「INTERMOLD2017」で突撃! 機械・工具・周辺機器メーカートップ11人に加工トレンドを聞く

 去る4月12日(水)~15日(土)までの4日間、東京ビッグサイトで開催された「INTERMOLD2016/金型展2016/金属プレス加工技術展2016」は成功のうち終了した。今回のINTERMOLDでは、高精度・高能率加工はもちろんのこと、微細加工分野への提案が目立っていたように感じた。
 
 会期中、タイミング良く会場内でお会いした機械・工具メーカーのトップ11人に、加工のトレンドや取り組みについてお聞きし、その内容をまとめた。
 
(OKK、キタムラ機械、黒田精工、ダイジェット工業、ナガセインテグレックス、日進工具、牧野フライス製作所、三井精機工業、三菱日立ツール、安田工業、碌々産業)

「お客様のコストパフォーマンスに貢献するための努力を惜しまない」
●OKK 宮島義嗣 氏

 今回の展示会では、「VB53」と「VM53R」を出展しました。金型の粗加工の機械と仕上げ加工の機械のベストセラーとして、今一度、お客様にこの機械の良さをより深めて頂きたいと思っています。Rシリーズは、重切削、高剛性で高い評価を得ていますが、やっと立形、横形とラインナップがほぼ終わりました。ネームバリューも行き渡ってきたので、ここで弊社のブランド力をより浸透させようと努力をしている最中です。

 「VB53R」は高速で金型の仕上げでコストパフォーマンスが良い機械です。最近はインダストリー4.0やIoTについての取り組みについて、よく聞かれますが、今に始まったことではないと考えています。例えば、町工場で機械を使っている作業者が帰宅しても機械の稼動状態に異常があれば携帯に連絡が来るようなことやデータのやりとり等は従来から行っていました。今後それをどのように活かしていくか、お客様にどういうメリットがあるか、というのはまだまだ模索中ですが、稼動状態を知らせることに加え、予防保全に使えること等、お客様のメリットを活かせるよう情報を密にして注力しています。

 弊社の工場も現在、IoTを利用した“見える化”を構築しています。自社だけでなく他社のものを含め、全て繋げられるように、と。この考えは、お客様も一緒だと思うので、お客様のメリットになるようにわれわれも努力を惜しみません。

「真に役立つ機械づくりに注力」
●キタムラ機械 北村彰浩 氏

 今回は、「Machining Challenges-Simplified」というスローガンを打ち上げました。お客様の負担になっているところを改善しています。検索を意味する「ググる」という言葉がありますが、インターネットテクノロジーを駆使し、インストラクションをつけてヘルプ機能、支援機能で皆様の負担になっている難しいことを無くすのが狙いです。また、3次元のスキャナーや3次元のデジタルカメラのデータが、そっくりそのまま簡単かつスムーズに金属加工へと結びつくことも視野に入れています。

 現在、製造業において、マスコミではインダストリー4.0やIoTは繋がることばかりを強調されています。本来、インターネットテクノロジーは、便利になる、生活を豊かにするためのツールであり、便利機能が主体のはずだったのですが、最近の流れをみていると企業のシーズ、メーカーの売りたいという願望のほうが前に出ているような気がします。現実は、世界中の8割以上の工作機械のユーザーは中小企業でスペースを確保できないところもたくさんある。大がかりなシステムを設備しても、それがその工場によって最適なことなのかどうか、と考えなければならないと思います。

 弊社は中小零細規模の工場でも高能率で稼動するよう、カメラを搭載し、スピーカーとマイク繋げています。もちろん会話もできるので、例えばハワイへ旅行に行っていたとしても、指示を出すこともできます。インターネットテクノロジーを駆使して最大512ギガという大容量の動画を落とすことも可能です。スマホでググると同じように簡単操作で高い効果が得られるよう、ユーザーのお役に立つことを第一に考え、機械をつくっています。

「ミクロの世界は測るにも技術が必要」
●黒田精工 黒田浩史 氏

 製造業の品質におけるキーワードは計測だと思っています。測ったデータをどう活かして加工に繋げるか。あるいは計測したデータをどう工程間で共有し繋いでいくか。単に機械を売ることではなく、測ることを含めたソリューションをご提案しなければならないと感じています。サンプルでデータを取って欲しいという依頼も多く、平坦度測定器「SF-640M」を展示しました。皆様の要望を反映しながら良いソリューションをご提案していきたい。加工に限定していえば、より高精度のものをより短時間でより高い生産性でつくっていきたいというニーズは普遍のテーマです。われわれとしても、マイクロファインバブルや砥石のオートバランサー等、加工効率や生産効率を高めるためのご提案は継続していきます。

