素材調達から製品出荷までの一貫生産が強み! ~岡本工作機械製作所 安中工場をレポート~
岡本工作機械製作所(社長=石井常路氏)のモットーは、「技術は正しく」。昭和10年の設立以来、培ってきた研削技術及びラップ・ポリッシュ技術は、工作機械や半導体関連装置等の分野において国内外を問わず高い評価を博している。同社の特長は設計から製造までの一貫生産体制を実現する総合力であり、独創的な発想力・企画力で常に時代の先端を行く製品の開発に挑戦している。
安中工場は同社主力工場で、充実の設備と生産システムを誇る。半地下式で耐震構造に優れ、完全空調、防塵、精密加工・組立に対応する恒温工場だ。この工場内にはショールームも併設し、テスト加工や顧客との技術交流の場としても利用できるという最新鋭ファクトリーである。営業本部 グローバル営業部 グラインディングプロセスグループ グループ長の土屋恵児氏に案内をしてもらった。
設備と環境の充実を図った工場内ではキサゲの技術伝承も! 世界最大級のベッド研削盤は迫力満点!
内面研削盤と円筒研削盤、ロータリー研削盤、小型から中型の平面研削盤の組立ラインを通る。筆者が取材をした9月は出荷が多い月とあって大忙しの工場内。さらに進んでいくと、若い作業者がキサゲ加工を行っている。横には貫禄のある年配者がなにやら細かく指導をしていた。キサゲといえば、エレクトロニクス先端技術でも及ばない技術のひとつである。摺り合わせをしたあとの接触部を“アタリ”と呼ぶが、このアタリが1インチ四方にどれだけあるかで精度が決まる。要するにアタリの数が多ければ多いほど高精度になる。
「細かいものでは、アタリは1インチで24個ほど。テーブルの摺動面は3ミクロン以内になるように指導している」という指導者は、同社に勤めて55年以上、15才の頃からキサゲ一筋の大ベテランと聞いた。たしかに醸しだしている雰囲気から、ただならぬオーラを感じる。現在は後輩の育成に注力しているとのことで、若い作業者の真剣な眼差しも印象的だ。自動化ラインや、最新設備による多台持ちなどの省力化を実現する一方で、歴代の先人達から継承された伝統の技術を拝見することができた。続いて加工・組立の恒温ブースを見学。ここは23℃±0.5℃の恒温環境と湿度管理を徹底している。丸い穴がエアコンの空気穴だが、ひとつひとつ微妙に角度を変えている。
「気流の計算をし、設備に風が直接当たらないようにしているんですよ」(土屋氏)
奧に進むと迫力のベッド研削盤「UDG10035NC」が設置してあった。世界最大級を誇る大きさに驚いた筆者。土屋氏は、「長さ10m×幅3.5m(通過幅4m)の加工範囲を持っています。テーブルの重量が40トンあるんですが、油で浮いている仕組みなのでモータを使わなくても大人4人で押すと動きますよ」と説明をしてくれた。
同社の機械づくりの特長といえば、一貫生産体制だが、常にコストダウンを意識し、内製化を追究している。タイ工場では鋳物生産、安中工場は板金工場が稼働しており、安定した品質の多品種少量生産が実現している。写真にもある鋳物は一体型。これが意味するのは高剛性であるということ。3DCADで構造解析をしながら、たわみやすい部位などを解析し、即座に反映する。内製化の強みがここにある。なお、安中工場は、恒温ブース内に設備された複数台の大型研削盤で使用される研削液の集中管理を行う集中研削液処理室と半導体装置テスト用のクリーンルームで生じる廃液を処理するシリコン液処理装置を設けている。廃液をろ過処理し再利用するなど環境負荷低減に取り組んでいる優良工場でもあった。
大注目! 研削常識を越えた「研削革命」で驚異の研削力が実現
「精度は出て当たり前の時代に、その精度をいかに早く出すか、使い易さはどうか、サイクルタイム短縮がもたらす経済効果はどうか、という点で差別化を図るしかない」と話す土屋氏から、同社が最も注力している『研削革命』をスローガンにした研削工程短縮についての説明があった。今年の7月には、オープンハウスを実施し、国内外から1500人の来場者が足を運んだが、来場者は超精密自動加工で従来比10倍という驚異の研削能率を目の当たりにしたという。「弊社が推奨する『研削革命』で、10倍の研削能力が実現するための鍵となるのは、①高剛性マシン、②砥石、③切削油です。通常は5ミクロン~10ミクロンで切り込むところを驚異の100ミクロンという値をもって瞬間研削ができるのは、この三要素が揃っているからこそ。周辺機器メーカーとのコラボレーションが相乗効果を高め、工作機械の性能を最大限に発揮することができたんですよ」(土屋氏)
ここで注目したいのは、砥石に『キュービトロンⅡ』を取り付けていること。この砥石は、マイクロレプリケーションテクノロジー(高精細表面技術)を応用した精密成型砥粒を用いたセラミック砥石。砥粒が独特のトライアングルの形をしている。研削特性は、従来砥粒の砥石に比べ、ワークの貫入力が高く、研削熱の発生を防ぐので、深切込みや高速送りが可能になること。また、セラミック砥粒の弱点だったドレス特性についても、トライアングルの平坦面からエッジを再生して切れ味を回復し、ドレッサ摩耗も軽減している。この切れ味抜群の砥石特性をさらに向上させたのが、『GRIND-BIX ファインバブル発生器』だ。ファインバブルは、ナノバブルとも呼ばれており、同社では“切れる研削液”を発生させる装置を機上に取り付けている。研削液が噴出されると、キャビテーション波振動による気泡が発生、この発生した気泡は加工中に破裂し、超音波振動となって砥石の嫌な目詰まりを解消するという。
同社では、10月21日(水)~24日(土)までポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で開催する「メカトロテックジャパン2015」に、『研削革命』を掲げ出展するとのこと。
出展機種は、左右テーブル駆動をリニアモータ駆動にした超精密成形研削盤『UPZ315Li』、ワークを着脱することなく仕上げ可能なCNC精密複合円筒研削盤『UGM360NC』、全軸精密ボールねじ送りの3軸制御CNC超精密平面研削盤『PSG84CA3』。80周年を迎えた岡本工作機械製作所の最高のパフォーマンスに期待したい。