「今年は再挑戦の年! 1兆5,500億円を目指す」 日本工作機械工業会が新年賀詞交歓会を開く
日本工作機械工業会(会長=花木義麿 オークマ社長)が1月13日、都内のホテルニューオータニで新年賀詞交歓会を開催した。花木会長のあいさつの概要は以下のとおり。
今、世界各国において、製造業の技術革新が強力に進められている。ドイツは第4次産業革命Industrie 4.0を唱導し、米国ではIndustrial Internetの構想を推進するなど、 スマートファクトリーの実現に向けた取り組みが強力に進められている。日本では、ロボット革命を軸にして製造技術の革新が進んでいる。世界の主要工作機械見本市においてIoTを意識した機械やAdditive Manufacturing技術と融合した工作機械も提案されている。工作機械のイノベーションはまさに日進月歩であり、開発競争は熾烈さを増している。日本も産学官の英知を集結して技術の高度化を図り、世界のものづくりの発展に貢献していかなければならないと強く感じている。
市場面では、ますますグローバル化が進展している。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定が発効すれば、日本はアジア・太平洋圏との経済連携が強化される。国際分業が進み、将来はTPP協定加盟国、及びその周辺地域にも機械工業が浸透していくと考えられる。このエリアは我が国工作機械業界にとって地の利がある市場である。ビジネスチャンスの拡大が期待される。
雇用面では、少子高齢化の進展と共に工作機械業界も人材の確保・育成の問題に直面している。高付加価値製品を市場に送り出すためには、世の中に無いものを製品化していく開発・設計・技術、そして長年に亘る地道な修練を積んだ職人技が必要である。今後のものづくりの発展を担う優秀な人材の確保・育成を進めていかなければならない。工作機械産業は世界の製造業の発展を支える産業である。世界のあらゆる地域で、ソリューションの提案、アフターサービスの提供ができるグローバル人材が、従来にも増して必要となってきている。このような環境の変化を踏まえ、本年の日工会活動では、中長期的な視点からわが国工作機械産業が克服すべき諸課題への取り組みを進化・発展させていく。「工作機械産業ビジョン2020」で示された、産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOFの求心力強化、人材の確保・周知策の強化を一段と進化させるべく、積極的に取り組んでいく。
本年は11月に東京ビッグサイトにてJIMTOF2016が開催される。このショーを大成功に導くべく、日工会を挙げて全力を傾注する。今回のJIMTOFでは「東新展示棟」が新設され、展示面積で約16,000m2、小間数として約10%増加する。これまで出展する機会の少なかった海外出展者を中心にこの新展示棟を活用して頂き、JIMTOFの国際化を推進 していく。そして、来場者の皆様に満足頂ける先端技術、最新の製品を各社から提案していく。また、JIMTOFに併せて、理工系の学生を対象に恒例の「工作機械トップセミナー」を開催する。企画展示やセミナーを通じて、一般の方々に工作機械産業の重要さと面白さを紹介していく。技術分野については、産学の英知を結集して先端技術の研究や規格化・標準化に取り組むべく、「加工システム研究開発機構」を昨年7月に立ち上げた。先端技術 の研究開発、標準化技術の研究開発、教育・普及の3部門が活発な活動を開始している。その他、委員会活動を中心に、世界における日本の工作機械業界の役割を強く意識し、世界のものづくりの発展に貢献する諸活動を展開していく。
2015年の受注額と2016年の受注見通しについてだが、2015年の受注額は1兆5,000億円程度になったものと見込まれる。残念ながら、年初見通しの1兆5,500億円をいくぶん下回ったものと思う。この背景には、中国を中心とした新興国経済の成長鈍化、アジアの電気・精密分野の投資減速、また原油価格の劇的な低下によりエネルギー関連産業の投資が低迷するなど、年央以降、外需が減速したことが挙げられる。内需は、円安での為替の安定により企業収益が好転している中、省エネ補助金など各種政策効果により、年央大いに盛り上がった。その後、補助金効果の剥落や今後の補助金の様子見などがあり、やや一服感が見られたが、しかしながら受注総額としては2007年に記録した史上最高の1兆5,900億円、2014年の1兆5,094億円に次ぐ高水準が維持できたと見込まれる。
そこで本年がどうなるかだが、日本が得意とする知能化や自動化、そして高速・高精度を追求した高付加価値分野の工作機械は、国内外で多くのユーザに支持され、求められている。自動車、一般機械、航空機等、工作機械のユーザ産業は将来に向かっての設備投資を着々と進めている。世界経済は現在の踊り場を経て、次第に持ち直しに向かうものと期待される。この様な経済、そして工作機械市場見通しを踏まえ、本年2016年の工作機械の受注額は1兆5,500億円程度を見込みたい。昨年の見通しに再挑戦したいと思っている。この達成において各社とも精一杯努力していく所存である。本年も業界各社は需要開拓に全力で邁進し、充実した1年にしていきたい。ぜひとも再挑戦にご協力いただきたい。
「競争領域を確保しながらいかに協調領域を最大するか」
来賓を代表して、糟谷敏秀 経済産業省製造産業局長が、「今年は様々な賀詞交歓会会場で、皆様どこに行っても参加される方が多いとのこと。賀詞交歓会に参加される方の数は景気の指標ではないか、と私は思っていて、去年にも増して良い年になるのではないかと期待している。今年は2年に1度開催されるJIMTOFが開催される。ぜひIoT時代のものづくり分野において、特徴ある技術・サービスが展示され世界に向けて発信されることを期待申し上げる。第四次産業革命といわれている中で、これは昔日本でやっていたIMSとどこが違うのか、どうして日本は続けて提案できなかったのか、という問題提供をしてもらったが、こういう経緯から何を学ぶべきか、どうしてこういうことになったのか、とヒヤリングしながら調べている。その中で2004年ほどの報告書の中で、いろんな進展があるが、協調領域と競争領域のバランスが取れていない、という報告があった。おそらくこのあたりの問題点が十年以上経っても大きく変わっていないのではないか、という気がしている。第四次産業革命の流れの中ではハード面の技術や品質をさらに磨いていくということは基礎体力として必要だが、他方で新興国のハード技術の追い上げもある。モノがどんどんコモディティ化していく流れもある。こういうものにどのように対応していくか、ということが非常に大切だと考えている。ロボット革命イニシアティブ協議会を昨年5月に立ち上げたが、日本工作機械工業会様から参加を頂いて、IoT時代のビジネス変革を目指して様々な変革を進めているところである。その中で、様々な議論を通して感じるのは経営判断のスピードが増す中で、競争領域と協調領域とどうバランスを取るか、言葉を換えると競争領域を確保しながらいかに協調領域を最大にしていくか、ということが問われている。新しい技術をつかって効率化を進めるだけでなく、機械の保守や操作の支援、効率を求めた製造プロセスの提案等を実現するためのシステムの提案等々、カスタマーの求める価値を提供して差別化、付加価値化を図るビジネスにどうやってビジネスモデルを転換するか、ということが求められていると考えている。」とあいさつをした。