【レポート】「メカトロテックジャパン2015」が盛況のうち終了。自動車や航空機に的を絞った展示が目立つ

 
(写真=オープニングの様子)

 今年国内最大の工作機械見本市である「メカトロテックジャパン」が去る10月21日(水)から24日(土)の4日間、ポートメッセなごやで開催され、盛況のうち幕を閉じた。今回の来場者数は約9万5,000人。
 中部地区の開催とあって、今回は自動車や航空機に的を絞った製品の展示が目立っていた。展示会の様子をレポートする。

工作機械編

アマダが提唱する近未来工場「V-factory」は、「情報革命でものづくりを楽しく!」のスローガンのもと、全てがデジタルでつながりスマートに生産される工場のあり方を来場者に訴求しており、インダストリー4.0やIoTを視野に入れた展開であった。また、ファイバーレーザーマシン「LC-2512C1AJ」には写真のとおり、人だかりが出来ており、来場者も最新鋭マシンによる効率の良いモノづくりに魅力を感じていたようだ。ユーザーに対して国際競争力を高めるためへの提案という点で実に見所のある展示内容であった。



 「機・電・情・知」の融合で、従来の複合加工を超えた工程集約をうたったオークマの5軸制御立形マシニングセンタ「MU-4000V」。生産性向上を図る鍵となるのは、加工情報、工具情報、段取り情報およびシミュレーションなど5軸加工に必要な情報を一揃えにした新世代知能化CNC「OSP suite」を搭載している点だ。同社はテーブル・主軸への寄りつきが良い、刃先の視認性が良い、加工室内が一目で確認できる大きな窓――などオペレータに優しい操作性のある工作機械づくりをしており評価も高い。



 重切削、高剛性の百年品質のOKK。加工の本格派マシン「VM/R」シリーズが本体剛性と主軸剛性を高め、切削性能をさらにアップし、一般部品加工からチタンなどの難削材部品の加工まで対応するとして人気を集めていた。写真にあるのは優れた操作性を追求した本体構造を持つ「VM53R」。X軸移動量:1050mm、Y軸移動量:530mm、Z軸移動量:510mmと幅広いストロークを確保。幅広なワークにも対応可能にするため、オプションでロングテーブル(1260×560mm)仕様もある。



岡本工作機械製製作所は、新規開発した高精度複合円筒研削盤「UGM360NC」を展示していた。このマシンは、プレーン、アングル、内径加工用の3種類の砥石台が自動旋回し、ワンチャッキングで外径・内径・端面などが研削できる複合研削盤。「加工現場が求める高精度な真円度と同芯度の要求に応えます!」と自信溢れる担当者。オプションのロケータと直接定寸装置を搭載することで、“複合加工+机上測定”が可能となり生産性向上に貢献するという現場の期待が高まるマシンであった。



 世界で初めてスカイビング機能を搭載し、ギヤ加工工程を集約したジェイテクトはギヤスカイビングセンタ「GS300H」(e500H-G5)を展示。同社ではスカイビング加工の実用化に欠かせない「工具」「CNC制御」「高速回転テーブル」らの要素技術を独自に開発し、ギヤの加工工程を汎用横形マシニングセンタ1台に集約することで広い設備スペースを不要とし、顧客の製品単価低減にも大幅に寄与した。「小さな機械で生産ラインを構築することはスペース生産効率を上げる意味で重要」として、機械サイズを小さくするために小型機器の採用や機器配置の見直しなどを徹底的におこなっている。



 “価格以上の価値を提供”するマシンづくりで評価が高い清和鉄工が展示していたのは、高速&高精度な横形ホブ盤「Artis(アルティス) HBO56」。「Artis」のコンセプトである剛性を最優先させクローズドループ構造を踏襲している。スタントヘッド構造で作業性も良好なうえ、切粉処理もスムーズ。ホブ軸MAX6,000回転/ワーク軸MAX1,000回転のビルトインスピンドルが特長。さらなる高効率を望む加工現場のために熱処理後のワークブツ切り及びスカイビング加工もオプションで付加することもできる。



