CIMT2011にみる中国の工作機械事情
中国の工作機械生産額は一昨年、それまで27年間世界一の座を保持してきた日本を追い越し世界一となった。2010年の切削型工作機械の生産額は145億8500万ドル、また工作機械消費額は272億8000万ドルでこれも世界一である。今や中国は世界最大の工作機械生産・消費国に成長した。
中国の切削型工作機械メーカーは約740社、成形型工作機械メーカーも加えると1320社という途方もない数になる。また、関連するメーカー数は工作用機器で420社、電気部品・NC装置で320社、測定・切削工具で930社、刃具・砥石で1580社というこれまた莫大な数のメーカーがひしめいている。今回のCIMTに出展した中国メーカーの数は758社なので、この中のほんの一握りにしかすぎない。
CIMTは中国最大の工作機械展示会であり、欧州のEMO、米国のIMTS、日本のJIMTOFと並び今や世界4大工作機械見本市の地位を占めるようになった。他の展示会と同じく隔年の開催である。出展社数は1409社(28カ国・地域 国内758社、海外651社)、6日間の来場者数は305,767名(延べ人数)で、これはおそらく関係者も含めた数字と思われ、実際の入場者は20万人台ではないかと思う。
会場の建物は東が1~5ホール、西館が1~4ホールあり、おおよそ国別にゾーンを分けて展示を行っていた。展示面積は73,463m2でこれはJIMTOFの約1.5倍、会場面積は120,000 m2と広大だ。
超がつくほどの大型機が目立つ中国
第一に、機械の見た目は悪くはなく日本製の機械と並べて見ても遜色ない。デザインはどこかで見たような感じのものが多く、我が国や欧米の二番煎じ的な印象。しかし、細かい部分の気配りは充分とは言えないようだ。もちろん、中身の良し悪しについては全くわからない。第二に、5軸マシニングセンタが結構展示されていた。そのほとんどは立形と門型の機械であり、大きく分けてテーブル側で回転・傾斜するものと、主軸側とテーブル側で回転・傾斜するものの2種類がほとんど。ブレードやインペラーを載せて同時5軸加工のデモンストレーションを行っているものもあったが(しかし大半は空運転)、加工品質まではよくわからなかった。
第三に、やたら大型機、それも「超」がつくような大型機が目立った。主軸のすぐ横に操作用の部屋があるような超大型機も数台見かけられた。国が大きいから機械も大きくなるわけではないと思うが、中国では大型機の需要が我が国よりもはるかに多いことの表れではないだろうか。事実、某ブースで聞いたところ、「中国では大型機用のボールねじやガイドが日本では考えられないほど多く出る。それは造船、建機、風力発電用などに大型部品加工の需要があるためではないか」とのことだった。
第四に、加工サンプルで「見せて」いるメーカーが少なかったような気がする。我が国や欧州並とまではいかないまでも、それなりのサンプルが展示されていれば印象に残るはずだ。しかし、あまり記憶にないということは残念ながら機械の実力もそれなりということなのだろうか? また、加工デモンストレーションについても驚くようなものがなかった。金型加工のデモンストレーションもあまり見かけなかった。切粉を出していたものもごくわずかであった。第五に、展示機のほぼ100%がNC機であり、非NC機は小メーカーでしか見られなかった。CIMTは最先端の機械を展示する場所であり、そこに非NC機はふさわしくないのだろうか。中国国内の工作機械需要はすべてNC機とは限らないと思うのだが。ちなみに中国におけるNC化率は2010年時点で約27%(台数ベース。金額ベースではおそらく70%くらいではないか?)であり、この数値から考えるに、まだまだ発展の余地が大きいと思われる。
●最後に●
おそらく5軸マシニングセンタの展示は年々ふえているのではないか。中国も5軸化の時代が見え始めてきた感じである。しかし、日本の現状の輸出管理体制からすれば中国に5軸機を輸出するのは極めて難しい。その間に欧州勢の5軸機がどんどん入っているのを『指をくわえて』見ているような状態だ。こればかりは企業の努力では如何ともしがたい。ただ、5軸機に関して会場内を見た印象から言うと、横形ベースの機械は少なく、中でも横形トラニオン・タイプの機械は皆無であった(実際にラインナップしていても出展していないだけなのかもしれないが)。
今や工作機械でも世界最大の市場となった中国は決して目の離せない存在だ。世界の目がここ中国に集まっていることを、ひしひしと感じた。一般的な加工内容や精度であれば中国メーカーの機械でも充分対応可能だろう。すなわち、精度、仕様で勝負するしかないということだ。
(文:写真=三井精機工業 下村栄司)