 「SF-640M」を開発した背景をお話しすると、高精密研削盤を海外のお客様にお売りしたのですが、「ワークの精度が出ていない」、というクレームがあって慌てて飛んで行くと、実はお客様のほうでワークの精度が正確に測れていなかった、ということがありました。ミクロの世界ですから測るのにも技術が必要なのです。お客様に計測のノウハウを持ち合わせていない場合がある、ということが分かり、われわれも「高精度に加工ができる機械ですよ」だけじゃなくて、「ワークの精度が本当に出ているのか」と、測るソリューションも一緒にご提案しなければいけないな、と、そこで気付かされたのです。これがひとつのきっかけで「SF-640M」を開発したのですが、お客様のお客様は新興国のお客様。そこでもどんどん加工精度の要求が高くなってきています。計測するソリューションも一緒に御提案しないと、マーケットがついて来ない、という時代になったと思います。

 弊社は、計測から加工までソリューションをご提案できることに加え、強みはコストパフォーマンスだと思います。ご提案している標準の平面研削盤にオプションを付けていただくと非常に良い効率、良い精度がリーズナブルなお値段で実現できます。研削盤の送りねじは、弊社の精密ボールねじですし、計測のノウハウはゲージ以来、培ってきた計測のノウハウです。

「われわれの先生はお客様」
●ダイジヱット工業 生悦住 歩 氏

 最近の加工トレンドとしては、インサートがだんだん小さくなって複雑形状になってきていることでしょう。それで昔の研磨級並の精度が出せるので、お客様の生産性もさらに高くなっていると思います。工作機械もさらなる進化をしており、併せて、送りや切り込みの条件を厳しくしても使えるよう、切削工具もどんどん進化しています。金型メーカーは日々、海外との厳しい競争にさらされていますが、ここは生産性を上げて頑張って欲しいと応援しています。

 弊社は、加工に携わる皆様の“痒いところに手が届く”ような工具づくりを目指していますが、われわれの先生はお客様でもあります。お客様の「こういう工具が欲しい」というニーズに応えたものをつくってみると、「他でも使えた!」というパターンから標準化していった商品が多いのです。

 お客様に教えてもらいつつ、こちらも情報を発信していき、双方向でコミュニケーションをしているような感じです。今後も、皆様の加工現場にお役にたてる工具を提供できるよう、頑張っていきます。

「超精密と超能率の両立で真の競争力強化を」
●ナガセインテグレックス 長瀬幸泰 氏

 皆様、品質とコストと納期、この厳しい要求のところでしのぎを削っています。今や、日本の背中をみていた新興国はコストの件で有利になってしまい、日本のお客様はQCDについて死にもの狂いで改善・改革しようとしています。高品質、超精密の加工は時間がかかるので、そこをなんとかしなければ真の競争力にはならないという皆様の危機感も伝わってきます。「そこでナガセはどうするの?」との問いに、ずっといい続けているのは「超精密加工機は高能率加工機です」ということです。

 例えば、サブミクロンの形状精度とナノメーターで表せるような表面粗さ、内部応力のない加工、チッピングや欠けのない加工や異種材料の段差レス加工等でも、工程短縮が実現する超精密加工機を使えばトータルコストの削減に繋がり、格段に改善ができます。超精密加工機というのは、サラサラと動く、お上品な機械だと思っている風潮がありそうですが、すごく小さな切り込みで、なおかつ刃物が食い込むということは逆に剛性が高くないとできない。いわゆる超精密マシンは高剛性マシンなのです。

 前々回のインターモールドでは超精密クーラントシステム「爆削」と絡めながら0.1mmを一気に切り込んで加工するところをご披露したところ、ブームになりました。いくら能率を上げてもその品質が競争力のないものだったら、意味がないし、高能率も高精密でもトータル的に工数がかかるようでは競争力強化に結びつかない。金属は前加工で大きな負荷をかけて一旦内部応力を溜めてしまうと、要求精度、平面度も平行度も出ません。したがって私たちの取り組み、即ち、“理屈に合致した原理原則に忠実”なところを皆様にご理解いただき、「超能率と超精密は両立することができるんだ、これがお客様の競争力強化に必ず繋がっていくんだ」、ということを切実に訴えていきたいと思います。

