DMG森精機と日本マイクロソフトがスマートファクトリーの実現に向け、技術協力で合意
DMG森精機(社長=森 雅彦氏)と日本マイクロソフト(社長=平野拓也氏)は、9月9日、工作機械を中心とする制御システムのセキュリティおよびスマートファクトリーの実現に向け、連携して技術協力をしていくことに合意した。
近年、製造業における生産のグローバル化が急速に進展する中でIoT技術を活用して、工場内の全てのデバイスをインターネット接続し、工場内設備の情報やセンサーデータをクラウドでリアルタイム解析や、生産管理/品質管理の最適化を行う「スマートファクトリー」が注目を集める一方、発電所などのインフラサービスや一部の工場がサイバー攻撃を受けるなど、制御システムにおけるセキュリティ対策は喫緊の課題となっている。こうしたことを背景に、DMG森精機と、グローバルレベルでの様々なセキュリティ対策の実績を持ち、最先端のサイバーセキュリティ対策の取り組みを展開している日本マイクロソフトが、それぞれ持つノウハウを結集し、制御システムが直面するセキュリティをはじめとする様々な課題を解決するために技術協力を行っていく。
DMG森精機が目指すのは生産の最適化
DMG森精機は、製品そのものの品質はもちろん、顧客使用の周辺機器とオプションの品質、そして組込ソフトウェアの品質を徹底的に改良し、有機的に組み合わせて高品質かつ高効率なトータルソリューションを顧客に提供することを掲げており、生産現場の課題に最適な解決策を提案できる総合的なマシニング・ソリューションプロバイダを目指しているが、IoTやインダストリー4.0に即した生産最適化を支援し、スマートファクトリーを実現するアプリケーションの開発にも注力している。さらに最近では、複雑な加工技術を誰でも簡単に利用できるよう、独自の組込ソフトウェアを開発し、従来は専用機に頼らざるを得なかった歯車加工や5軸加工機の精度特定・補正などを簡単に行えるテクノロジーサイクルにして、注目を集めている。会見の席で森社長は、工作機械をとりまく環境の変化について、「5~6年前はお客様が機械を買われる時に、主軸の回転数やベアリングの配列、制御装置のビット数等の細かい質問があったが、ここ2年ほど企業規模の大小を問わず、そういう質問がなくなり、例えば“この部品を年に百万個つくるのですが、あなたたちはこれに対する設備投資をいくら保証してくれますか?”あるいは、“10年20年使えますか?”という内容に変化している」としたうえで、「弊社は従来300種類の様々な機械を持っていたが、ここ2~3年の間に、アプリケーションを増やすことによって商品の点数を減らし、テクノロジーやアプリケーション等などをメインに受注を増やしてソリューションを増加させるというビジネスに猛烈に切り換えているところである」とビジネス展開について述べた。
同社が提唱する“テクノロジーサイクル”には、①機械、②オープンイノベーション、③組込みソフト、④HMI(Human Machine Interface)の4つの構成要素がある。今後は、自動化を狙い、工具メーカーや周辺機器メーカー等と協力しながら新しい加工方法をつくりあげていく。
森社長は、今回の技術提携について、「世界中の工場で、本日の良品、本日の出品率を知りたいのだが、全部繋げると膨大な資金が必要になるうえ、セキュリティの面で怖いな、ということがある。大量のデータ量をやりとりするとスピードも遅くなる。そこでIT業界の老舗であるマイクロソフトの世界各地になるクラウドセンタを使えないかなと思った。常にわれわれが行っているのは円滑サービスであり、現在IoT、インダストリー4.0等が急に流行りだした感じだが、われわれとしては90年代からずっとやってきたこと。近年CPU、通信の速さ、メモリ等も改善されて、やっと機が熟してきたな、という感想を持っている。また、全世界に広がる加工工場は31万件あり、その中で15万件ほどがわれわれの機械を使われている。将来はお客様を全部繋げて素早くサービスマンを送り、お客様の加工相談に乗れることができたらいいな、と思っている」と述べた。
1980年代の機械もまだ多く使われていることを受け、「ものづくりの世界は、新しいものも古いものも使う。地域も多岐に亘り、小規模から大規模まで、様々な業種に使われている。今回、新しい接続技術のパートナーとして日本マイクロソフトにお願いした理由はITの老舗であり、グローバルに拠点があるということ、大衆向けからコーポレート向けまで対応し、われわれのお客様の要求に合致する」と話した。
スマートファクトリーを支えるマイクロソフトの技術
さて、“繋がる”というキーワードの中には、恐ろしいものも潜んでいる。今ではネットに接続されたシステムも悪用される時代。悪い奴(ハッカー)は、保護をされているものをターゲットに突如やって来る。マイクロソフトは、独自の視点でインテリジェントなセキュリティグラフを使用した防御を実現している。これは機械学習と行動分析を利用して兆候を見つけ出し、受動的な防御から積極的な攻めの防御へと移行できる仕組みだ。脆弱性をリアルタイムで検出し、従来の敵と新たな敵から保護してくれる強みがある。侵害が発生する度に平均1200万ドルを費やすと言われており、今の時代、防御はさらなる進化を迫られている。
会見の席で、日本マイクロソフトの樋口泰行執行役員会長は、「金物がつくるハードウェアの割合とソフトウェアがつくる形の割合は近年、ソフトウェアが高まってきたことに伴い、クラウド、データ解析もどんどん進化している。デジタル化によっての付加価値が様々な産業を問わずつくるような状態で、デジタルトランスフォーマーションのお手伝いをするのがわれわれのキーワードになっている。今回、制御システムにおけるセキュリティとスマートファクトリーの実現に向けたITパートナーとして両社でスタートする運びだが、われわれは、デバイスからクラウドまで総合的なプラットフォームを提供し、豊富な経験と包括的な技術でセキュリティをしっかり担保していく」と役割を述べ、IoTの展開については、「遠隔監視、予兆保全、資産管理など構成済みソリューション『Azure IoT suite』としてパッケージ化している」とした。
「セキュリティに関しては絶対に妥協しない精神」と強調した樋口会長だが、マイクロソフトは年間1千億円のセキュリティに投資をし、自社製品、自社クラウド、顧客に対するアドバイスをしているが、そのノウハウや知見を生かして各国の捜査機関と連携をしてサイバー犯罪の撲滅にも民間企業でアリながら携わっている。
言語処理の解析、音声対話、画像認識等、要素技術が進んできている。工作機械も今後は最新のデジタルテクノロジーをいかに活用していくか、大注目である。
●具体的な技術協力の内容
・セキュリティに関連した取り組み
・SELOS(工作機械コンソール)等のWindowsを利用した製品のセキュリティ
・センサーの情報等をクラウドへ集約するための安全なデータ転送
・クラウドにおけるデータの取り扱い
・クラウドにおける運用と応用分野の検討
・集約したデータ分析に基づいた予防保全等のプロアクティブな内容
・新規ビジネスモデルの構築に向けた技術的な検討
・先端のIT技術の活用
・機械操作員の安全のためのデータ活用
・VR(仮想現実)/ウェアラブルデバイス等による機械操作員の作業効率の向上