平成27年度 機械工業 生産額(改訂)見通し調査
日本機械工業連合会がこのほどまとめた平成27年度 機械工業生産額(改訂)見通し調査については以下のとおり。
平成27年度の生産動向
日本の機械工業は、一部の業種を除き概ね回復傾向で推移しているが、回復のテンポは鈍化しつつある。今後は企業収益の改善、金融緩和策を始めとする各種政策効果、為替の安定による輸出の継続、原油価格の安定等により、緩やかな回復を辿っていくものと見られるが、引き続き閣内では電力の高値安定、生産拠点の需要地立地の趨勢、原材料・資源を巡る地政学的リスク等のマイナス面を抱えている。また、海外では米国景気は底堅さが継続するとみられ、欧州景気も緩やかな回復が期待される。新興国、中でも中国は景気低迷の不安を抱えていることや、その他の新興国でも米国の金融正常化に向けた動きの影響についても注視が必要である。こうした中で平成27年度の機械工業生産額は前年度比3.3%増の72兆5514億円となる見通しである。
(1)一般機械
一般機械の生産額は、前年度比(以下同様)4.4%増の14兆4350億円となる見通しである。
機種別にみると次の通り。「ボイラー・原動機」は、ボイラー・タービンが鉄鋼向けの内需が期待でき、はん用内燃機関はガソリン機関の持ち直しとディーゼル機関の緩やかな伸びが期待され、全体で6.5%増。「土木建設機械」は、輸出が高い水準で推移すると見込まれるものの、国内は一部機関で排出ガス規制前の駆け込み需要反動減があり、0.6%減。「印刷・製本・機工機械」は、国内が生産性向上に寄与する先端設備の需要増、海外は米国や新興国市場向けの増加を見込み、7.4%増。「油空圧機器」は、油圧機器が内外需とも激しく、空気圧機器は一時の急激な伸びはないものの、中国で省力化、自動化を伴う設備投資が続いており、欧米向けも堅調に推移するとみられ、全体で2.9%増。「運搬機械」は、国内の工場、倉庫、港湾施設向けで堅調が見込まれ、5.0%増。「ロボット」は、引き続き伸びが期待でき、国内は自動車、電機向けの好調が見込まれ、11.1%増。「動力伝導装置」は、スチールチェーンが国内は横ばいを見込むものの、輸出が欧米向けで引き続き堅調、歯車は内需が伸び、変速機も内外需ともに生産増加が見込まれ、全体で3.6%増。「農業用機械器具」は、国内が排出ガス規制前の駆け込み需要があるものの、米価低迷の継続により厳しい状況を見込み、海外は北米、アジア向けが期待でき、全体で2.0%増。「金属工作機械」は、中国経済の鈍化に伴い、投資マインドが国内外向け共に様子見となり、需要環境はやや厳しさがあるものの依然として底堅く、高水準の受注残があることから、1.0%増。「第二次金属加工機械」は、省エネルギー補助金効果による設備更新需要により、機械プレス等の増加が見込まれ、5.7%増。「繊維機械」は、化学繊維機械、紡績機械、織機が減少するものの、準備機械、編組機械が増加し、全体では6.6%増。「食品加工機械」は、手控え状態が長期化している食品業界で設備投資が期待され、0.3%増。「包装機械・荷造機械」は、海外が東アジア向けで堅調、国内は設備投資の更新需要が見込まれ、2.7%増。「事務用機械」は、海外での現地生産が進み、国内生産の減少傾向は続くものの、一部に為替の影響による国内回復の動きが見込め、30.7%増。「ミシン」は、工業用ミシンがアジア向けの需要増が見込まれ、4.1%増。「冷凍機・同応用装置」は、冷凍機で減少を見込むものの、冷凍機応用製品等で増加が見込まれ、全体で0.7%増。「半導体製造装置及びEPD製造装置」は、半導体製造装置が引き続きファウンドリや大手ロジックメーカーの底堅い微細化投資に期待でき、FPD製造装置は高精細・中小型パネル用の投資が見込まれ、15.8%増加の見通しである。
(2)電気機械
電気機械の生産額は、前年度比(以下同様)5.7%増の7兆7243億円となる見通しである。
機種別にみると以下の通り。「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は、輸出が中国を中心としたアジア向けは下期に向けて下振れが懸念されるものの、国内は省エネルギー・合理化を進める機運の継続とともに、各種政策の後押しの効果により堅調を維持すると見込まれ、6.8%増。「民生用電気機械」は、消費者の省エネルギー意識の高まりによる省エネルギー製品への関心の継続、買替を主体とした堅調な需要と消費マインドの回復が期待されるものの、海外生産シフトが引き続き進むとみられ、4.7%減。「電球」は引き続き生産拠点の海外シフトや電球形LEDランプの普及の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少すると見込まれ、3.4%減。「電気計測器」は、放射線計測器が減少するものの、電気計器、電気測定機、工業用計測制御機器、環境計測器は増加し、全体では16.7%増加の見通しである。