 毎度注目ぶりを見せつけられるDMG森精機は、今回もたくさんの来場者が足を運んでいた。特筆すべきは多くの女性が見学していたことだろう。同社のマシンが操作性に優れている点が理解できた。写真にあるのは、「ecoMill 1100V」。クラス最高の切削性能と6µ以内の位置決め精度が特長。最高の精度を実現」する12,000min⁻¹の主軸を標準装備し、30本の工具を収納可能にし、工具交換時間も1.3秒を誇っている。また、新しいDMG MORI SLIMlineマルチタッチ操作パネルをSIEMENS仕様のみ2016年3月から搭載可能だ。



 ひと桁以上の性能を求めるユーザーに人気があるナガセインテグレックスの目玉は、超精密でありながら高能率な加工をも実現する高剛性な超精密成形平面研削盤で、今回は、リーズナブルになった新機種「SGC-94」が展示されていた。「1μm以下の平行度、平面度を狙った平面創成加工」を実現するための創意工夫がつまったマシンだ。同社のSGCシリーズは、数多くの導入実績を持つ。加工現場の生産革命を実現させるためのマシンのひとつでもあろう。「感動的な加工精度を誇る」と評価も高く、その性能のについて熱心にメモを取る来場者の姿が印象的だった。



 毎度存在感の大きい牧野フライス製作所は、「D800Z」に注目が集まっていた。高精度部品加工市場においてφ1,000mm、1200kgの工作物を5軸で加工し、工程集約と競争力の強化を図りたいユーザーへ供給する狙いのマシンだ。ユーザーの評価も高い同社のDシリーズは、①テーブル、主軸の接近性に優れ、使いやすい機械、②高精度な5軸加工が可能、③加工時間を短縮できる高い機械剛性と加工面品位に配慮した高速主軸を装備――であり、使いやすさを徹底した造りとなっている。



 商社に内定の決まった学生たちが真剣な眼差しで説明をききながら見学していたのは、三井精機工業の横形マシニングセンタ「HPX63」。このマシンは加減速パラメータを見直し、従来機に比べ約15%のサイクルタイムを実現している。難削材料の高能率加工からアルミの高速加工まで豊富なスピンドルバリエーションも優位性のひとつ。スピンドルはチタンやインコネル等の難削材加工に最適な高トルク6,000min-¹ギアタイプ、低速域から高速域まで広い範囲でカバーする15,000min-¹ビルトイン・タイプ、アルミや金型の高速切削に最適な25,000min-¹ビルトイン・タイプまで豊富なモデルを用意している。



 いつの時代もユーザーから人気を博している安田工業は剛性の高いシンメトリックな一体型ブリッジ構造と徹底した熱対策により、長時間にわたる高精度加工が可能な「YBMVi40」に注目が集まった。また、今回は工具寿命を飛躍的に向上させる“ドライアイスパウダー”なるものが紹介され、来場者は興味津々。水溶性油のクラーントと比較すると4倍以上の工具寿命を実現しているうえ、トリポート荒加工での必要工具本数を12本から4本に集約することが可能になるという画期的な加工手法を用いていた。






 来場者を楽しませてくれる工夫がいっぱいのヤマザキマザック。今回注目されたのは、ファイバーレーザ加工機「OPTIPLEX NEXUS 3015 FIBER」。段取り作業の自動化や加工状況の監視などを機械が行い是正するインテリジェント機能が搭載可能で生産性向上と高品質な部品加工を実現する。タッチパネル式CNC装置 MAZATROL PREVIEW 3搭載により、レーザ発振指令の応答性向上や最適加減速制御により加工時間を短縮した。このCNC装置は、形状簡易入力機能の搭載で簡単な形状のプログラムが規定のパターンから選択するだけで簡単に加工プログラムが作成できるようになっている。



 “美しい加工は美しいマシンから”という言葉がピッタリな碌々産業の注目の製品は、さらに進化した超硬精度高速微細加工機「Android」だ。その美しさに来場者は足を止める。「実加工精度±1µm以下の追究」をコンセプトにしたこのマシンは、Advanced H・I・S機能により熱伝達を極限まで抑え、発熱による姿勢変形を極小化し、実加工精度、加工面品位の安定性を向上させている。見える化を実現するオペレータインターフェース「M-kit」で、従来の機能をさらに進化させ、機能性、視認性を改善していた。高い性能に加え、気品すら感じるこのマシンに、同社の“ものづくり”への強いこだわりを感じた。


