不二越 藤井孝宏氏 春の黄綬褒章を授章 ~手の感覚や研削音など五感をフル活用し、ミクロンレベルの仕上げ加工を施す~
2015年05月31日
不二越 工具事業部 工具製造所 EXTブローチ課に所属する藤井孝宏氏(59歳)が、春の黄綬褒章を授章した。
「1974 年の入社以来、41 年間ブローチの手動歯形研削作業一筋に携わってきました。現職場に配属され、先輩方から作業を教わり仕事を覚えてきましたが、厳しい反面、ものづくりの楽しさも感じるようになりました。ある時、製品を修正する仕事を任され、その修正した製品の精度が非常に良いと、お客様から高い評価をいただいたことがありました。その時、実際に自分の作業が評価されたことがとてもうれしく、また自分でここまでできるという自信もついて、やる気が増すと同時に、ものづくりへの興味が一層湧いてきました。ブローチは歯の精度が命です。そのため、お客様の加工精度の要求は大変厳しく、自分の中で、何度も限界を感じたことがあります。たとえば、刃先の研削を行なうなかで、数ミクロン位置ズレするという問題が発生することがありました。位置ズレの方向と量を数値化して把握することができず、実際に加工したブローチでの切削テストと、歯形の細かな微調整を繰り返し行ないながら、修正していきました。複雑で微細な加工を行なうには、熟練した成形技能が不可欠で、自分自身、さらなる技能の修練が必要だと感じた瞬間でもありました。この職場に配属された当初は、失敗もたくさんあり、多くの方にご迷惑を掛けました。同じミスは絶対にしないぞ、と自分自身に言い聞かせながら、今日まで頑張ってきました。ミスをしようとして仕事する人はいませんが、ミスをしたあとの気持ち、反省が大事だと思います。この気持ちがあれば、加工精度や品質の向上も、加工時間の短縮も、まだまだできるはずです。何事も追究・探求する気持ちで、自己満足せず向上心を持ち続ければ、仕事への意欲は増し、張り合いも出てくると思います」(藤井氏)
手動の工作機械を使い、クリスマスブローチの最重要部位である歯形を研削。手の感覚や研削音など五感をフルに活かし、機械では出来ない数ミクロンレベルの仕上げ加工を施している。その卓越した技能を活かし、クリスマスブローチの品質・精度の向上と、量産化・標準化をすすめ、今日の大型発電機のタービン製造やエネルギー産業の発展に寄与してきたことが、高く評価された。
クリスマスブローチは、航空機のジェットエンジンや発電機のタービンディスクを加工する精密工具で、断面がクリスマスツリー型の形状であることから、クリスマスブローチと呼ばれている。高温・高圧・高速で回転するタービンの安全な運転を実現するため、ミクロン単位の高精度が要求される工具である。同社は国内外の主要なジェットエンジン・発電機メーカーへ納入しており、世界トップシェアを有している。
ものづくりへの思い「何ごとも追究・探求する気持ちで向上心を持ち続ける」
藤井氏は、「このたびの受章の栄に浴し、身に余る光栄に存じます。長年携ってきた仕事が評価されたことを、大変嬉しく思っております。このような栄誉ある褒章は、私のような者がいただくものではないとも思いましたが、これまで一緒に仕事にとり組んできた職場の仲間の代表として、また同じ仕事をしている方々への励みになればと考え、お受けさせて頂きました。このような業務に就かせてくれた会社、ならびに工具製造所の皆様に、大変感謝いたしております」コメント。これまでの職歴とものづくりへの思いを次のように語った。「1974 年の入社以来、41 年間ブローチの手動歯形研削作業一筋に携わってきました。現職場に配属され、先輩方から作業を教わり仕事を覚えてきましたが、厳しい反面、ものづくりの楽しさも感じるようになりました。ある時、製品を修正する仕事を任され、その修正した製品の精度が非常に良いと、お客様から高い評価をいただいたことがありました。その時、実際に自分の作業が評価されたことがとてもうれしく、また自分でここまでできるという自信もついて、やる気が増すと同時に、ものづくりへの興味が一層湧いてきました。ブローチは歯の精度が命です。そのため、お客様の加工精度の要求は大変厳しく、自分の中で、何度も限界を感じたことがあります。たとえば、刃先の研削を行なうなかで、数ミクロン位置ズレするという問題が発生することがありました。位置ズレの方向と量を数値化して把握することができず、実際に加工したブローチでの切削テストと、歯形の細かな微調整を繰り返し行ないながら、修正していきました。複雑で微細な加工を行なうには、熟練した成形技能が不可欠で、自分自身、さらなる技能の修練が必要だと感じた瞬間でもありました。この職場に配属された当初は、失敗もたくさんあり、多くの方にご迷惑を掛けました。同じミスは絶対にしないぞ、と自分自身に言い聞かせながら、今日まで頑張ってきました。ミスをしようとして仕事する人はいませんが、ミスをしたあとの気持ち、反省が大事だと思います。この気持ちがあれば、加工精度や品質の向上も、加工時間の短縮も、まだまだできるはずです。何事も追究・探求する気持ちで、自己満足せず向上心を持ち続ければ、仕事への意欲は増し、張り合いも出てくると思います」(藤井氏)
また、今後の豊富について、「先輩から“ハンドルの目盛りでは、砥石の最終移動量は測れない。目と音、指先の感覚など五感をフルに使って研削するしかない”と教わりました。この技能を、後輩達に実践を通して教え伝えていくのはもちろんのこと、つねに自分の技能に満足せず、自ら努力・改善を続けていく気持ちが大事だと伝えていきたい。また、何時かは私の仕事を機械化、自動化できるよう、全力でサポートしていきたいと思います」と語っている。