「グローバルトップシェアを貫く」 ジェイテクトが2014年の総括および今後の中期計画について記者説明会を開く 東京では初めての実施
トヨタグループの機械・自動車部品製造会社であるジェイテクト(社長=安形哲夫氏)が、昨年12月22日に東京都内の帝国ホテルで、東京では初めての記者説明会を開き、2014年の企業活動の総括ならびに今後の活動計画に関して中期経営計画の視点で説明した。
今回、東京で記者発表を開いた理由について、安形社長は、「現在本社は名古屋と大阪の二本社制ということもあり、在京メディアの皆様と関係が今ひとつ、という反省点があった。われわれとしては積極的な広報活動を通じて知名度を上げていきたいと考えている。わたしどもの会社の理解度を深めていただきたい」と述べた。
売上高、四半期純利益は過去最高
ジェイテクトは2006年に豊田工機と光洋精工が合併し誕生した会社だ。自動車部品、軸受(ベアリング)、工作機械などの製造販売を主体に展開している。売上高は1兆円を超えており、従業員数は約4万4000人の規模を持つ。自動車部品事業は、1988年、世界初の電動パワーステアリングを開発に成功し生産に着手。トルク感応潟差動装置“TORSEN”、電子制御4WDカップリング“ITCC”の3つの分野では世界でトップシェアを誇り、世界中の自動車を力強く支えている。
あらゆる産業を動かす、まわる、に貢献する軸受事業は、厳しい環境下で利用される風力発電機用軸受、新幹線用軸受、鉄鋼圧延機用軸受、建設機械用軸受などの研究開発には大型軸受専用試験設備を設置し、顧客のニーズに応えるべく信頼性の高い軸受を提供している。
ものづくりのモトをつくる工作機械・メカトロニクス事業は、伝統の研削盤(世界シェア№1)のほか、世界で初めてギアスカイビング加工による量産を可能したマシニングセンタなど新製品を展開しており、また、メカトロニクス製品ではトヨタ自動車製品の全世界の工場制御を担う。
第2四半期業績及び通期業績予想についてだが、連結損益について売上高は前年同期に比べ428億円の増の6,552億円、営業利益は円安の効果で90億円増の334億円、経常利益は76億円増の353億円となった。四半期純利益は188億円増の222億円となり、売上高、四半期純利益は過去最高となっている。
同社を取り巻く環境の行先について、村瀬昇也専務取締役(営業本部本部長)は、「世界経済においては米国の着実な回復の継続、若干懸念はあるが欧州は緩やかな回復基調に支えられ、先進国を中心に堅調に推移するとみている。中国経済は成長ペースを落としつつも比較的安定成長を維持する見方がある一方、先行き不透明感を払拭できずにいる。中国以外の新興国は引き続き成長に勢いを欠く状態が継続するだろうと思われる。日本経済は消費税に伴う駆け込み需要の反動で次第に和らいでいくと見込んでいるが、足元では期待していたほどの回復ペースになく、楽観できない状況である」と説明した。このような時流の中、通期業績予想について同社では、売上高を対前期198億円増の1兆3,100億円、営業利益同97億円増の680億円、下期の為替レート(4~3月)の前提はドル95円、ユーロは130円、設備投資については通期で700億円を予想している。
安形社長は、中期経営計画について、「単年度の経営計画だけではやりきれない思いがあって、今年度から事業部ごとに5年の中期計画をつくった。これをベースに毎年ローリングしていく。なぜ5年でローリングなのか、というと、私どもは自動車のビジネスが7割以上占めている。自動車のビジネスはだいたい3年先はほぼ失注したか受注したか決まっている。本当の勝負というのは4~5年先まで受注できるかどうか各社しのぎを削っているというのが自動車部品・関連業界の大きなビジネス構造となっている」と述べたうえで、現在の状況を説明した。
自動車部品事業「自動車用ステアリングでグローバルトップシェアの維持」
●ステアリング
目指すは「“世界No.1”、“Only One”へのこだわりを持ち、顧客への価値を提供し続けることで、常に世界をリードするサプライヤへ深化」。同社のこの分野の世界シェアは33~34%。つまり世界中の車3台に1台は同社の製品が占めているのだ。18年度目標を、自動車用ステアリングでグローバルトップシェアの維持としている。
[商品力の強化]
・機能安全、小型軽量/省燃費、自動運転対応
・基幹部品戦略の推進(コラム/MCU)
・競争力のある商品の市場投入(下流EPC/次世代C-EPS)
[ビジネスモデル変革]
・フロントローディング活動強化/グローバル商談対応強化
・売価戦略/原価企画力の強化
[供給体制整備]
・グローバル供給体制の整備
・リソースの適正配置
自動車部品事業(ステアリング)の第2四半期までの実績として、グローバル供給体制を活かした市場シェアの維持(世界No.1 )している。5年後を見越したR&Dネットワーク、下流アシストEPSの開発など、5年後を見据えた商品力の強化にも注力した。また、日系顧客からの好調な受注や欧米顧客への中大型車種向けの拡販にも注力し、ビジネスモデルも変革している。また、メキシコ新拠点の設立(2015年より生産開始)、北米拠点の供給基盤再編/強化をはじめ、ブラジルはEPS生産開始、タイは生産能力増強、中国は下流EPS豆乳、テクニカルセンタ移転/拡充と、供給体制の整備を推進している。ちなみに、油圧(HPS油圧式>、H―EPS電動ポンプ式>)、コラムアシスト(C-EPSコラム式>)、下流アシスト(DP-EPSピニオン式>、FP-EPSデュアルピニオン式>、RP-EPSラックパラレル式>)の全てをつくれるのはジェイテクトだけである。
