前年度比0.8%増の69兆3286億円の見通し 平成23年度機械工業生産額
日本機械工業連合会がこのほどまとめた平成23年度の生産動向は以下の通り。
平成23年度の機械工業は、前年度末に発生した東日本大震災による甚大な被害により回復過程をたどっていた生産への下押し圧力が強まった。震災による部品を中心としたサプライチェーンの寸断や電力不足による生産現で設備投資も抑制気味に推移、また消費者マインドの悪化等による個人消費の下振れや、雇用情勢も持ち直しの動きに足踏みがみられるなど、景気全般に厳しい影響を与えている。また、原油等の資源価格や円高の動向等、当面先行きの不透明感がぬぐいきれないが、一方でサプライチェーンの復旧が前倒しで進んでいることや新興国経済の改善などによる輸出の伸び、さらに年度後半からは復興需要が本格化するなど、景気は徐々に回復軌道をたどるものと見られる。
こうした中で、平成23年度の機械工業生産額は前年度比0.8%の69兆3286円となる見通しである。
(1)一般機械
一般機械の生産額は前年度比(以下同様)5.6%増の13兆5138億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「ボイラー・原動機」の内需は自家発電設備の需要の高まりや既存設備の維持を目的とした更新需要、外需はアジアや中東向け需要拡大や、環境意識の高まりを背景にしたエネルギー転換等の需要増も見込まれ4.2%増。「土木建設機械」は内需の回復基調が続き、外需も新興国のアジアに加え、従来の主要マーケットであった欧米の回復も見込まれ12.9%増。「印刷・製本・紙工機械」は国内が高付加価値設備を除き需要の停滞が懸念されるものの、海外では中国をはじめとする新興国の需要回復が見込まれることから4.2%増。「ポンプ・送風機・圧縮機」は内需が復興需要や更新需要、外需も新興国や産油国における需要増が期待できることから5.0%増。「油空圧機器」は油圧機器が建設機械需要が拡大する中国を中心に、空気圧機器も輸出が中国をはじめとする新興国や欧米で堅調に推移すると見込まれ8.3%増。「ロボット」は引き続き自動車自動車産業や電子・電気機械産業向けが好調で米国、中国をはじめとした海外需要が引き続き見込まれ10.0%増。「農業用機械器具」は国内は被災地域での需要減、部品調達における先行き不安はあるものの、アジア地域で堅調が見込まれることから横ばい。「金属工作機械」は国内は回復基調が続き、海外もアジア地域で依然として好調が続くことから19.8%増。「第二次金属加工機械」は円高の影響やコスト競争力の問題はあるものの、インド、東南アジアをはじめとして輸出が牽引する形の生産増加が期待され28.7%増。「鋳造装置」は回復基調にあるが、震災の影響により先ゆき不透明なこともあり横ばい。「繊維機械」は紡績機械、繊機は海外現地メーカーとの競合により減少が見込まれるが、引き続きアジア新興国やブラジルからの需要が回復しており、化学繊維機械、準備機械、編組機械等の増加が見込まれ20.9%増。「食品加工機械」は新債の影響は極めて大きく、夏行こうに新鋼需要を見込むが、先行きは不透明なことから5.7%減。「木材加工機械」は国内が国産材利用新興製作により、海外はロシア、米国の需要が見込めることから25.6%増。「事務用機械」は海外での現地生産が進み国内生産の減少傾向が続くことから11.0%減。「ミシン」は中国や東南アジア等での需要増が続くことから9.1%増。「冷凍機・同応用装置」は冷凍空調用圧縮機、冷凍空調用冷却塔で減少するものの、空気調和関連機器、冷凍冷蔵関連機器で増加が見込まれ、全体で0.4%増。「半導体製造装置及びFPD想像装置」はMPUメーカーやファウンドリで大幅な投資増額がなされ、高精細・中小型パネルや有機ELへの設備投資が期待されることから7.9%増加する見通しである。
(2)電気機械
電気機械の生産額は前年度比(以下同様)1.1%増の7兆359億円となる見通しである。
機種別に見ると以下のとおり。「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は中国を中心としたアジア向け輸出が期待できるものの、先行きには不透明感があり横ばい。「民生用電気機械」は生活に密着している製品で堅実な市場ではあるものの、生産の海外シフトが進むとみられ横ばい。「電球」は生産拠点の海外化や電球形LEDランプの普及の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少すると見込まれ1.5%減。「電気計測器」は電気計器、電気測定器、工業用計測制御機器、放射線計測器、環境計測器のいずれも増加し、全体では11.4%増加する見通しである。
(3)情報通信機械
情報通信機械の生産額は前年度比(以下同様)4.1%減の5兆7655億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「民生用電子機器」は薄型テレビがエコポイント基準見直し後では大型品から中小型へ製品構成が変化し、カーナビゲーションシステムも工場被災や自動車生産減の影響、デジタルカメラは部品不足の影響が見込まれ、全体では2.0%減。「通信機器」は、有線通信機器ではトラフィック増への対応やLTEへの設備投資は継続するもののキャリアの設備投資は全般的に抑制傾向にあり、無線通信機器では携帯電話の需要減もあることから、通信機器全体では5.8%減。「電子計算機及び関連装置」は前年の教育用パソコン特需の反動減により5.2%減少する見通しである。
(4)電子部品・デバイス
電子部品・デバイスの生産額は前年度比(以下同様)0.1%減の8兆2541億円とんばる見通しである。
スマートフォン向けが好調なものの、工場被災の影響により自動車、電子機械産業向けの供給に不透明さがあることから、「電子部品」は1.1%増加、「電子デバイス」は0.7%減少する見通しである。
(6)輸送機械
精密機械の生産額は前年度比(以下同様)3.1%増の1兆2821億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「計測機器」は計量機器、分析機器、測量機器ともに震災の影響を受けるものの下期に回復が見込まれ1.5%増。「光学機械」は写真機が4.6%増、望遠鏡・顕微鏡が震災の影響で部品供給に遅れがあるもののアジア地域での伸びが見込まれ5.7%増、カメラの交換レンズ・付属品が6.2%増、光学機械全体では5.8%増加する見通しである。
(7)金属製品
金属製品の生産額は前年度比(以下同様)1.1%増の2兆7562億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「鉄構物・架線金物」は2.0%減。「ばね」は震災による不確定要素が大きいため15.8%減。「機械工具」は特殊鋼工具がアジア向けの需要が堅調で4.2%増、ダイヤモンド工具が震災による需要減で3.3%減、機械工具全体では2.7%増、「バルブ・コック・鉄管継手」は震災の復興需要と新興国向けの輸出増で9.7%増加する見通しである。
(8)鋳鍛造品
鋳鍛造品の生産額は前年度比(以下同様)1.4%増の2兆5989億円となる見通しである。
機種別にみると以下のとおり。「粉末冶金製品」は2.5%減。「鍛工品」は産業機械、土木建設機械関連および復興関連需要が堅調、自動車関連向けも電力需要抑制後に本格稼働が期待されることから3.0%増。「銑鉄鋳物」は横ばい。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は4.8%増。「非鉄金属鋳物」は6.2%増。「ダイカスト」は横ばいの見通しである。