「お客様の動向を注視思いきった経営を」日本金型工業会東部支部が賀詞交歓会を開く

加藤支部長
加藤支部長
 日本金型工業会東部支部(支部長=加藤忠郎 日進精機相談役)が1月21日、東京・上野精養軒で賀詞交歓会を開催した。懇親会に先立ち、山本 聡 東京経済大学経営学部 准教授が「国内金型企業・ものづくり中小企業の現状と方向性~外部環境の変化に対峙する経営者の姿~」をテーマに講演を行った。

 懇親会では、加藤支部長が「昨年はインダストリー4.0やIoT等が賑やかだった。確かにものづくりにITを活用することは非常に結構なことだと思っている。人間が携わらないでモノが自動的に情報を吸収して分析してまた自動的に発信することによって、だいぶ世の中が便利になった。例えば、スマートフォンは位置情報を発信するが、それを利用して、発信体が時速30キロ以上で動いていればそのルートは交通渋滞ではないということが分かる。ただ、日本人は横文字のお題目に弱いんじゃないか、少し騒ぎすぎじゃないか、という気もしている。ドイツがインダストリー4.0の本場だということで日本のビジネスマンがドイツに押しかけるそうだが、お題目的な要素が強いので、向こうも驚いているという話も耳にしている。いずれにせよ、良いものは活用しなければならないが、単にブームで踊らされることのないようにしたい。話は変わるが、中国に進出している企業は人件費の高騰で悩んでおられるようだ。経済成長率が鈍化しているのになぜ人件費が高騰しているか、というと、生産人口が減っているので、有効求人倍率がどんどん上がり、人件費が上がると聞いている。私どものお客様の中にも国内回帰を考えている会社がある。昨年の中国のGDPも7%を切っているのではないか、といわれているが、実際の発電量のような現実に即したものでみると、もっと低いのではないか、という見方もあるようだ。タイも一昨年ほどから台数も落ち込んで、これもやはり景気の踊り場に来ていると感じている。いずれにしても今年は良い方向にも悪い方向にも大きく変化する年ではないか。われわれもお客様の動向を注視して思いきった経営をしていかなければならないと感じている」と開会のあいさつをした。

遠山 経産省 素形材産業室長
遠山 経産省 素形材産業室長
 来賓を代表して、遠山 毅 経済産業省製造産業局素形材産業室長があいさつをした。この中で遠山室長は、「昨年の経済全体は、特に大手を中心として非常に回復基調にあり、デフレ脱却という視野に入っていると思う。こうした中において、素形材産業をみると、なかなかそういったことが実感できないという話をちらほら聞く。この金型産業について統計上では昨年の生産高は前年比の8%増ということもあり、所管業種の中では結構調子が良いと承知している。こうした中において、年初から株価が下がったり、世界的に治安の問題が発生したりと不透明なところがあるが、一時期に比べれば円安であったり、海外における人件費が高くなったりして生産が国内に戻ってきていると聞いている。こうした傾向が進んでいくということで、経済の好循環に繋げていきたいということで、われわれも産業界、政府が一体となって取り組んでいきたい。TPPも大筋合意をしたので、ものづくりにおいてはまさに追い風になる。為替の問題も過去に比べると相当改善をしているので、ぜひ、この追い風に乗っていっていただきたいと思っている」と声援を送った。

牧野 日本金型工業会会長
牧野 日本金型工業会会長
 続いて牧野俊清 日本金型工業会会長(長津製作所会長)が、「ドイツに関しては最近インダストリー4.0という話題があるので調べてみた。驚いたのはドイツができたのはちょうど明治維新の頃にできたということ。州がいくつかあるのだが、ハンザ同盟ブレーメン市など時代錯誤ともいうような名前の街があった。フラウンホーファーは、その州ごとにまとめてやる、大学も州立や国立があってもひとつやふたつくらいで、その地域で研究開発等して技術を高めているようである。台湾もITCからいろいろなベンチャーが育てられているわけだが、日本においても研究所と協力いただきながら展開していくということだろう。それぞれの県の産業技術研究所などとの連携をもっと産業界とできるシステムになると力強いものになるのではないか、今後はそういう形になるのではないかと思っている」とあいさつをした。

 新入会員の紹介のあと、牧野二郎牧野フライス製作所社長の発声で乾杯をした。宴もたけなわのころ、森谷長治副支部長(森谷鉄工所社長)の中締めで散会した。

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