切削工具・周辺機器編

 イワタツールは、新製品であるバリのない加工のためのトグロンシャープシリーズの面取り専用モデル「トグロンシャープチャンファー」と、トグロン形状の5枚刃物仕様で面取り速度を2~3倍アップする「トグロンマルチチャンファー」展示。同社は「トグロンマルチチャンファー」の高速面取り加工が実現した技術的理由を「独自のトグロン形状により、切れ味がよくビビリが少ない。1刃あたりの送りも増やせた。刃数が多いため1回転の送り量を大きくできる」とコメント。1刃にかかる負担が分散されるため工具寿命も延びた。



 マニアックな工具が豊富の栄工舎。同社の人気製品といえば「タップリムーバー」だろう。タップが折れてしまったときの絶望感から開放される一品である。同社のタップリムーバーはニッチな製品でありながらも、その性能の高さから加工現場では重宝されており、同社のロングセラーでもある。「タップは折れると分かってはいるけれど、なんとかワークがオシャカにならぬよう手をつくしたい」と切実な悩みを抱える加工現場の声を反映した商品なのだ。



 華やかなブースで来場者を惹きつけたオーエスジーは、新製品の超硬フラットドリル「ADF」のほか、チタン合金加工用エンドミル「UVX-Tl/HFC-Tl」などをはじめとした製品を展開。特に注目したいのは、焼ばめ装置「Power Clamp」。この製品は、工具交換時間が短く、操作が簡単。過加熱の防止等、火傷のリスクを最大限まで低くした設計が特長。装置の出力が大きく、ホルダ部のみを急激に加熱できるのでHSS工具の焼ばめ、焼はずしが可能である。φ3~φ50までのHSS・超硬工具に対応する。



 今回の展示会で北川鉄工所が大きな注目を浴びたのは、世界初のサーボモータ旋削機能付きNC円テーブル「DS250」を出展したことだろう。同社独自の機構採用でなんと最高回転数1000min-¹を実現している。これにより様々なワークに対応でき、イナーシャの変化に対しても強い構造となった。同サイズの割出台としても使用可能で旋削を使用しない場合、ゆりかご治具に変更することも可能である。3軸M/Cと組み合わせることで安価な複合加工が可能になり、省段取り、治具費、工程削減を実現できる。独自の減速費切換機構を搭載。



 バリ取りの自動化を推奨しているジーベックテクノロジーは、新製品「XEBEC自動調整スリーブ」を展示していた。この製品は、高能率なバリ取りの自動化に必要な「XEBECブラシ表面用」専用のオプションツール。工具長補正不要、チョコ停ゼロで工具管理負担を解消する。ブラシ先端の切込量、線材突き出し量を最後まで一定に保つことができるので、品質やツール寿命が安定する製品である。夜間無人加工も可能にする画期的な製品だ。



 モニターと製品を融合させるという画期的な展示内容で来場者の心を掴んだ住友電気工業。モールドフィニッシュマスタースミダイヤバインダレス ボールエンドミルに標準仕上げ用「NPDBS型」が新登場し、精密仕上げ用には「NPDB型」には小径が拡充。時代はまさに“超硬直彫り”といいつつも、これが難加工なことは言うまでも無いが、写真にあるサンプル加工品の鏡面仕上げぶりに注目して欲しい。同社では単結晶ダイヤモンドよりも高硬度なナノ多結晶ダイヤモンドを刃先へ採用することによりこの困難な超硬材の直彫り鏡面加工を実現した。



 「高硬度と戦う切削工具」のキャッチコピーが広まったダイジェット工業は、できたてホヤホヤの新製品である70HRC対応・高硬度材用4枚刃ソリッドボールエンドミル「ワンカットボール70」を展示していた。工具1本で70HRCのような高硬度材でも荒から仕上げに対応している。高硬度材・高速加工向け新PVD被膜「新DH(ダイジェットハード)コート」と高硬度材用超微粒子超硬合金の組合せによる新材種「DH102」を採用して長寿命化を実現した。不等分割でびびりを低減している。φ3~φ12をラインナップ。



 大昭和精機のブースで目立っていたのは、自動車部品加工、金型加工をはじめ、あらゆる高精度加工に必要な油圧チャック式ホルダ「ハイドロチャック」だ。振れ精度4D先端3µm以下という精度を誇る。レンチ一本で簡単チャッキングという利便性も好評だった、この製品には、クーラントやオイルミストを刃先に的確供給するジェットスルータイプと、先端外径MIN.φ14mmのスーパースリムタイプがあり、把握径と本体長さが充実のラインナップ。多様化する加工用途に対応してくれる。



