最新工具に注目! 三菱日立ツールが新商品発表会を開く 

 三菱日立ツール(社長=増田照彦氏)が2月13日(水)、東京都台東区内の浅草ビューホテルで「三菱日立ツール新製品発表会」を開催した。同社の2016年度は“かつてないほど豊作の年”。新商品の紹介も力が入っており、会場内は大いに盛り上がった。






あいさつをする増田社長。
あいさつをする増田社長。
 発表に先立ち増田社長が、「皆様は日本のものづくりに多大な貢献をされておりますが、このものづくりにとって、さらにお役に立てる可能性のある弊社の旬な新製品のご紹介をさせていただきます。新製品を投入する上で、意識していることがあります。それは禅の言葉ですが“啐啄同時(そったくどうじ)”。卵の中から生まれ出ようとしている雛が内側から卵の殻をコツコツと叩きます。これが“啐”です。親鳥が外側からコツコツと叩く、これが“啄”です。これらが絶妙なタイミングで同時期に重なった時に命が生まれます。これがまさに“啐啄同時”であり、中から叩くのが弊社、外側からアシストいただくのが商社あるいはその顧客となります。誕生した新製品は私たちが心を込め、プライドを持って開発・製造したものです。“ものに心ありて まして人――”心を込めた新製品がいかにものづくりに貢献しようとしても、人が動かさない限り、新製品は動けない。商品が1番輝く時に、それを届けていただくことが必要になります。商品が輝く時は、その性能が100%発揮できる仕事場にてワークと相対した時になります。それが工具にとってこの世に生み出されて良かった、と思う時でありましょう」とあいさつをした。

 なお、今回は成田工場と中継を結びながら新製品を説明し、臨場感あふれる発表会となった。

三菱日立ツールらしさを全面に出した工具群

●アルファ高送りラジアスミル「TD4N形」
 三菱日立ツールといえば、2000年に高送り工具を発売してからというもの、高送り工具は得意分野として好評を博している。同社は、“お客の声に新商品のアイデアあり”という考え方のもとで開発をしているが、①加工費を安く、②工具寿命を長く、③能率アップ――の3つを備えた「TD4N」は、多コーナ化・コーナ単価低減が工具費用を抑え、新AJコーティングが工具寿命の延長に貢献している。高能率・低抵抗・経済的な4コーナ仕様に加え高送り工具の常識とされていた“削り残し”を削減し、次工程の負担を削減した。従来品に比べ次工程工具の負担を最大40%削減することが可能になったのも嬉しい。低抵抗なので、音が静かなのも特長のひとつで、住宅街に工場があっても安心な工具だ。壁際での切りくずの噛み込みがないため、夜間の無人加工でも使えるうえ、小型NCマシンでも十分な能力を発揮することができる。

●アルファラジアスプレシジョン「ARPF」用 新インサート
 今回、刃先強度と切れ味を合わせ持つねじれ刃形インサートを追加ラインナップした。
 深い加工だと工具がたわんで精度が出ないと悩む方も多いうえ、本音としては加工時間を短縮して仕事を早く切り上げたい! と感じるに違いない。この工具は、「クオリティも能率も同時に重視したい方にオススメしたい工具」とのこと。「SGタイプ(中仕上げ~仕上げ)」は、平面、傾斜面を含む3次元形状の加工に適しており高能率加工に貢献する。「SWタイプ(仕上げ)は、基準面となる垂直側面部(立壁部)の高精度仕上げ加工に適している。したがって、加工能率と加工精度の向上が見込め、後工程の工数を減らす工具である。

●アルファボールプレシジョン「ABPF」用 新インサート
 この商品はコーナでもびびりにくい高精度加工用インサート。特長は、強ねじれ刃形による美しい加工面を得ることができること。R寸法に近い形状を加工すると、びびりが生じやすいという問題があった。切削抵抗が増すと、工具は激しく振動し、加工面に嫌なびびりマークがついてしまうのだ。そこで同社は、加工時の切削抵抗を緩和した。強ねじれ刃形を採用することで切削抵抗の急激な上昇を抑えることができたのだ。その結果、仕上げ面性状が向上した。取付けR精度は±0.01mm。ボール部先端から外周まで高いR精度を示している。高性能コーティングインサートにより長寿命なのも嬉しい。

