希少資源問題と日本経済へのダメージ

最近、希少資源であるレアアースが大きな問題として取り上げられている。

希少資源といえば昨年6月、USTR(米通商代表部)は中国がレアメタルの輸出を制限し、国際価格の上昇を招いているとしてWTO(世界貿易機構)に提訴した。中国は国内の消費量が増加して輸出を制限したのか、政策的にタイトにしたのか謎なのだが――というより、このような問題は将来ずっとついて回る予感がする。ひょっとしたら希少資源を中国が自国で消費する可能性も十分にあり得えるのだ。

レアアース問題といえば、今年の正月早々に同じようなニュースがあった。中国はハイテク技術に欠かせないレアアースの輸出、生産の管理を強め、輸出許可枠を4年で40%も減らすと発表したのだ。40%といったら半分に近い。正月早々、嫌なニュースだと感じたのを覚えているが、今のように大きな問題にならなかったことを不思議に感じる。

これに関連することがたびたびあった。10年も15年も以前から中国に意地悪をされるたび、国内は大騒ぎした。ところが、各企業が中国以外のレアメタルの資源開発や代替開発を叫んでいたにもかかわらずこの10年間、あんまり進んでいないのを残念に感じる。ちなみに、ある資源開発の会社は、1000億円あれば、他国で開発できると以前から訴えているようだ。

中国が過去、レアメタルをタイトにするたびに、国内企業は製品の値上げ問題が浮上し、景気の悪い時に企業は、涙ぐましい賃金カット等のコスト吸収をしてきた経緯がある。
結局、これらの問題を考慮すると、当局は備蓄することしか能がなかったようにも思える。

このままいくとハイテク産業のみならず、ハイブリッド車(HV)の製造も危なくなる可能性がある。延いては日本経済へのダメージも相当なものになると感じる。すでに希少資源の在庫も怪しくなっている。

ところで、最先端技術の製品やそれらの開発に欠かせない材料はレアメタルであり、ほとんどの製造業がレアメタルを必要としているわけだが、旺盛な需要は日本だけではない。経済発展が著しいBRICsをはじめとする開発途上国もハイテク産業の成長を睨み著しく需要が拡大している。

世界中の製造業にとって必要不可欠なレアメタルの需要は、2050年までに現在確認されている埋蔵量の数倍を超えるものと予想されている。これは大変深刻な問題であり、資源リスクを回避するには「うまく使うこと」、「替わりを探すこと」だと言われている。

2007年には、内閣府、経済産業省、文部科学省、JST(科学技術振興機構)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、府省を横断して「元素戦略プロジェクト」、「希少金属代替材料プロジェクト」を国家レベルでスタートさせているが、このプロジェクトをもっと大々的にPRできないものかと思う。

すでに1950年からレアメタルの一種であるタングステンを代替する工具材料の研究は行われていたようだが、炭化チタン系サーメットを使う研究開発が当時より行われ、上記のプロジェクトでもサーメットの弱点である不均一性を追求している。

このプロジェクトはこれまでに、ジルコニウム、モリブデン、窒素などの元素を加えて混合し、高性能な熱処理で、従来よりも硬くて靱性に優れたサーメット材料を開発している。特殊な顕微鏡やコンピューターによるシミュレーションや、さまざまな設備と技術を駆使し、材料の組織をナノレベルでコントロールしたことにより、良い成果が出せるようになったようだ。

ちょうどこのプロジェクトについて1年前に書いたことがあるが、私はその後の発展がとても気になっている。

いずれにせよ、これらの希少資源の代替品の開発等は、民・官あげて“実用化”を加速すべきである。

日本の技術開発力は強い。この技術の進歩を止めないようにするには優秀な“研究者”を育てる土壌が必要だと強く感じる。

資源のない日本。企業も国も目指す道は“科学技術創造立国”しかない。

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