〈年頭所感〉日本建設機械工業会/日本工作機械販売協会/日本金型工業会
「市場が求める新たな価値を提供し続けたい」
●日本建設機械工業会 会長 藤岡 純
新年明けましておめでとうございます。
年初に当たり、謹んでご挨拶申し上げます。
昨年の世界の建設機械市場は、建機メニューにより様相が少し異なりますが、新常態への移行を進める中国市場の大幅な需要減退、同国と関係の深いASEAN諸国の低迷に加え、日米欧といった先進国においても力強さに欠ける水準となり、総じて低調に推移致しました。
グローバル経済における中国経済のウェイトは、名目GDPで14%にまで高まる見込み(IMF2015年推定)で、本年の世界の建設機械市場の動向も中国が鍵を握っているといって良い訳ですが、中国の「旧常態」から「新常態」への構造改革が、どのタイミングでどのレベルにランディングするのかは読みづらく、建設機械を取り巻く事業環境は、極めて不透明といわざるを得ません。
また他エリアにおいても、成熟市場といわれる先進国では老朽化インフラのメンテナンス、リニューアル等で安定的な需要が見込まれるものの、資源に依存する新興国諸国では当分低迷が続くと予想され、世界全体で捉えると本格的な需要回復には、今しばらく時間を要するものと思われ、本年も厳しい事業環境が続くと見ざるを得ません。
このように、足元のグローバル市場の活性は低下していますが、景気循環の新たな局面に向け、IoT、BD、AIといった新たな技術が、経済・社会・そして我々のビジネスにどのような変革をもたらすのかということも視野におきながら、当工業会の設立理念の一つである「調和と発展による世界への貢献」に応えるべく、会員会社の製品、サービスを通じ、市場が求める新たな価値を提供し続けたいと考えています。
また、当工業会では、①良き企業市民として社会への貢献、②ステークホルダーとの共存共栄、③公正・透明な競争と適正な取引の推進、④世界の一員としてのグローバル化の推進、⑤安心・安全の追求と人間中心の経営の志向、⑥環境保護、省エネルギー、省資源の推進、⑦新しい商品および分野の開拓の7項目からなる「経営パラダイム」を策定しており、「共生と競争」のもと、本年も引き続きこのパラダイムの実現に向け、活動を推進してまいります。
最後になりましたが、本年がみなさまにとりまして良い年であること祈念し、新年の挨拶といたします。
「日本の製造業の国内回帰となるのか注目したい」
●日本工作機械販売協会 会長 冨田 薫
皆様 新年明けましておめでとう御座います。
健やかに新春を迎えられた事と、謹んでお慶び申し上げます。
旧年中は当協会に対し一方ならぬご厚情と暖かいご支援を賜り有難う御座いました。あらためて御礼申し上げますと共に本年も引き続き宜しくお願い申し上げます。
昨年を振り返ってみますと日本人として誇れるうれしいがニュースが多くありました。
まず1995年以降、20年にわたってラグビーワールドカップで勝利なしの日本チームがエディー ジョーンズ監督の下、2015年イングランドワールドカップで惜しくも予選突破は出来なかったのですが、強豪南アそしてサモア、アメリカを破り3勝を挙げ、私の様なラグビー素人でも本当に興奮した試合でありました。また2015年ノーベル賞は大村 智氏に生理学、医学賞、梶田 隆章氏に物理学賞が授与されました。そして和食は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、2015年5月1日から10月31日までミラノ市で開催された食の万博では日本館が一番人気であったとの事であり日本食が世界でポピュラーな料理になりつつあります。更にこの度展示デザイン部門で「金賞」を受賞したとのことです。果して今年は、日本人がどの様な活躍を世界でしてくれるのか楽しみです
さて、円安(1ドル=120円位)の定着とTPPの批准(2016又は17年)といった経済環境に於いて今年は日本の製造業の国内回帰となるのか注目したいと思います。
昨年の日本の工作機械の総受注額は、(一社)日本工作機械工業会の年初予測値1兆5500億円には少し届きませんでしたが、内需は政府、県各市町村の設備投資に対する補助金交付効果により約6000億円近くになりました。ここ5年間の内需平均は約4000億円でありますので2015年の内需は補助金特需と思われます。日本の工作機械の受注を中期的(10年スパン)に見ると、私見では外需が2兆円を超える一方、内需は景気変動により2000億円~4000億円台に落ち着くのではないでしょうか。
今後の工作機械の方向性につきましては、次の三点を挙げたいと思います。
第1点として、工程集約と工程分散です。この分野では特にヨーロッパメーカーが先行していますが、5軸加工機、ターニングセンタ―、ギヤースカイビング機等の工程集約型の機械が多品種少量ワークに向いているので今後の伸びが期待されます。一方工程分散は自動車部品共通化等によりワークの大量生産に向いた30°立型マシニングセンターの連結や量産専用機の使用が増加すると思われます。
