牧野フライス製作所が5軸制御マシニングセンタ「DA300」と「D200Z」の発表会見を開く

記者発表の様子
記者発表の様子
 牧野フライス製作所(社長=井上真一氏)が、部品加工市場/金型加工市場のそれぞれの要求に応えるため、異なる特性の5軸制御立形マシニングセンタ「DA300」(部品向け)と「D200Z」(金型向け)の2機種を同時開発し、9月2日にリリースした。
 従来、同社のDシリーズは、部品加工向け、金型加工向け、と区別してリリースをしたことがなかったが、今後は部品加工に特化したDAシリーズ、金型加工に特化したDZシリーズと、それぞれの市場に特化した製品をラインナップする。

 

部品加工市場向け「DA300」

DA300
DA300
 この製品は部品加工で求められる「信頼性」を追求して開発した5軸制御立形マシニングセンタ。信頼性の示す内容のひとつに以下の機械構造が挙げられる。
 ①低重心な機械本体、②高剛性なブリッジ構造コラム、③高モーメントで長寿命な直動案内、④耐久性の高い新規開発20,000回転主軸、⑤Vision B.T.S、ATC、LAC制御、スーパーGⅠ.5制御。

 ユーザーの気になるもののひとつ、“チップマネジメント”にも注目したい。センタートラフによるすぐれた切りくず排出や、多段式サイクロンフィルターの採用による永続的な切りくず回収に加え、垂直面と急傾斜面で構成された排出性の高い加工室内が魅力的である。他にも耐久性の高い1枚カバー(X軸)と、大流量主軸テーパクリーニングエアも信頼性を高めている。また、干渉防止機能としてぶつからない主軸(コリジョンセーフガード)も安心した5軸加工を提供してくれる。

説明をする商品課の長友主任
説明をする商品課の長友主任
 今までのDシリーズで培われた俊敏で安定した傾斜・回転軸を採用し、環境温度変化に強い機械構造に今回マキノが新しく取り組んでいる内容が盛り込まれている。同社の長友林太郎 営業業務部商品課主任は、「お客様の環境変化に強い機械構造にしている。また、従来から取り組んでいる機能のひとつであるボールねじ軸心冷却も採用している。またポイントのひとつとして、工場レイアウトがある。新たに増設したいというお客様の要求も非常に多い。したがって、工具準備時間を短縮できる拡張可能な大容量工具マガジンや拡張可能なパレットマガジン(7枚/19枚)を準備している。」と話した。

 鈴木敏弘 開発本部ゼネラルマネージャは、開発の狙いについて、「われわれが考えている部品加工はダイナミックかつ速い。特にこの機械は非切削時間の短縮を狙ってつくっている。ワークや工具の交換時間を含めて、切りくずを出していない時間をいかに短縮するかが大きな課題だった。また、自動化を視野に入れたつくりとなっているが、自動化をするためには、切りくずの排出性が重要である。無人で加工をしても切りくずが溜まってしまっては、掃除しなければ次に進めない。これがお客様の悩みとなっていたが、今回そうした悩みを払拭すべく改善している。」と優位性を教えてくれた。

 高速高加速度性をうたっているこのマシンの主軸だが、20,000回転のHSK-A63、40番相当。最大出力22kW、最大トルクで91.3Nm。高速高加速度を掲げているだけあって、「DA300」が0回転から20,000回転までの立ち上げる時間はなんと1.5秒! ちなみに従来の立ち上げ時間は「D300」が3秒、「D500」は6.1秒というから、ものすごい進化だ。

 5軸加工機というと、主軸とワークの干渉が気になるが、今回は主軸端面に埋め込まれたクーラントノズルで干渉領域を減らしているところも嬉しい。ATCマガジンも同社が部品加工で好評を博している横形マシニングセンタ「a1シリーズ」と同じリング式ATCマガジンを採用している。同社のa1シリーズがなぜ好評なのかというと、ATCは複雑な仕組みをもったものが多く、色んな場面で止まってしまうと危険性があるが、同社のものは、これらの悩みを払拭しているという理由から好評のようだ。今回、この信頼性を「DA300」にそのまま移植した形となった。

