【レポート】ヤマザキマザックが「エアロスペース テクノロジーセンタ」オープン ~航空機産業向けに最先端の加工技術とサポートを提供~

 ヤマザキマザック(社長=山崎智久氏、本社:愛知県大口町)が、世界的に好調な航空機産業の顧客を対象に、最先端の5軸加工技術の提供や各種サポートを行うための「エアロスペース テクノロジーセンタ」を本社内に開設し、9月1日~2日の2日間、オープンハウスを開催した。グローバルに展開する同社海外テクノロジーセンタでの航空機関連のアプリケーション例の紹介、各種加工技術の相談及びテストカット、最新の切削工具・難削材加工技術・周辺機器などの情報提供やサポートを行うことで、顧客の要望に迅速に対応し、高度先進加工の情報発信を行うのが狙い。

 “航空機部品加工をサポートする”という意気込みをみせたヤマザキマザックの「エアロスペース テクノロジーセンタ」をレポートする。

日本国内での航空機産業に特化したテクノロジーセンタは今回が初!

中西常務執行役員 営業本部長
中西常務執行役員 営業本部長

 新設されたテクノロジーセンタの延べ床面積はショールーム及び事務所を含めて750㎡。足を入れると、正面に巨大なMAZATROLのディスプレイがあり、加工映像が流れている。映し出されているのは、美濃加茂製作所内のF棟で展示している同時5軸制御横形マシニングセンタ「VORTEX HORIZONTAL PROFILER 160」。このマシンは大きくてこの場所には入りきらないという理由から、美濃加茂製作所内で常設展示されているとのこと。モニター画面で、現地の加工映像をリアルタイムで中継しており、IoTを取り入れた仕組みを披露していた。

 同社のエアロスペース テクノロジーセンタだが、他にも1999年に、航空機産業が盛んな米国・カリフォルニア州Gardena 市に「Western Technology Center」を設けている。美濃加茂製作所のみならず、世界を視野に入れたIoTの展開について中西正純常務執行役員営業本部長に尋ねてみたところ、「今回は美濃加茂と繋がり、テストカットの実演がダイレクトに見られますが、今後は世界へ向けて広げたいと思っている」と返答があった。また、日本国内での航空機産業に特化したテクノロジーセンタは今回が初めて。本社内で開設した理由については、「日本の航空機産業の集積地ともいわれる中部圏のお客様に地の利を活かしてもらいたい」と話した。

迫力の巨大モニター
迫力の巨大モニター
 
 同社の技術部アプリケーションセンタはこの場所にあり、世界中のテクノロジーセンタを束ねている。年に3回の世界中のアプリケーションエンジニアが集まったミーティングも行っており、情報交換や情報伝達を行っている。グローバルに展開するマザックならではのIoT構築に期待が膨らむ仕掛けだった。





トータルソリューションで現場の製造工程を支援

タービンケース 材料はInconel718
タービンケース 材料はInconel718
 センタ全体を見回してみると、最新の5軸加工機「VARIAXISシリーズ」と複合加工機「INTEGREXシリーズ」の計6台が展示されていた。フレーム、ケーシング、ブリスク、ブレード、ランディングギアなど代表的な航空機部品の最新加工のデモ加工が来場者の“加工意欲”を刺激する。従来は複数台による加工プロセスが必要だったものが、マシン1台で完結させるという、大幅な生産リードタイムの低減が可能になるのだから、来場者も興味津々。真剣にマシンを見つめる目が印象的だった。

ボーイング747のランディングギア
ボーイング747のランディングギア
 マシンが実際に加工をしているので、見学すると理解しやすいが、このように一度に航空機のアプリケーションを見学できる場所というのは、世界的にみてもそうない。しかも、顧客の製造工程を想定して、タッチプローブを用いた機械精度計測、機内ワーク計測を行い、製品加工をイメージした実演を行うとともに、機械監視のデモも見ることができるのだから、ユーザーは加工現場の課題解決に向けた幅も拡がることだろう。

 写真にあるのは展示中のボーイング747のランディングギア。航空機部品は強度の関係から、一体モノが望ましいとされているが、深穴加工となると嫌なビビリと戦わなければならず、削り出しの困難さも天下一品だ。このランディングギアは、同社の「INTEGREX e-670H」を使用して実際に加工された製品。最大1070mmの振りとベッド長さ6mを誇るこのマシンは、ランディングギアの超深穴ボーリング加工に対応しているという信頼性の高さを誇る。

 他にも目を引いたのは、千代田金属工業が加工した難削材ディスクの特殊加工品。加工歪を生じない航空機タービンディスクのハイブリッド加工技術が展示されていた。加工した機種は「INTEGREX e-650 HSII」。このマシンには新しい技術が搭載されており、その概要は、旋盤、穴開け加工に引き続き、ワイヤー放電加工による外周のブローチ粗加工までを、ワンチャッキングで24時間自動連続無人加工を行うというもの。サラリと記述をしたが、加工をしたマシンでは、なんと、ワイヤー放電もついているというから驚いた。複合加工機もここまで来るとは!

 また、同社のノウハウを集結した生産支援ソフトウェアも展示しているので、工場経営に踏み込んだ最適なトータルサポートの提案もしてくれる。マザックが顧客にこうした場所を開放し、提案することの意味を、中西営業本部長は、「お客様の生産性を支援するには、周辺機器メーカーと一緒になって、世界に競合できるようなシステムを作り上げることも重要だと考え、構築しております。これらの仕組みをお客様に活用していただき、お客様とともに発展したいという思いで新設しました」と気持ちを話してくれた。

 なお、同社では、設備機のトラブルに年中無休の24時間体制で迅速に対応する「オンラインサービスサポート」が顧客をバックアップしている。設備機のトラブル対応から相談に至るまで、履歴を詳細に把握した熟練サービスマンが対応してくれる。これについては、気付いていないアラームでも素早対応で連絡してくれる等、無人運転をしている現場では大助かりとのこと。機械トラブル時のサポート機能だけでなく、マザトロールMATRIX以降に搭載されたインテリジェント機能のひとつである「インテリジェントメンテナンスサポート」に対応した予防保全機能、オンラインテクニカルサポートを設置したことでテクニカルアドバイスも可能になった。

 ヤマザキマザックのエアロスペース テクノロジーセンタは、本社内に設置されているだけあって、設計・制御・NC開発・生産技術・営業技術の人材をフル活用できるという、まさに製造現場に必要な情報が有利に働く場所でもあった。

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