第2点として、3Dプリンター、ハイブリッドマシンです。複雑部品試作、少量生産には金属生産3Dプリンター及びレーザーマシン等を組み合わせたハイブリッドマシンの普及が予測されます。
第3点としてI o T ( Internet of Things) への対応です。好むと好まざると工作機械とインターネットが連結し各種情報のやり取りが盛んになります。工場内機械稼働状況の見える化やリモート機械故障修理等がまず普及と予測されます。
日工販としましては、本年もメーカー様、関係諸団体様、関係官庁様との連携を密にして工作機械業界の発展に貢献してゆきたいと思います。
最後となりますが、皆様の益々のご多幸とご健勝を祈念申し上げて、私の年頭のご挨拶とさせて戴きます。
「今年こそ、たわわな実をつける年」
●日本金型工業会 会長 牧野俊清
平成28年の新春を迎えるにあたり、謹んで会員の皆様、関連官公庁、関連業界の皆様にお慶び申し上げます。
2008年9月のリーマンショック、円高、2011年3月の東日本大震災が、日本経済を苦しみ続けました。特に円高は2007年6月1ドル124円だったのが、2012年2月には76円と高くなりましたが、アベノミクスによって昨年は120円前後で安定しており、12月は123円を超えています。金型の国内回帰も一部始まっています。
リーマンショック後に金型生産額は一時6割と厳しい状態でありましたが、微増が続き、8割までに戻しています。型種、需要業界の違いもあり、会社によって、業績は様々のようですが、機械統計では、鍛造専業金型がリーマンショック前の約2倍であり、ゴム専業金型が昨年の1.8倍、大型プレス専業金型も活況です。
昨年は、日米豪など12ヶ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意と韓国・台湾の参加表明があり、COP21による温暖化対策の進展、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題、ISによるテロと空爆と大きなニュースが続きました。また、安倍内閣では、経済成長のため法人税の低減と、(金型も含まれる)設備投資の増加を方向づけようとしています。
2016年の干支(えと)は丙申(ひのえさる)です。昨年は乙未(きのとひつじ)で、木が土に対して将来のため根を張るため、思い通りには行かないイメージだったそうですが、今年は、陰陽五行では、十干の丙は陽の火で「明らか」という意味があり、十二支の申は陽の金で、「樹木の果物が熟して固まっていく様子」という意味であり、これまでの努力が形になっていくという期待が持てる年だそうです。 事実、この前の丙申は、60年前の1956年(昭和31年)で、神武景気と言われた時期です。今年の日本経済の発展と、金型業界の好況を、切に祈るものです。
一昨年3月、日本金型工業会で「新金型産業ビジョン」の作成をしました。①技術力、②営業力(発信力)、③新分野への展開と付加価値向上、④海外市場とグローバル展開、⑤人材(経営者・社員)がキーワードですが、今年こそ、たわわな実をつける年ではないかと思います。
昨年、国際金型協会(ISTMA)の総会に、オブザーバー参加された方から、教えていただいたのですが、ドイツの金型研究機関の調査では、金型の技術力は、1番ドイツ、2番日本、3番スイス、4番韓国、5番カナダであり、市場規模では1番中国、2番アメリカ、3番日本、4番ドイツ、5番韓国だそうです。我々日本の金型は、品質、納期、価格において世界トップレベルの技術と技能を有しているものと自負しておりますが、それは決して金型メーカーのみによるものではなく、金型材料・工作機械・熱処理・表面処理など日本が誇る世界一の周辺産業の支援によるものでもあります。技術力面では、ドイツがインダストリー4.0として取り組んでいますが、日本においては、産(金型業界+顧客+賛助会員を初めとした金型周辺産業)・官・学(大学・研究所)がさらに協力することにより、世界トップレベルを維持しなければなりません。
日本金型工業会は、現在、会報・ホームページのリニューアル等、サービスの拡充を進めております。真に全国組織としての工業会を目指し、金型シンポジウムを一昨年の九州地区、昨年の北陸地区に続き、本年は東北地区で第3回として開催を計画しております。全国からのご入会が増え、金型業界がより活性化することを期待しております。
緊急事態が続く今年においても、繰り返しになりますが、会員、賛助会員、顧客、経済産業省素形材産業室始めとした監督官庁、学会の大きな応援により、この難局を、「元気な業界」として乗り越えていきたく思う所存でございます。皆様のご理解ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げ、年頭の挨拶とさせて頂きます。