「業界発展を図るために粉骨砕身」日本工作機械工業会 新会長に飯村東芝機械会長
日本工作機械工業会が5月31日、都内のホテルニューオータニで通常総会を開催し、飯村幸生 東芝機械会長が新会長に就任した。副会長の森 雅彦 DMG森精機社長、稲葉善治 ファナック会長、山岡靖幸 神崎高級工機製作所社長、中村健一 中村留精密工業社長は留任、新副会長に山崎智久 ヤマザキマザック社長が就任した。
わが国工作機械の一層の発展を図っていく
総会後、新・旧会長の会見が開かれた。まず、花木義麿前会長(オークマ社長)から、「先ほど、日工会の会長として4年間の任期を終え、飯村新会長へ無事バトンをお渡しすることができた。IoTやアディティブマニファクチャリング技術等が脚光を浴び、工作機械産業は含めて、世界のものづくり革新が進んでいる。このような時期に会長の大役を務めさせていただくことは、私にとって大変名誉なことであり、光栄であった。この4年間、日工会は『工作機械産業ビジョン2020』で示された4つの課題、産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOFの求心力の強化、人材の確保等を軸とし、各委員会が中心となって諸事業を展開した。各、副会長や委員長に方々をはじめ多くの会員や関係各位に大変ご尽力をいただいた」とお礼の言葉を述べたあと、「各事業ともお菊前進し、成果を収めることができた。一昨年、7月、日本の工作機械産業の将来に向け、産学官の叡智を結集し、最先端の研究開発や標準化戦略の強化を図るべく加工システム研究開発機構を設立できましたことは、とりわけ感慨深いものであった。2016年11月に開催されたJIMTOF2016では新たに16,000㎡の東新展示棟が加わり、展示内容の充実とともに、国際化が進展し、大変盛況裡に開催することができた。重複なしの準来場者数は14万7000人あまりで過去最高を更新した。工作機械受注については、会員各社の技術水準に支えられ、私が会長在日中、毎年1兆円を超える受注を持続することができた」と振り返った。 新会長に就任した飯村 東芝機械社長は、「この変化の激しい不透明で不確実な時代に会長職を拝命し、また、前会長の実績がプレッシャーになって身が引き締まる思いである。伝統ある会長職の責任の重さを痛感するとともに大きな使命感を感じている。先人が築き上げた長い歴史を引き継ぎ、わが国工作機械業界のさらなる飛躍を期して将来に向けて盤石な礎を築くことが新会長としての私の大切な役目だと思っている。この大任を果たし、業界発展を図るために粉骨砕身、努力する所存である」との意気込みを示し、第6回定時総会の場では、同会は3次元積層造形装置を手掛ける企業にも会員としての門戸を開き、常務理事職を新設して業務執行体制の強化を図る定款の改正を行った旨を述べた。
また、「定款、新体制のもとに、技術革新、製品の進化、市場の拡大、需要構造の変化等に柔軟かつしなやかに対応し、わが国工作機械業界の一層の発展を図っていく」としたあと、業務体制、執行体制を強化するために定款を改正し、新たに常務理事職を設け、前事務局長の天野正義氏が就任し、さらにジェイテクトの横山元彦相談役と、これまで4年間当会会長として業界をリードしてきた花木前会長の両氏は相談役に就任したとの説明があった。また、同会は、事業の円滑な継続と発展を図るために、委員会構成につきましては、総合企画、技術、経営、市場調査、国際、環境安全、見本市、輸出管理の8常設委員会体制とした。
