる。

日工会活動には、税制改正など制度インフラ改善に向けた取り組みや地球環境問題への対応など様々な活動がある。世界における日本の工作機械業界の役割を強く意識した活動を展開していきたい。安倍内閣の発足以来、即効性の高い政策が間断なく打ち出されてきた。歴史的高水準であった円高は大きく修整が進み、アベノミクスの第三の矢とされる成長戦略の一環としての民間投資を喚起する政策により日本の製造業は活力を取り戻しつつある。私ども日工会会員各社も常に最新鋭かつ最高の工作機械を供給しつづけ、わが国の経済の根幹である製造業復活のお役に立てるよう頑張っていく。同時に広く世界のものづくり産業の反映に貢献すべく努力を続けていく所存である。

世界的に新しい動きがある製造業 どう切り返していくか

来賓を代表して黒田篤郎 経済産業省製造産業局長が、「過去2年間のアベノミクスの経済政策の効果があり有効求人倍率が22年ぶりの高さになり、企業収益全体も過去最高になるなど経済の好循環が見えてきた。今年はこの経済の好循環をより確実にしっかりしたものにしていく。そしてさらに全国津々浦々地方にも中小企業にも広げていくのが今年の目標になる。さて、工作機械はマザーマシンと呼ばれ製造業の高度な技術力の根幹である。業界の皆様にはこれまでもこれからも日本経済を支えていく大変大事な役目を担っている。昨年私はJIMTOF2014を見学したが、日進月歩の工作機械の世界を拝見し、大変驚いたが、年の最後に高い伸びがあったとのこと。大変おめでたいことであり、このペースで今年も大きな受注を獲得されることを願っている。他方、IT技術の革新により、データ社会が進むが、工作機械も大きな変革の嵐の中に入っていくのだろうと思われる。アメリカではITが顧客から得たビッグデータを活用してIT企業が製造業に参入していくというIMTの世界が始まっており、ドイツではインダストリー4.0のコンセプトのもと、製造設備のネットワークがM to Mで機械同士が自動的に連絡を取り合いながら工場間、企業間で最適生産をし、ロット数が1からの変量生産というコンセプトの新しい動きがをつくっている。このような流れに対してわれわれも危機感を持っている。この動きをどう捉えて切り返していくかということを考えることが今年最大の機械産業のテーマではないかと感じている。これに関連して昨年9月に私どもでは安倍総理のイニシアティブでロボット革命実現会議を官邸に設置した。ロボット企業のみならず、関連業界の皆様、有識者の皆様と議論を開始している。ロボット産業は日本の産業にとって力のある産業で、この1月議論の成果を発表したいと思い、準備中である。今後、官民あげて工作機械・産業機械発展の絵姿を描いていきたい。経済産業省全体としては、なんといっても稼ぎ頭である製造業の皆様の競争力強化策を今年も引き続きとっていきたい。昨年の12月30日に税制改正大綱がまとまったが、来年度の法人税については2.51%の引き下げ、そして来年度については併せて3.3%以上の引き下げをすると決定した。これらを踏まえ、皆様の応援を力一杯していきたい。また、アベノミクスの効果を隅々まで行き渡るように皆様に賃上げのご協力とお取引先の価格転嫁が円滑にいくようご協力をお願いしたいと思っている」とあいさつをした。

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