 熱烈なファンを獲得している日進工具。今回も大勢の来場者が足を運んでいた。超硬合金など硬脆材の切削加工に貢献する「PCDエンドミル/ダイヤモンドコーティングシリーズ」が展示。「PCDエンドミル」は、工具素材に多結晶ダイヤモンドを採用。新次元の仕上げ品位を得られる特殊な刃先形状を持ち、切削加工でナノレベルの仕上げ面を実現している。一方、超硬エンドミルの刃先表面にダイヤモンド結晶を成膜したエンドミル「ダイヤモンドコーティングエンドミル」は、刃先形状を容易にデザインでき硬脆材加工に最適な形状を開発した製品である。



 ユニークな製品を展示していたのはノガ・ジャパン。このピストル型の製品はバウアーズ社の「XTホールマチックXtremeボアゲージ」。ピストルグリップのハンドル部と引き金動作が組み合わされ、計測作業の速さと均一な計測圧力を実現している商品である。エレクトロニクス・スプレー防止機能に加え、2~300mmまでの広い測定範囲により、使いやすく精度も保証されている。



 ロボットから切削工具までものづくりを豊かにするツールがズラリと並んだ不二越にはたくさんの来場者が足を運んだ。今回は、面取り・下穴加工・ねじ立てなど複数の工程が必要なめねじ加工に、ドリルとタップをセットにした工程スルーで最適化することを提案していた。「SGタップシリーズ」は高級粉末ハイスとSGコーティングでタップ最高峰の長寿命をうたっており、汎用性が高いことが特長。「SGスパイラルタップショートチャンファ」は食いつき形状の最適化で長寿命を実現しているが、これにフラットドリルと組み合わせることで、薄肉厚と有効ねじ長の確保の両立を図ることができる。



 三菱日立ツールには、最新技術を用いた「セラミックエンドミルコーナーRタイプ」が展示されていた。拝見したことのない漆黒のエンドミルはまさに次世代の高能率加工を実現する工具といっていい。超耐熱合金でも切削速度Vc=800mm/minを実現している。工具刃先温度1000℃以上にも堪えられる耐熱性に優れた専用窒化ケイ素セラミックスの採用で、従来の切削速度を大幅に上回る高速切削が可能となり、被削材の軟化温度領域での切削を実現することで工具寿命を大幅に改善した。



 最近、新製品をバンバン投入している三菱マテリアルの注目製品は、新発想の低抵抗両面インサート式汎用正面削りカッタ「WSX445」。利便性と高能率の絶妙なバランスが加工にメリットをもたらす製品である。飛散防止機能と共に円錐型をした着座はインサートの着座面積を確保しつつ、万が一の突発欠損時でも着座損傷やボディへの擦過損傷を抑制する。極厚インサートとの組合せにより剛性も確保、シートが無くても安心できる。「びびりにくく音が静かな究極のインサートです」とのこと。切屑排出性に絶賛!



 高い人気を誇る「スーパーG1チャック」を製造しているユキワ精工。ツールホルダーがしっかりしていると、ワークの面粗度も良好なうえ、びびりが減少するので工具に長寿命をもたらす。現在、同社の「G1チャック」を使用すると生産性がアップするというユーザーの口コミも広がっており、真剣な眼差しで製品を見つめる来場者も多く見受けられた。また、近日発売予定のダイレクトドライブCNC円テーブルにコントローラがついた「DRC170-AC5-60A」も展示されていた。



 ユニオンツールは、超硬母材とダイヤモンド皮膜の密着性を向上させ、皮膜の微細組織を制御することで硬度・靭性を飛躍的に高めた「UDCコート」を採用したSDC COAT 2枚刃超硬合金・硬脆材加工用ハイグレードロングネックボール「UDCLBF」を加工サンプルとともに展示していた。この製品は、刃形状とダイヤモンドコーティングをさらに改良したことで加工除去体積が大幅に向上し、ボール先端に設けた溝により抜群の仕上げ面を実現している。特殊処理が施された切れ刃がコバ欠けや段差を最大限に抑制し超硬合金の中荒~仕上げ加工に効果を発揮する。

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