「機械でどこまで磨けるか、を真剣に突き詰めた」
●日進工具 後藤弘治 氏

 最近は人手も足りなくなってきて、磨ける人も少なくなってきています。こうした時流を背景に、“機械でどこまで磨けるか”を真剣に突き詰めて考えた結果、cBN工具を使用した加工がトレンドになると考えています。ところがcBN工具は扱うのが難しい。そこで、今回、cBN工具を使用したことが無い方のために、工具、NCプログラム、加工用ワークがセットになった「お試しキット」をご提案しました。弊社のエンジニアより、加工後の工具やワークを観察、測定したデータもつけて、きちんとご報告させていただくことで、どのレベルまで出来るのか、機械の特性や環境についてもお客様ご自身の判断もつくでしょう。

 われわれはcBN工具の普及を図っています。これらは最先端の加工でもあり、金型のレベルアップを図る手段でもあります。

 この企画ですが、実は、ユーザーから、「cBN工具は難しいので使いたくない」といわれたことから始まります。われわれもcBN工具を身近に感じていただくために、「じゃあお試し下さい」と、なりました。講習会を開いてご説明し、使っていただいたところ、好評でした。われわれは、お客様のニーズに合致するための努力を惜しみません。

「金型加工のトレンドが大きく変わる可能性を秘めている」
●牧野フライス製作所 井上真一 氏

 私たちは、金型の業界に新しいブレイクスルーをご提案したい。われわれの技術を見ていただいて、この技術が皆様のビジネスに活用できれば、これを競争力にして使っていただきたいという気持ちがあって、様々な取り組みやチャレンジしてきたことをご提案させていただいております。

 具体的には、同時5軸加工による切削加工の飛躍的な高能率化と、ヒートテクノロジーによるリブ加工の放電加工の高能率化です。これらの技術は、金型加工のトレンドそのものが大きく変わる可能性を秘めています。

 また、お客様の中には、「同時5軸加工というとプログラムが難しいんじゃないのか」、という悩みをお持ちになる方もいらっしゃいます。現在、加工技術部にエンジニアリング部をつくって、お客様の「5軸加工は難しいんじゃないのか」等の心配事を強力にサポートさせていただくための組織をつくって作業をはじめています。

 われわれのストラテジーは、カスタマ・サポート・テクノロジーを提供することです。

「地道な技術を積み重ねていく」
●三井精機工業 奥田哲司 氏

 熱性や耐摩耗性が重視されることから、金型はどんどん削りにくい材料へと進んでおり、また、高い精度が要求されます。今回展示した「PJ812」はジグボーラーの高精度位置決めと高品位形状加工を実現する究極のマザーマシンです。3次元加工ができるうえ、機上測定もできます。今や、高精度、高剛性だけではお客様は納得しません。高機能というキーワードも加えなければならないと思います。

 最近の加工トレンドは難削材といえども高能率加工ができることでしょう。できるだけ短い時間で加工を終えたほうがコストは下がります。加工時間を短くして機械の稼働率を上げることが望ましい。その一方で、難削材を削ると工具費が嵩む、という悩ましい課題があり、工具寿命を長くもたせる機械のニーズも高い。この悩みに応えるよう、派手ではありませんが、地道な技術を積み重ねていきたいと思っています。

 来年12月に創立90周年を迎えますが、それに向けて売上げ、利益ともに伸ばしていくための社内計画をつくりました。今年度は中期計画2年目ですが、ベースは「顧客満足度ナンバーワン」。今やろうとしていることがお客様のニーズに合致しているかどうか、問いかけながら仕事をしています。

 結果は必ずあとからついてくるものです。最初から売上げ至上主義で行く気はありません。私もお客様回りをしてニーズを拾い集めているんですよ。

「一基通関で目配りが重要」
●三菱日立ツール 増田照彦 氏

 今回は、ガラリとブースのイメージを変えました。この先、この色合いを見たら、「三菱日立ツールだ」と皆様にいってもらいたい。弊社は三菱マテリアルのグループ会社ですが、差別化を図りたいと思っています。イメージを変えたことは、「この先も独立独歩でいくぞ!」という宣言でもあるのです。

