2015 年(暦年)工作機械受注実績の概要
日本工作機械工業会がまとめた2015年(暦年)工作機械受注実績は以下のとおり。
1.受注額
・概 況
2015 年の工作機械受注額は、前年比▲1.9%の1 兆4,806 億円となった。5 年連続で1 兆円を超え、2007 年(1 兆5,900 億円)、2014 年(1 兆5,094 億円)に次ぐ、史上3 番目の受注額となった。このうち、NC 工作機械は、1 兆4,500 億円(同▲1.6%)で、受注額全体に占めるNC 工作機械の比重は97.9%(同+0.2pt)で、2 年連続で過去最高比率を更新した。受注総額の内訳をみると、内需は5,862 億円(同+18.1%)、外需は8,944億円(同▲11.7%)で、外需比率は▲6.7pt の60.4%に低下した。
・内需の動向
2015 年の内需は、3 年連続の増加となる5,862 億円(前年比+18.1%)で、リーマンショック以降では初めて5,000 億円を上回った。年間を通じて為替水準が安定したことで、企業収益が継続的に改善し、老朽設備の更新が捗った他、一部に円安を受けての国内生産回帰の動きも窺えた。また、生産性向上設備投資促進税制、ものづくり補助金及び省エネ補助金等、各種政策効果が中小製造業を中心に設備投資を下支えした。
業種別では、「一般機械」同+10.9%(2,218 億円)、「自動車」同+21.6%(2,039 億円)、「精密機械」同+23.2%(211 億円)、「航空機・造船・その他輸送用機械」同+51.5%(312 億円)等、全11 業種中9 業種で前年実績を上回り、減少は「電気機械」同▲1.7%(269 億円)及び「官公需・学校」同▲17.6%(34 億円)の2 業種となった。また、「電気機械」、「精密機械」、「官公需・学校」を除く8 業種でリーマンショック以降の最高額を更新した。例年通り「一般機械」の受注額が最多となったが、「自動車」等伸び率で「一般機械」を上回った業種が多く、結果として、「一般機械」が内需全体に占める比重(37.8%)は、2004年(39.3%)以来11 年ぶりに4 割を下回った。
・外需の動向
2015 年の外需は、中国経済の不振が世界各国の設備投資の重しとなったほか、昨年の外需をけん引した、アジアのEMS(電子機器受託製造サービス)関連特需の剥落、大幅な原油安による米国でのエネルギー関連需要の減少等が影響し、前年比▲11.7%の8,944億円と、2 年ぶりに減少した。但し、2014 年(1 兆130 億円)、2011 年(9,046 億円)に次ぐ史上3 番目の受注額であり、高水準の受注が継続している。アジアは同▲14.5%の4,435 億円で、2 年ぶりに減少した。
このうち、東アジアは同▲13.5%(3,268 億円)、その他のアジアは▲17.1%(1,167 億円)となった。主要国別にみると、円安により、日本製工作機械の割安感が向上したことから台湾は同+20.2%(282億円)、韓国は同▲2.3%(428 億円)と健闘したが、最大需要国である中国は、設備過剰が改善されない状況下で、四半期実質GDP 成長率の7%割れ、株価の急落、通貨人民元の切り下げ等、取り巻く経済状況は厳しく、更にEMS 関連特需が剥落したことで、同▲17.7%(2,552 億円)に留まった。但し、自動車及び航空機関連需要等は前年実績を上回っており、不安定な状況下でも一定の成長需要が見受けられた。東南アジアは最大輸出先である中国経済の低迷が大きく響いた。欧州は、同▲4.5%の1,810 億円で、3 年ぶりに減少した。緩やかな景気回復が持続したものの、ギリシャ債務危機の再燃、独フォルクスワーゲンのディーゼル車違法ソフト問題、テロ事件の頻発等厳しい社会経済情勢下にあって、自動車や航空機向け受注が下支えする形となった。