●ドライブライン
目指す姿を「“世界No.1 ”、“Only One”へのこだわりを持ち、顧客への価値を提供し続けることで、常に世界をリードするサプライヤへ深化」とし、18年度の目標をトルクコントロールデバイスで世界のリーディングカンパニーへ飛躍するとしている。
[商品力強化]
・小型化・低コスト化・高機能化
・ユニット化・モジュール化(トルクマネジメント商品のシステム提案)
・新分野商品開発(HV/EV対応)
[顧客拡大・市場開拓]
・海外顧客へのアプローチ強化と市場理解活動の促進
・海外現地法人と連携した営業・販売技術体制の構築
[供給体制整備]
・既存の生産能力を徹底活用
自動車部品事業(ドライブライン)の第2四半期までの実績について、ITCC/トルセンは市場規模が大きい北米/日本におけるトップシェアを維持し成長が見込まれる欧州/中国での拡販活動を推進。CVJについては大部屋活動によるCVJ事業の収益を改善した。また、小型化/低コスト化/高機能化、ユニット化・モジュールかへの取り組みにも注力、「ディスコネクト機能付き駆動力伝達ユニット」の商品力の強化に注力した。これにより、4WD走行不要時に駆動系の回転を停止させるディスコネクト機能を付加し燃費を向上させることが実現し、高応答アクチュエータと低引き摺りクラッチをコンパクトにユニット化し、既存デフにアドオンが可能になった。欧州/中国顧客の亜@宇ロート体制を整備し(欧州顧客へのフロントローディングを開始、市場マーケティング/ベンチマーク強化)、収益基盤の強化から田戸岬工場収益改善活動に注力し、FCVの本格普及に先駆け高圧水素供給バルブの開発を完了(本年度量産開始)。
軸受事業 「グローバル市場の伸びに真髄し、体質の強化を図る
目指す姿は「グローバル市場の伸びに真髄し、体質の強化を図る」。重点市場は鉄鋼、工作機械、風力発電、農業機械・建設機械、特殊環境(医療・半導体)。
第2四半期までの実績は、国内生産体制/海外工場の再編(欧州/中国)し、販売子会社との合併による国内営業体制の再構築に注力した。顧客のニーズに対応した商品提案のため、大型軸受け技術開発センターの活用や超大型軸受け評価試験機の導入など新たな設備の活用で商品力強化を狙った。営業力強化のため、販売子会社との合併で即納体制の強化と品揃えの充実を図り、在庫一括管理や販売技術の強化、セールスエンジニア育成にも注力した。また、徹底した工程集約とシングル段替え並びに加工リードタイム短縮、仕掛け在庫の削減など、多品種/小ロット対応ラインを強化し、生産力・生産技術力の確立をしている。
工作機械・メカトロ事業 「お客様から信頼される真の総合生産システムサプライヤ」
目指す姿は「お客様から信頼される真の総合生産システムサプライヤ」。18年度目標は、お客様のニーズにあった商品を提案/提供しお客様のものづくりに貢献する。[営業力強化]
マーケティングの強化によるターゲットの見直し
・販売技術力強化、販売網の整備
・アフターサービスのビジネスモデル確立
[商品力強化]
・高付加価値商品への注力
・設計プロセスの標準化、つくりやすい設計へ
→汎用切削機・汎用MCのコストを2~3割低減
[ものづくり革新]
・刈谷ReBORNにより2018年度リードタイム1/2生産性1.5倍へ
・内製付加価値向上により、価格競争力向上
*商品別方針
研削盤:ダントツの精度/生産性で世界シェアNo.1 を維持
切削機/MC:精度と難削材加工技術で高付加価値分野に展開
制御/システム:最適システムで業界トップ3を目指す
工作機械・メカトロ事業の第2四半期までの実績は、新型機へのモデルチェンジ/拡販(新型CNC円筒研削盤、横形マシニングセンタに新機能追加)したことと、ギア加工市場への参入を果たしたことだろう。これにより汎用機+加工技術のパッケージ化(スカイビング加工の量産)が実現している。また、特定顧客/特定ワーク依存からの脱却や、アフターサービスのビジネスモデルを確立し、メカトロ拡販など営業を強化し、合わせて新商品の市場投入(研削盤/マシニングセンタ)、ギヤ加工市場への参入など商品力の強化にも注力した。45億円を投資した“刈谷ReBORN”の成果では、組立リードタイム削減/機械加工生産性向上、キサゲレスの達成など、ものづくり改革にも注力した。
商品力の強化の一貫として、注目したいのはギヤ加工市場への参入だ。同社ではギヤの新工法(スカイビング加工技術)を開発、汎用機+加工技術(治具・工具)をパッケージ化している。スカイビング工法とは工具とワークを相対的に傾け同期回転させることにより発生する相対速度を用い歯車加工を行う工法のことで、量産ができるのはジェイテクトだけである。
ギヤ加工の従来工程は、①旋削→ ②ホビィング→ ③シェーバ→ ④面取り→ ⑤穴あけの各工程に設備が1台必要だった。新工法ではJIMTOF2014で注目された「e500 H-GS」を用いれば、旋削~穴開けまでをマシニングセンタ1台で加工可能となり、ワンチャック加工なので加工精度の安定を図れるメリットがある。ちなみに今回のJIMTOFでは建機メーカーからの引き合いが多かった。
ジェイテクトの3つのブランド、「JTEKT」、「Koyo」、「TOYODA」―――。
それぞれが互いいに高め愛ながら自動車部品、鉄鋼、鉄道、航空宇宙、建設機械、農業機械、風力発電など様々な領域で社会を支えていくとしている。