 現在、われわれはヨーロッパで、かなり頑張らせて頂いています。営業がお客様に商品を持って行ったとき、先方も忙しいはずなのに、「いつも役に立つ商品を提供してくれるから、テスト加工をやりますよ」といってくれる。通常は日本の感覚でいくと、「忙しい所に新製品を持って行ってもテスト加工をやってくれるわけがない」と、最初から諦めてしまいがちですが、ヨーロッパでは「精度の保証に役立つ」、ということで、どんどんテストをしてくれるんですね。この流れを日本でも巻き起こしたいと思っています。

 加工のトレンドは自動化です。しかし、自動化をするということは工具だけの供給だけじゃ成り立ちません。機械から治具から“一気通貫”で目配りができるようにしないと、お客様のご要望に応えられない。われわれの営業をもう一度ブラッシュアップするために、今までお客様向けに開いていた金型セミナーを、社員向けにも行っており、しっかり頭に入れてもらっています。自動化をするためには、いろんな知識が必要なのです。

 私は、新聞雑誌には書くのも飽きられるくらいに言っていることが2つあります。「ものに心ありて まして人」、「楽しくなくちゃ会社じゃない」。この2つがあれば、仕事においてどんな困難でも乗り切れると思っています。

「YMCシリーズはトレンドに合致したマシン」
●安田工業 安田拓人 氏

 今回展示した微細加工機「YMC650」は「YMC430」のサイズアップを図ったマシンですが、より大きなワークに対応して、1µmを切る微細加工ができることが特長です。安定して高い精度の加工ができる理由は、リニアモータの優位性を活かした象限突起が非常に少ないことにあります。

 現在、微細加工の分野が伸びていると感じます。工具や工具を測定する測定機等の周辺機器も非常に充実しています。超硬直彫り加工ができる、面祖度をどんどん上げている、というのがトレンドとしてあるので、磨きを必要としないくらいに面祖度があがるような加工となると、これらのニーズにわれわれの微細加工機は、ぴったりハマっていると感じます。

 もうひとつトレンドを挙げるとすれば、5軸加工です。3軸だと小径の短い突き出し工具では加工が出来ませんが、5軸は傾けて回転しながら加工ができます。R径の小さい部分も、深いところまで精度よく加工ができるということもあって、昔とは違い、皆様だいぶ5軸にこなれてきた印象を受けます。金型産業でも加工ができる範囲は広くなっています。微細加工で広範囲に加工する需要も増加しているので、われわれの機械をお仕事に活かしてもらえればありがたいですね。

 最近、弊社はショールームを改造しました。微細加工が増えている背景もあり、微細加工専用の加工ルームを設置しました。ここは従来も恒温室でしたが、さらに上を行く、22℃±0.2℃の恒温室です。ここでは様々な加工テストをしていますので、加工にお悩みの方はぜひ、ご相談ください。

「鏡面仕上げを突き詰める」
●碌々産業 海藤 満 氏

 弊社は、斬新な微細加工機の提案と、微細加工技術の提案をすることによってお客様のお困り事に応えるべく、微細加工機の分野で斬新な提案をし、業界をリードしていくことを目指しています。われわれが掲げている「微細加工機のリーディングカンパニーへ」というキャッチコピーは最後に、“へ”が付いていますが、これは、お客様の声にお応えするために、常に上を向いていく、という意味が込められています。企業は慢心が1番の衰退理由になります。立ち止まるといけません。

 日本の金型が世界に先駆けトップを走り続けるためにもサポートをしていきたい。現在、金型業界の加工トレンドの一つに、“鏡面仕上げ”がありますが、ここをさらに突き詰め、超硬合金の金型が安く、早く作れるシステムを皆様に提案するよう注力しています。

 今回展示したのは「AndroidⅡ」ですが、最上機種の「genesis」をはじめ、「MEGA」、「CEGA」等の個性的な微細加工機で、どんどん新しい方向に業界を引っ張っていくんだ、という意気込みで頑張っています。

 時計をサンプルとして展示しましたが、これにも意味があります。超高級時計は工芸品に値します。つまり加工技術と芸術の間にある分野なので、われわれの微細加工技術を使って芸術的なものを表現したかったのです。高級時計だとひと目で皆様に訴求できます。微細加工は非常に奧が深いので、今後もさらに上を向いてチャレンジしていきます。

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