主要国別では、航空機の大口スポット受注が見られたフランス同+42.7%(228 億円)を除き、ドイツが同▲12.2%(496 億円)、イギリスが同▲18.9%(224億円)、イタリアが同▲12.9%(213 億円)と概ね減少した。北米は、同▲10.4%の2,562 億円で、6 年ぶりに減少したものの、5 年連続で2,000 億円を上回り、史上3 番目の受注となった。中核の米国は同▲8.8%(2,271 億円)で、自動車や航空機関連は堅調が続いたものの、原油安によりエネルギー関連の商談が先送りとなったほか、中国経済の 低迷及びドル高による輸出が低迷し、一般機械向けが減少した。またメキシコは同国への自動車向け投資が一巡したこともあり、同▲30.6%の156 億円に留まった。各地域別の受注シェアは、アジアが49.6%(同▲1.6pt)、欧州が20.2%(同+1.5pt)、北米が28.6%(同+0.4pt)となった。受注額自体は3 極とも前年比マイナスであったが、とりわけアジアの減少幅が大きかったことから、相対的に欧州と北米のシェアが増加した。国別シェアでは、1 位が中国の28.5%(同▲2.1pt)、2 位が米国の25.4%(同+0.8pt)、3 位は年央までEMS 向け特需が発現したベトナムで5.8%(前年の国別公表なし)の順となった。なお、2015 年より国・地域別統計を細分化し、アジアの「その他アジア」にフィリピン、インドネシア、ベトナムを、また、欧州の「その他の西欧」に、トルコ、スイスの内訳を加えた。また、その他の地域を「オセアニア」、「中近東」、「アフリカ」に分けて掲載している。
・機種別の動向
受注額を機種別(含むNC 機)でみると、全11 機種中6 機種が前年比減少となった。
主な機種別の受注額は、旋盤計が前年比▲6.4%(4,348 億円)となり、マシニングセンタは、「うちその他」同+17.5%(612 億円)が過去最高額を記録したものの、EMS関連特需剥落により、「うち立て形」が同▲9.0%(4,075 億円)と減少し、マシニングセンタ計も同▲3.9%(6,670 億円)と減少した。その他の機種では、研削盤 同+12.9%(1,036 億円)や、歯車機械 同+28.7%(334 億円)、専用機 同+15.4%(348 億円)など機種が、内外需とも堅調に推移した自動車関連需要の影響もあり、前年を上回った。その結果、機種別構成比では、受注総額に占める割合が最も高いマシニングセンタが前年比▲0.9Pt の45.1%、旋盤が同▲1.4Pt の29.4%となった。機種別のNC 比率については、全11 機種のうち8 機種で上昇し、全体では前年比+0.2Pt の97.9%となった。なお、2015 年より機種別の内訳を細分化し、旋盤計の内訳に「横形」、「立て・倒立形」を追加し、それぞれの項目に更に「うち複合加工機」の内数を併載したほか、研削盤に「うち円筒研削盤」と「うち平面研削盤」を、マシニングセンタには「立て形」、「横形」、「その他」の項目に「うち5 軸以上」の内数を追加した。その結果、旋盤計(4,348 億円)のうち、旋盤(横形)が3,996 億円(機種内構成比91.9%)、旋盤(立て形)は352億円(同8.1%)となった。なお、旋盤計における『うち複合加工機』は1,311 億円(同30.2%)となった。マシニングセンタ計(6,670 億円)における『うち5 軸以上』は1,084億円となった。
2.販売額
販売額は前年比+7.8%の1 兆5,326 億円で、2007 年(1 兆5,226 億円)を上回り、過去最高額を更新した。うちNC 機は同+8.3%の1 兆5,031 億円となり、総額・うちNC 機共に2 年連続で増加した。機種別(含むNC 機)にみると、全11 機種中、8 機種が前年比増加となった。主な機種別販売額は、旋盤計が前年比+6.2%(4,633 億円)、マシニングセンタ計は同+7.9%(6,872 億円)となった。
3.受注残高
2015 年末の受注残高は、前年比▲6.9%の6,075 億円となり、4 年ぶりに減少した。当該年末の受注残高を直近3 カ月(15 年10~12 月期)の販売平均で除した「受注残持ち月数」は5.0 カ月で前年末と比べ0.5 カ月減少した。また、NC 工作機械の受注残高は同▲7.3%の5,790 億円となった。