開発の狙いを説明する開発本部 鈴木ゼネラルマネージャ
開発の狙いを説明する開発本部 鈴木ゼネラルマネージャ
 サーボ駆動のATCシャッタにも注目したい。一般的には、エアシリンダを使って動かしているのだが、エアの品質、使っているスイッチの故障などで止まってしまうことがある。特に部品加工の場合、工具交換頻度がものすごく高い。そのたびにATCシャッタが開け閉めされることを踏まえ、「DA300」はATCシャッタにサーボ駆動を採用している。つまり、ボールねじとモータで駆動されるシャッタである。これにより、耐久性を上げて、高速でスムースな動きが実現したのだ。ちなみに工具交換時間は3.5秒。通常、業界では4秒をきると速い、といわれているが、同社では、競合他社に負けないスピーディさをアピールした。

 また、工具の破損検知「Vision B.T.S.」も優位性のひとつだ。ビジョンにはカメラがついている。工具の交換前、交換後に撮像して画像を比較し工具の破損検知をするもので、これもスピードが速いのが特長。なんと0.1秒で測定が可能であった。

 精度へのこだわりも見逃せない。
 今回の「DA300」は従来機よりも低重心の構造としている。
「加速度が高くなるということは力がかかるため、それを支える構造体(コラム)に力がかかるということ。そのため低重心で踏ん張りを強くした。これで主軸が高加速度に動けるという仕組みとなっている。」(鈴木ゼネラルマネージャ)

 また熱制御にも注目したい。
 同社ではボールねじの軸心冷却を行っているが、軸心だけを冷やすのではない。ボールねじを支えるベアリング、モータも発熱源なので、このモータの発熱を縁切りするためにフランジも冷却しているという徹底ぶりだ。

 なお、このマシンは、今年開催される「JIMTOF2016」に展示予定とのことなので、デモがあれば、ダイナミックなクーラントの流れ具合もぜひ確認して欲しい。

 販売価格:34,350,000円(税別)。
 営業開始:2016年9月
 出荷開始:2016年10月末
 国内外で60台/年の販売を見込んでいる。

金型加工市場向け「D200Z」

D200Z
D200Z
 5軸加工における問題点といえば、①割出し加工(2+3軸)では、数多くの領域を設定するため、CAMオペレータの負担が増大する、②割出し加工(2+3軸)では、加工領域の合わせ部に段差(繋ぎ目)が発生するため、後工程の磨き作業に時間を費やす、③割出し加工を改善するためには同時5軸加工が必要となるが、回転軸の速度挙動による直動軸の遅れおよび直動軸の加減速による工具たわみの戻りにより加工面に食い込みが発生する。このため高精度な金型加工では、同時5軸加工は使われていない、といったことが挙げられる。

 今回これらの問題点を解決するべく牧野フライス製作所は、3軸機と同等以上の加工面品位を同時5軸加工で追求するマシニングセンタ「D200Z」を開発した。このマシンも「DA300」と同様「信頼性」を高める機能を採用している。

 同時5軸加工を可能にする技術は、同社によると、重心変動の少ないテーブル構造や、回転軸の動作に遅れること無く追従できる軽量化された移動体ユニット、同時5軸動作を最適化するモーションコントロール、機械の静的精度を正しくつくりこむ製造技術が必要とのこと。

 今回新しく開発したのは、頑強な30,000回転主軸(軸心冷却)。他にも環境温度変化に頑強なブリッジ構造コラムやぶつからない主軸(コリジョンセーフガード)も採用している。

 販売価格:25,600,000円
 営業開始:2016年9月
 出荷開始:2017年4月予定

 国内外で60台/年の販売を見込んでいる

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JIMTOF2024