飯村新会長は、現状の認識について、「わが国工作機械産業は、トップレベルの製品とサービスの提供を通じて世界のものづくりに貢献をしてきた。しかしながら、現在、日本の工作機械業界は極めて、大きな変化に直面をしている。技術面ではIoT対応をはじめ、積層造形技術やロボット技術との融合が進展をし、需要面では航空機関連や医療関連の需要拡大に伴う難削材の加工需要の増加や自動車の電気自動車、燃料電池車への移行により、長期的には需要構造の変化が見込まれる。市場面では、4年前に経済産業省が実施したビンテージ調査の結果で、国内製造業における工作機械ビンテージは10年以上の割合が67.3%となっていた。わが国製造業の国際競争力強化のためには、いまだ多く稼動している老朽設備の更新を促進させていくことが肝要である」と述べ、世界市場については、「工作機械需要は長期的には増加基調で推移していくのではないかと見ている。中国は新状態の移行に伴い、経済規模の拡大ベースは鈍化するが、製造業は高付加価値分野へ歩みを進め、わが国が得意とする高付加価値機械のニーズは高まっていく。そのほか、アジアの新興国では工業化の進展に伴う、工作機械市場の成長が期待される。米国では新政権下でインフラやエネルギー関連の投資が拡大していく。欧州でも機械産業の活力が盛り上がっている」と明るい見通しを示した。
副会長のコメントは次の通り。
森 DMG森精機社長 飯村新会長をしっかり補佐をし、日工会をますます盛り上げていきたい。
稲葉 ファナック会長 飯村新会長をサポートして全力を尽くす。目下、大変活況を呈しているが先行き不透明でもある。日工会の発展のために全力をつくす。
山岡 神崎高級工機製作所 社長 業界の発展のためにしっかり頑張っていきたい。
山崎 ヤマザキマザック社長 2007年から日工会の活動に参加させていただくようになり、この間、5期10年に亘り、国際委員会の委員長を務めさせていただいた。この委員会活動を通じて、日工会の多くの方と交流をする機械を得て、業界内での有意義な経験を積むことができた。今期から副会長の要職をつとめさせていただくが、微力ながら日工会の発展のためにできることをやって参りたい。他の副会長の皆様と協力して飯村新会長による新体制をしっかりと支えていく。
中村 中村留精密工業社長 IoT時代の流れの中で、人材確保と育成が大変重要になってきている。特にその方面に注力して、会長補佐をしていきたい。
国際競争力を維持強化していくための推進を
総会後には懇親会が開かれた。
壇上に立った飯村会長のあいさつの要旨は次の通り。
「日工会では、新定款、新体制のもとに、技術革新、製品の進化、市場の拡大、需要構造の変化等に柔軟かつしなやかに対応し、わが国工作機械業界の一層の発展を図って参りたい。日工会会長として、業界全体の発展を図るために粉骨砕身努力する所存である。わが国工作機械産業はトップレベルの製品とサービスの提供を通して世界のものづくりに貢献してきたが、現在、日本の工作機械業界は、極めて大きな変化に直面をしている。技術面ではドイツのインダストリー4.0や、わが国のコネクテッド・インダストリーズの推進に不可欠なIoT対応をはじめ、積層造形技術やロボット技術が進展している。グローバルマーケットでの競争を勝ち抜くために、通信やコンピュータソフトウェア、他業界の企業と連携し、アライアンスを進める動きがみられる。需要面では国内外での航空機関連需要や医療関連需要の拡大に伴い、難削材の加工需要が増大をしている。自動車産業でも環境対応要請の高まりに対応して、電気自動車、燃料電池車等への移行が進みつつあり、長期的には需要構造の変化が見込まれる。市場面では国内に未だ多くの老朽設備が稼動しており、潜在する更新需要を顕在化させるかが課題である。海外に目を向けると、中国では経済全体の拡大ベースが鈍化する一方、わが国が得意とする高付加価値機械の需要比率は次第に高まると見込まれる。アジア新興国では、工業化の進展に伴う工作機械市場の成長が期待される。米国ではインフラ投資やエネルギー関連需要が高まりを見せ、欧州でも機械産業での活力が盛り上がっている。世界市場における工作機械需要は、長期には増加基調で推移していくと考えている。他方、わが国工作機械産業は、中堅、中小企業が多く、海外市場の動向やビジネスのあり方について幅広い、的確な情報提供が求められている。また、少子高齢化が進展する中にあって、優秀な人材の確保、育成が急務となっている。このような環境変化の中、日工会としては、将来に亘って日本の工作機械産業の国際競争力を維持強化していくための活動を推進していくことが求められている。