(3)情報通信機械
情報通信機械の生産額は、前年度比(以下同様)0.4%増の3兆3912億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「民生用電子機器」は、薄型テレビが買替需要に期待するものの上期は厳しく、カーナビゲーションシステムは高機能化による価格上昇を見込み、でデジタルカメラは一眼レフタイプの輸出が堅調なものの、引き続きコンパクトタイプで多機能携帯電話の影響を受け厳しいことから、全体では2.2%減。「通信機器」は、有線通信機器が有線端末機器の落ち込みはやや改善するものの、有線ネットワーク関連機器は通信事業者の投資が一巡し、需要の減少が続き、無線通信機器は多機能携帯電話が初期ユーザーの買替需要が堅調で、通信機器全体では7.8%増。「電子計算機及び関連装置」は、パソコンが前年の旧OSサポート終了による買替需要の反動減の影響を受け、大きく落ち込む上京が続いており、全体で7.2%減少の見通しである。
(4)電子部品・デバイス
電子部品・デバイスの生産額は、前年度比(以下同様)10.4%増の8兆2778億円となる見通しである。
「電子部品」は、セラミックコンデンサやフィルタ等の受動部品や接続部品等で為替の改善を背景に、海外の多機能携帯電話や自動車の電装化率の増加により自動車向けの需要拡大g編み込め、8.0%増。「電子デバイス」は、半導体が半導体素子で太陽電池セルやLEDの国内需要の伸びに一服感がみられ、集積回路は好調が続くメモリの伸び率にやや鈍さが見られるものの、液晶デバイスは多機能携帯電話向けが高精細を中心に伸びが見込め、薄型テレビ用の大型ディスプレイデバイスも需要増が見込まれることから、11.5%増加の見通しである。
(5)輸送機械
輸送機械の生産額は、前年度比(以下同様)1.2%増の31兆8438億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「自動車」は、引き続き国内需要の減少が見込まれるものの、堅調な米国市場や回復基調の欧州市場向けの輸出増加が期待され、為替の影響もあり、自動車全体では0.7%増。「自動車部品」は、米国等の海外市場向けや東京モーターショーの開催による自動車生産の伸びによる部品の再三増に期待し、1.0%増。「産業車両」は国内が排ガス規制適合車や電気車の需要が堅調に推移しているものの、輸出は海外生産の拡大による減少もあり、全体では横ばい。「鋼船」は、前年度に手持ち工事が増加し、操業も徐々に回復が見込まれ、3.4%増。「航空機」は、機体、発動機、機体部品、発動機部品、装備品のいずれも増加し、全体で7.7%増加の見通しである。
(6)精密機械
精密機械の生産額は、前年度比(以下同様)4.7%増の1兆4425億円となる見通しである。機種別にみると以下の通り。「計測機器」は、計量機器が上期に設備投資の増加が継続したが、下期は中国経済の不透明さによって横ばいに転じると見込み、分析機器は輸出が為替の影響もあり引き続き堅調、光学計測機は欧州、東南アジア向けで増加を見込み、計量機器は国内が引き続き県境、輸出は為替の影響により伸びを見込み、全体で6.6%増。「光学機械」は、写真機が2.6%増、望遠鏡・顕微鏡は輸出が堅調で生物顕微鏡、工業用顕微鏡の伸びが見込まれ1.3%増、カメラの交換レンズ・付属品が2.9%減、光学器械全体では0.8%減少の見通しである。
(7)金属製品
金属製品の生産額は、前年度比(以下同様)1.2%の2兆8216億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「鉄構物・架線金物」は、0.5%減。「ばね」は、0.2%減。「機械工具」は、特殊鋼工具が2.1%増、超硬工具は輸出が北米向けで引き続き堅調、中国向けは弱含むものの、欧州向けは持ち直しが見込まれ6.6%増。ダイヤモンド工具はダイヤモンドドレッサやダイヤモンド切削工具の伸びが見込まれ3.4%増、機械工具全体で5.2%増。「バルブ・コック・鉄管継手」は、国内が復興需要や五輪に向けて設備投資等の増加を見込み、海外は欧州や中国を始めとする新興国向けで減速が見込まれるものの、米国向けは堅調が見込まれm2.4%増加の見通しである。
鋳鍛造品
鋳鍛造品の生産額は、前年度比(以下同様)0.4%増の2兆6152億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。粉末冶金製品は、3.7%減。「鍛工品」は、産業機械、土木建設機械、輸送機械向けが増加するものの、自動車向けが減少し、0.4%減。「銑鉄鋳物」は、横ばい。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は、1.1%増。「非鉄金属鋳物」は、2.2%増。「ダイカスト」は、自動車向けの伸びを見込み、2.1%増加の見通しである。