●高硬度鋼加工用超硬エンドミル「EPDBEH-TH3」
 高硬度鋼の長寿命加工を実現したこの工具は、新開発の次世代ハードコーティング「TH3」を採用している。「TH3」コーティングのメリットは新組成系の採用と被膜の組織抑制で優れた耐摩耗性を発揮すること。刃形形状は、“ダブルフェイス形状”。高硬度鋼加工用に刃形を最適化し、工具摩減を抑制している。高精度加工を追求した工具設計も優位性のひとつ。工夫を凝らした首形状・外周刃形状は、点あたりで切削するのでびびりが低減できる。首部の剛性を高めることでたわみを抑制でき、従来比30%の削り残り量が削減できる嬉しい工具である。

●エポックDスレッドミル 管用テーパタイプ「EDT-PT/NPT」
 同社で売上が絶好調の商品といえば、「エポックDスレッドミル」。今年度は初年度(2011年)の約34倍まで成長を成し遂げた商品だ。ところが好評を博している一方で、加工現場からは「困っているのは管用テーパねじ」という声があがった。管用テーパねじ加工の難しさは、内径を同時に加工するため取り代が大きいところ。そこで今回、同社では管用テーパタイプ(PT・NPT規格)を新登場させた。45HRC以上の高硬度鋼にねじ切り加工を可能にするため、刃先強度の高い刃形設計にしている。切削抵抗を軽減させる先端形状により工具のたわみを抑制、ねじ切り加工の最大の問題“工具の折れ込みリスク”を低減させた。「ステンレス鋼も加工できた」、「工具を集約できる」、「大きなねじも機械を選ばず加工ができる」等の喜びの声も紹介されていた。なお、この工具は親しみ安い価格に設定されていることも嬉しい。

●ミニステップボーラー「WHMB」
 工具が折れると心までもが折れそうになる――。加工現場の不満の中で多いことのひとつに、穴の精度、工具が折れてしまうことによる費用拡大等がある。この問題に真剣に取り組んだ工具が、「WHMB」。折損の理由は切りくずが詰まって折れる、というものだが、同社はそれとは違うところに目を付けた。過程プロセスを確認したところ、“汚い穴”に注目、汚い穴、とはうねりのある穴のこと。穴が曲がって折れる、というところに着目したのだ。この穴曲りを避けるよう刃物形状を変えるなど改善を施したところ、高精度の穴加工を実現するに至った。大きなオイルホールも特長で高い冷却効果と切りくず排出の良さが自慢の一品である。精密部品の小径穴などに力強い工具だ。

●「GALLEA(ガレア)シリーズ」
 同社が世界に先駆けて発売した「GALLEA」シリーズは、仕上げ加工の概念を変える魅力的な工具だ。工具形状は正面から見ると樽の形をしている。ちなみにこのGALLEAの名前は、樽酒をはじめてつくった民族がガレア人だということもあり、同社の人気シリーズ「エポック」と「アルファ」に続き、異形工具シリーズの「GALLEA」シリーズが新ブランドに加わったとのこと。「GALLEA」シリーズは、同社独自の外周刃形により、さまざまな加工で使うことができる。「GF1形」は壁部の仕上げ加工で同等の加工面粗さを得ようとした場合、ボールエンドミルの約1.7倍、コーナラジアスミルよりも約1.4倍で加工が可能になる。また、異形工具に対応したCAD/CAMソフト「tebis」などを使用すると、3軸加工に限らず5軸加工でも有効活用できるとのことだ。ちなみに「tebis」は丸紅情報システムズが提供しているハイエンドかつ統合型のCAD/CAMシステム。正確な外周計上定義、加工後形状の把握、あらゆる加工工程に対応している。大物加工へも対応し、圧倒的な演算速度、高速レスポンス、高品位ツールパス、そして高速レスポンスが特長。

閉会のあいさつをする矢倉営業本部長
閉会のあいさつをする矢倉営業本部長
 新製品の紹介が終わったあと、矢倉 功 営業本部長が、「われわれはお客様のお困りごとに真摯に解決するようにと思っています。今回は発表の中ではじめて工場のショールームとオンラインで繋ぎました。開発の背景やどういった苦労をしながら開発をすすめてきたのか、を理解していただけたと思う。今年は当社の新中期がスタートします。非常にいい新製品ができたと思う。皆様のものづくりに貢献できるよう、そして、業界に、時代に先行して進んでいきたいと思っています」と閉会のあいさつをした。

 懇親会では参会者が親睦を図り、宴もたけなわの頃、散会した。


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