そのため、まず、工作機械産業ビジョン2020で示された業界としての課題、すなわち、産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOFの求心力の強化、人材の確保・育成策の強化、について各委員会が中心となって取り組んでいく。また、来年11月初めに開催するJIMTOF 2018を世界トップの技術ショーとして成功に導くため、精力的に準備を進めていく。国際交流の促進、環境問題への取り組み、広報活動の強化など、幅広い事業について、しっかりコンプライアンスを遵守しつつ展開していきたい。日工会は2021年12月には創立70周年を迎える。これまでの日工会の足跡を振り返り、さらにその先に求められる方針と必要な策について検討に着手していく」。
世界をリードすることを心より期待
来賓を代表して糟谷敏秀経済産業省製造産業局長があいさつをした。
あいさつの要旨は次の通り。
「本日の総会で花木前会長のあとを引き継ぎ、飯村新会長が就任された。花木前会長におかれては、在任期間中に開催されたJIMTOF2016で過去最多の14万7000人という集客を達成された。また、加工システム研究開発機構を立ち上げられ、CFRP等の新構造材料を用いた省エネ型工作機械の研究開発に取り組まれるなど、業界の発展に多大なる貢献をされた。飯村新会長は、本年度まで市場調査委員会の委員長として業界の声を幅広く拾って頂いて政策要項に繋げてこられるなど、業界発展に向けた事業環境の整備にご尽力を頂いた。会長としても引き続き、工作機械業界の発展に強いリーダシップを発揮していただくことをお願い申しあげる。本日の総会での定款変更で3Dプリンタも需要範囲に取り込まれたと伺っている。コネクテッド・インダストリーズは、ドイツのインダストリー4.0に対応する日本の旗ということで、つながりを通じて様々な付加価値を生む産業の姿を実現していきましょう、という、日本として新たに掲げた旗である。繋がりを通じていろんな付加価値を生む、ということであるが、単につながるだけではなく、強調領域は広くもって、最大化をし、そこから付加価値を生み出していかなければなりません。他方、競争領域、自分の強みをしっかりと抱えて守っていく、これもとても大切なことだと思う。工作機械業界はコネクテッド・インダストリーズを牽引する中核となる業界だと考えている。今後、機械自身が分析や判断を賢く行う知能化が進んでいく。工場の生産を一層高めつつ、工作機械メーカーとしてのビジネスモデルをさらに磨いて頂く、と考えている。工作機械メーカーの皆様方が果たされる役割は、ますます大きくなっていくと思われる。この工作機械メーカーの皆様方を主な構成員とするロボット革命イニシアティブ協議会で、産業機械サブ幹事会というのがあり、これがスマートマニファクチャリングの実現に向けて、報告書を取りまとめた。第二弾として、今年の3月に取りまとめられまして、これをドイツのセビットでも発表いただいた。このように工作機械業界による課題解決、新たな付加価値の創造などで先導的な役割を担われるとともにさらに競争力を磨いていただいて、世界をますますリードしていくことを心より期待をしている」。
無事にバトンを渡すことができた
乾杯の発声は花木相談役(オークマ社長)が行った。この中で、花木相談役は、「先ほどの総会におきまして無事、飯村新会長にバトンを渡すことができた。この4年間、工作機械産業ビジョン2020を軸にして事業展開を進めてきた。この推進に向けて副会長、各委員会の委員長、そして日工会のメンバーの皆様、専務理事をはじめとする職員の皆様に大変ご尽力をいただいた。IoT、アディティブマニファクチャリングの進化等、工作機械を取り巻く環境が大きく変わる中で、会長の大役をやらせて頂いたことは私にとって、大変光栄であった。現在では,内外の市場におきまして、工作機械の盛り上がりが鮮明になってきております。そういうことで本年は1兆3500億円、これを飯村新会長のもとで大きく伸ばしていただけるものと期待をしております」とあいさつをした。